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第12話 孫、楽園を知る

「おじいちゃーん! 行ってくるね!」


「待つんじゃ!

 今日こそは早く帰ってくるのじゃぞ!!」


「はーい! じゃ、いってきまーす!」


ぱたぱたと駆けていく小さな背中。

角を曲がると同時に、姿が見えなくなる。

アレクはしばらくその方向を見つめていた。


「まったく…すっかり仲良くなって。

 喜ぶべきことなのじゃが……。

 夜遊びは、いかんのう。」


苦笑しながら、湯気の立つカップに口をつける。

穏やかな朝。


──コツ、コツ。


窓ガラスを叩く小さな音。


「……ん?」


視線を向けると、外に一羽のフクロウがとまっていた。

黄金の瞳がじっとこちらを見つめている。


アレクは軽く指を鳴らした。


ガチャ


窓が開くと、フクロウはふわりと滑り込み、宙をくるりと舞う。

次の瞬間、羽が光の粒となって散り、そこに立っていたのは、茶髪の少女。


「よっす、アレク様!」


「ノクティか。」


「や〜疲れたっす!」


ノクティはテーブルの上にどさりと書類の束を置き、大袈裟に肩を回した。


「それで何か分かったか。」


アレクはカップを置き、真顔に戻る。


空気が一変する。


さっきまでの優しい祖父の顔はもうない。


テーブルの上には開かれた地図と数枚の報告書。

ノクティはそれをめくりながら、真剣な顔で口を開いた。


「はいっす! 誘拐された子供は全部で二十五名。

どの子も十歳以下で、共通点として――家庭環境があんまり良くなかったみたいっす。」


「ふむ……。」


アレクは目を細め、並べられた資料に視線を落とす。


紙に刻まれた小さな名前の列。

その一つ一つが、彼の胸を重くする。


「つまり、狙いやすい家ばかりを選んでおるということか。

親の監視が甘く、金に困っている家庭。子供を愛してない親ならば騒がれにくいと言ったら所か。」


「まさに、闇の商売人が好みそうな条件っすね。」


ノクティが肩をすくめ、紙をめくる音が部屋に響いた。


「それで、黒幕ですけど……ここら一帯の裏社会を牛耳ってる組織って線が1番濃厚っす。

 最近は取引記録が止まってるっすけど、過去に子供の奴隷の売買をやってたのが確認されました。」


「……そうか。」


「しかもっすね。

 昨日シュエルちゃんを襲ったあの二人組。

 調べたら、その組織の下っ端っす。」


アレクの眉がぴくりと動く。


「……ほう。」


アレクはゆっくりカップに手をつける。その動きは洗練されており美しいのだが、どこか怒りが滲み出ていた。


ノクティはぞくりと背筋を震わせる。


「……それともうひとつ。妙な報告があるっす。」


「なんじゃ。」


「街全体を覆ってる魔力の膜っす。

 あれ、ただの結界じゃないっす。

 どうやら幻覚系の魔法が混ざってるっすね。」


アレクはしばらく無言で窓の外を見つめた。


「幻覚魔法、か。……気づいておるとも。」


「え?」


「この街にはいった時から気づいておったよ。

 だがどうやら街の住人を傷つけようとしたものではないようじゃったから放置しておったのだよ。」


「傷つける目的じゃないとしたら、どんな目的でこんな魔法を?」


アレクはカップを置いてきっぱりと答えた。


「それは分からぬ。」


「え…でもっすね、それだけの範囲を幻覚で覆うなんて、普通の魔術師には無理っすよ。

 もし、ひとりで操ってる奴がいるなら……」


「九つの杖に匹敵する。」


その言葉に一種たじろぐノクティ。


だが、アレクは一切表情を崩さなかった。


「どうするっす? 

 このまま調査を続けて術者を探すっすか?」


「いや──」


アレクは振り返り、机の上の書簡を一枚取り上げ、にこりと微笑む。


「とりあえず、わしの孫を攫ってくれた馬鹿どもにお灸を据えねばのう?」


「ア、アレク様……? 

 目が全然笑ってないっすよ!?」


「気のせいじゃ。」


アレクは一枚の手紙をノクティに差し出した。


「これをあいつに届けてくれるか。」


ノクティはごくりと喉を鳴らし、受け取る。


「了解っす……。大丈夫っすよね?

 なんか嫌な予感しかしないっすけど……。」


「心配するでない。わしは怒ってなどおらん。」


「それ、怒ってる時に言うセリフっすよアレク様ぁ!!」


◇◇◇


「おはよー!」


「おはよ、シュエル!」


朝の光が、港町を金色に染めていた。


潮の香りを背に、ペトは元気いっぱいに笑う。


「さ!ついてきて!」


「え、ちょ、ちょっと待ってよ!?」


ペトは返事も待たずに駆け出す。


仕方なく追いかけるシュエル。二人は街を抜け、森の方へ向かっていった。


鳥の声が響く静かな森。

けれど、道はだんだん細くなり、人の気配もなくなる。


「え?ほんとにここ? 道、あってる?」


少し不安げに問いかけるシュエル。


「大丈夫、大丈夫!」


ペトは振り返ってニカッと笑った。


「ほら、ついたよ!」


森の奥、光の差し込む小さな空間。

中央には一本の大木が立っていた。

幹は太く、まるで何百年も前からこの地を見守っているかのよう。


「……わあ。」


その神秘的な光景に、シュエルは思わず息をのんだ。


大木の周りでは、子どもたちが笑いながら走り回っている。


手作りのブランコや、木の枝に結ばれた旗。


どこか秘密基地のようで、胸がくすぐられる。


「ここが昨日言ってたいい所?」


「そう!ここはね、子供だけの楽園なんだ。」


「楽園?」


シュエルはその言葉に胸がどきりとした。

第13話ありがとうございました!


次回——ついに事件解決!?


第14話「わし、幸せを祈る」


次回もぜひお楽しみに!


もし少しでも気に入っていただけたら、

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