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第15話 孫はおじいちゃんのために頑張りたい!

「一番優秀なのはわたくしの弟子、シモンです!

 まだ八歳なのに、全属性の中級魔法をマスターしたんですよ!!」


ユーリヤが胸を張って言い放つ。

その誇らしげな笑顔に、ウルスがすかさず噛みついた。


「中級だろ?うちのランは風魔法と身体強化が得意なんだが、どっちも上級魔法までマスターしたぞ!」


「ふむ……ならば、わしの弟子が一番じゃな。」


アレクが、紅茶をひと口すすりながら静かに言った。

その声音にはどこか確信がある。


「先日、風魔法の最上位魔法『テンペスト・インフェルノ』をマスターしよった。」


「「はぁ!?!?」」


ユーリヤとウルスが、まるでハンマーで殴られたような顔をする。


「アレクさん……。」


「おい、じーさん。何教えてんすかそれ……。」


呆れを通り越した視線が突き刺さる。


当の本人はというと、はてと首を傾げている。


わし、何かしたかの?


「ふむ。わしの弟子が一番有能みたいじゃな。」


堂々と胸を張るアレク。

シュエルが素晴らしすぎて驚いていると勝手に自己完結させたのだった。


「ちょっと待ってよ。

 何も強い魔法が使えたら優秀ってわけじゃないんじゃない?」


横から口を挟むのは双影の魔法使いカルとルカ。


二人はそう言って言葉を続ける。


「アイシャは派手な魔法は使わないけど、魔法力学、魔法薬学、魔法術式学の知識は学者レベル。」


「むしろ理論面では、君たちより上かもしれないね。」


「へぇ~、理屈だけで戦えるなら苦労しないんすけどねぇ。」


と、ウルスが鼻で笑う。


「そういうことだったら、うちのウスターも負けてないですよ。」


イュースが腕を組み、涼しい笑顔を浮かべて言う。


「なんたって魔導庁騎士団の副団長です。

 あなた達の弟子と違って、ちゃんと肩書きがある。」


「でも、それ君のおかげじゃないじゃん。」


「そうそう。弟子ひとりの実力だよ。」


カルとルカが息ぴったりに突っ込みを入れる。


ウスターは自分の実力で副団長の座まで登り上げた。そこでイュースに認められ、弟子入りをしたのだ。


イュースの口角がぴくりと引きつった。


「……弟子が優秀って話では?

 でも、そうですね。強い弟子を持てるという事は俺が優秀な証ってことでは?」


「こじつけだ。」


ルカが短く反論。


「さすが騎士団長、腕っぷしだけじゃなくて理論まで脳筋だとは……。」


やれやれとわざとらしいそぶりで煽るカル。


わいわい、がやがや。

最強の魔法使いたちの会議室は、いつの間にか弟子自慢大会とかしていた。


……誰も議題の話をしていない。


ディアは頭を抱えながら、遠くを見つめる。


彼の肩書きは魔導庁長官。

本来ならこの国で最も偉い立場なのだ。


だが、目の前の面々にはそんな常識など通じない。


「……今日は長くなりそうだな。」


そう小さく呟いた、その瞬間──。


バンッ!!!


雷鳴のような音が会議室を揺らした。


机を叩きつけたサエルの拳からは、赤い火花が散っている。


「うるさい!!!」


怒号が響き渡り、誰もが一瞬息を呑む。

彼女の瞳が紅く燃え上がる。


「揃いも揃って弟子馬鹿どもが!!!

 もういっそ、実力で決めろ!!!」


会議室が静まり返った。

だがその沈黙の中に、確かな熱気が生まれる。


◇◇◇


「と、いうことじゃシュエル。」


「わかったよ!おじいちゃんのために頑張るね!!」


話し合いでは決着がつかないということで、弟子たちによるトーナメント戦を行うこととなった。


これで勝ったものが一番優秀、というわけじゃ。


負けられぬ……!


アレクは静かに闘志を燃やしていた。


シュエルも小さな拳をぎゅっと握りしめ気合い十分といったところだ。


対戦表はこうなった。


第一試合 シュエル vs アウラ

第二試合 ラン vs シモン

第三試合 アイシャ vs リクト・パールス


リクトは《灯火の魔女》へクレア・トトの弟子だ。


シード枠 ウスター


このシード枠も揉めに揉めた。

話し合いでは決着がつかず、最終的にくじ引きで決めた。


準決勝は、第一試合と第二試合の勝者が戦い、第三試合の勝者とウスターがぶつかるという形になる。


ちなみに安全面もちゃんと考えられておる。


弟子たちには結界魔法が込められた魔道具のペンダントが配布された。


宝石が埋め込まれており、強い魔法を受けると砕けるようになっている。


つまり、砕けた方が負けというルールだ。


力比べ如きで、怪我人を出すわけにはいかない。


◇◇◇


「それでは第一試合、シュエル対アウラ、はじめっ!」


いつのまにか審判に任命されていたディア。


不満げに眉を寄せつつも、サエルの圧に逆らえるわけもなく渋々了承した。


「私が一番って証明してやるんだから!!」


威勢よく前に出たアウラが、詠唱を唱える。


『フルグル・デスケンデ・エト・ペルクティ・ホステム!』


バチッ!!と雷鳴が走り、まばゆい光が場を照らす。


雷属性中級魔法─《サンダー・ボルト》


「くっ…!」


シュエルは咄嗟に詠唱する。


『ヴェルム・シレンティイ・プロテゲ・メ!』


目の前に薄い光の幕が張り、雷撃を弾く。


無属性中級魔法ー《プロテクション・ヴェイル》。


「ふん、やるわね。」


アウラが口角を上げる。


「ほう、雷魔法か。複合属性とはやるのう…。」


わしはヒゲを撫でながら感心した。


複合属性。


それは二つ以上の属性を組み合わせて生み出す高等魔法。

ゆえに、それを扱うには前提となる二つの属性を極めねばならない。


要するに難易度が段違いなのだ。


雷属性は火と風の融合。


つまりアウラはすでに火と風の中級魔法を極めているということになる。


対するシュエルが扱えるのは風と比較的誰でも簡単に扱える無属性のみ。


一見不利のようにも思える。


「ふっ、だろ?私の弟子も負けてない。」


サエルが満足げに鼻を鳴らす。


「大人しく聞いておるだけかと思ったら、お主も混ざりたかったのではないか。」


わしはくすりと笑って言う。


サエルがぐぬぬと眉をひそめる。


まとめ役を務めるべき立場上、我慢していたのだろう。

実際はこういう話題が一番好きな性格じゃ。


「お前まで弟子自慢に参加するからだろう。」


アレクが横目でにらむ。


「ふん。わしは面倒ごとは嫌いじゃ。

 それにわしがまとめたらどうなるか、一番分かっているのはお主だろう。」


どんな集団にもまとめ役は必要だ。

だが、九つの杖に明確なリーダーはいない。


強いてそれを決めるのであれば年齢順だろうか。


なので別にサエルがまとめ役をやらなければいけないわけではない。


だが──。


わしは面倒ごとは嫌いじゃ。


最年長がこのザマなのである。


「ったく、このクソジジイ。」


「お主も同じババアじゃろう。」


「チッ!」


そんな無駄話をしている間にも、戦いはどんどん熱を帯びていく。


風が巻き上がり、雷鳴が走る。

二人の少女の魔法がぶつかり合う。


試合は、まだ始まったばかり──。


◇◇◇


「ねぇ、あんた、なかなかやるじゃない。」


「あなたもね!」


小さな少女たちは、息を弾ませながらも互いを真っ直ぐに見据える。


その瞳には、燃えるような闘志が秘められている。


「でも、勝つのは私よ!」


アウラは胸を張り、声高らかに言い放つ。


「だって私はサエル様の弟子で、雷光の魔女になる女なんだから!」


杖を構え、詠唱が紡がれる。


『フルミナ・ゲミナ、デスケンデ・エト・ペルクティテ・ホステース!』


――雷鳴が走る。


バチッ! バチバチッ!!

二本の雷光が、蛇のようにうねりながらシュエルへと襲いかかる。


雷属性中級魔法ー《ツイン・ボルト》。


「私だって負けない!」


シュエルは強く地を蹴る。


「だって私はおじいちゃんの弟子だから! 勝って、絶対におじいちゃんに褒めてもらうんだから!!」


風が唸り、杖が輝く。


『ヴェントゥス・コンウェルゲ・エト・フィゲレ・ホステム――ハスタ・カエリ!』


風属性中級魔法ー《ストーム・スピア》。


空気の刃が槍の形を取り、雷光を突き破らんと突き進む!


だが──。


「ふん! そんな子どもみたいな理由で私に勝てるわけないじゃない!」


アウラが笑うと、空気が再び震え、雷がはじける。


「あなた、なりたいものとかないわけ?」


アウラの雷が爆ぜ、風の槍が打ち消される。


「きゃっ!」


シュエルの防御結界に直撃し、ペンダントの宝石に、ピシッと亀裂が走る。


「なりたい……もの?」


シュエルは呆然と呟いた。


そんなこと、今まで一度も考えたことがなかった。

ただ、おじいちゃんに褒められたい。

それだけだった。


アウラは胸を張り、堂々と叫ぶ。


「そうよ! 私はいずれ『九つの杖』になって、世界最強の魔女になるの!

 だから、ただ褒めてもらいたいだけのお子ちゃまに負けるわけないのよ!」


──その言葉が、シュエルの心に火をつけた。


脳裏に、優しく笑う茶髪の少年の顔が浮かぶ。


──ペト。


「私は……私は!!」


風が彼女の周りに集まり、髪を揺らす。


瞳が、まっすぐにアウラを捉える。


「九つの杖になって、おじいちゃんみたいに強くなって……!

 みんなを、守れる人になる!!」


その決意が、空気を震わせる。


アウラがふっと笑う。


「いい夢じゃない。でも、私も負けないわ!」


杖を天に掲げ、詠唱を放つ。


『フルグル、アラス・フォルマ・エト・イン・テネブリス・ラディ!

アウィス・トニトルウィ、デスケンデ・エト・ホステース・エクスーレ!』



雷属性上級魔法ー《エレクトロ・エクリプス》。


稲光が天空を裂き、雷が翼を形作る。

──現れたのは、雷光で形造られた巨大な鳥。


シュエルも負けじと詠唱を叫ぶ。


『ヴェントゥス・コッリゲレ・エト・ウォルウェレ・イン・カエルム!

イン・ドラコネム・コンウェルテ――エト・ホステース・デーレウィ!』


嵐が巻き起こり、風が咆哮を上げる。

風の龍が姿を現し、荒々しく翼を広げた。


風属性上級魔法─《テンペスト・ドラグーン》。


シュエルがステラの助力なしではなつことができる最強の魔法。


「これが……私の全力!!」


雷鳥と風龍が激突した。


ドゴォォォォン!!


雷と風がぶつかり、地面が震える。

轟音が辺りを包み、誰もが息を呑んだ。


しばらくの静寂。


そして──。


パリィィンッ!!


鋭い音を立てて、アウラのペンダントが砕け散った。


「……勝った。」


膝をついたシュエルが、小さく呟いた。


風が彼女の髪を撫で、静かに通り過ぎていく。


「勝者─シュエル!!」


ディアの声が響いた。


サエルは腕を組んだまま満足げに笑い、アレクは小さくうなずく。


「よくやったのう、シュエル。」


その言葉に、シュエルは満面の笑みを浮かべた。

第15話ありがとうございました!


今回シュエルとアウラの二人の少女の熱い戦い!

いかがでしたか?


次回の——まだまだ弟子自慢大会続きます!


少女達の戦いの決着は!?


第15話 次回もぜひお楽しみに!


もし少しでも気に入っていただけたら、

コメントやレビューで応援してもらえると嬉しいです!

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