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白濁とピンクに塗れた欲望への扉はァッ!?



「――ぷぇっへぇあーっ。もう明日の朝まで何も食べられませんのー。お腹がはち切れそうですのー。ほら見てくださいまし、このぽっこりお腹」


「あっはは……私もおんなじ感じだよー……」



 ときは少々過ぎまして、その日の夕夜。


 集落内の広場にちょっとしたお店が開かれていると耳にいたしましたゆえ、私とスピカさんはそちらでお夕食をいただくことにいたしましたの。


 お腹いっぱいになれたのは事実ですけれども。


 残念ながら、出された料理にお肉は入っておりませんでした。ほぼほぼ植物系がメインだったのです。


 けれども私、そこそこに満足いたしましたのッ!

 それどころかおかわりもしちゃいましたのッ!


 と言いますのもっ!



「いやー、まさかキノコがお肉の代わりになってるなんてねぇ。味付けも絶妙だったし意外にパンチもあったし。さすがは基本菜食主義のエルフ族さんだよ……はー、もう食べられない」


「もちろん旨汁滴るお肉への欲求は尽きませんけれどもー。それでも肉厚でほくほくなキノコは美味しかったですのー。そのうちまたむしゃぶりつきたいものですの〜」


 私たちは新たな知見を得ることができたのです。


 旬のキノコってホントに美味しいんですのね。

 

 元から形状的には好きな部類ではありましたが、味のほうはホンモノ(・・・・)には劣ると思っておりましたの。こっほん。


 けれども本日ッ! その認識を改めなければならないほどの超絶うまうまキノコたちに出会ってしまったのでございますッ!


 種類も味も豊富にありましたの。


 そのまま炭火で焼いてもよし、タレに付けてステーキにしてもよし、更には煮込んでスープに入れてもよしっ。


 何でもござれな万能食材だったんですのねぇ。


 これは大森林の中での楽しみが増えてしまったような気がいたします。



「森の中に戻ったら是非とも探してみたいね。もちろん毒キノコには気を付けなきゃだけど」


「種類判別の図鑑が売っていたら即買いいたしましたのにぃ。きっと食べられるか否かは皆さまの経験からご判断されていらっしゃるのでございましょう。さすがは森の民さんですのー。ふぃー……」


 最悪、適当な毒なら私の治癒魔法で何とかできるわけですし、自ら身体を張って覚えていくという手も無しではないもしれません。


 そうでなくともこれから見つける道案内役の方にお伺いしてみるのもアリだと思えるくらいです。


 とにかく満足、満足ですの。



「それじゃあリリアちゃん。改めて聞くんだけど、もうこの集落内でやり残したことはない感じだよね?」


「しいて言うなら最強の美男子(イケメン)探しがまだなコトでしょうか」


 キリッとキメ顔を見せつけてさしあげます。



「……まぁ、エルフ族は美形揃いだもんねぇ。だけど、一つだけリリアちゃんに残念なお知らせがあるよ。ちょっと小耳に挟んだくらいなんだけど」


「ふぅむ? 何ですの?」


 残念なお知らせというわりには、やけにスピカさんのご表情が明るいではありませんか。


 何やらほくそ笑んでいらっしゃるまでありますの。


 グイッと腰に手を当てて、まるで教壇に立つ教師のように眼鏡をスチャリと直す仕草をなさいます。


 あ、いや、あなた生粋の裸眼でしょう。

 あやうく騙されてしまうところでしたの。


 でも、何がどうなさいましたの?

 地味に気になってしまいます。


 何が残念なお知らせだと仰るんでしてっ!?



「なな、なんとっ! エルフ族の発情周期は十年単位なんだってさ。さすが長命種なだけはあるよね。森の中が色めき始めるのも少なくともあと三、四年は掛かるだろうって。集落の長さんがボソリと呟いてたよ」


「な、なんだってェーッ! ですのッ!」


 はっ!? それでは私の酒池肉林の夢は!?

 逆ハーレム形成の野望は!?

 きゃっきゃウフフへの飽くなき探訪はッ!?


 白濁とピンクに塗れた欲望への扉はァッ!?



「ということはつまり!? 今この旅の最中にエルフ族の殿方さんと非常に仲睦まじい関係になるのは」


「正直、無理に等しいってヤツかもね。案外女神様からのお告げなのかもしれないよ? 真面目に旅をしなさいっていう」


「ふぇぇ……あんまりですの……」


 だから泉での沐浴中にも覗き魔さんの現れる気配がなかったんですのね!?


 私、密かに期待しておりましたのに。


 乙女の入浴を狙うスケベなショタっ子エルフさんのご乱入をぉぉ……ッ!


 こうなってしまえばやむを得ませんの。

 かくなる上の必殺技を選ばせていただきますの。



「で、では! せめて道案内役の方は美形のイケメンエルフ族さんをお雇いいたしませんこと!? ね!? ね!? 後生ですから!? 一生に一度のお願いですからァ!?」


「あっはは。こんなところで切り札使わないでね。私としては同姓のほうが気が楽なんだけどなぁ……」


「……それは……確かにぃ……」


 ミントさんがおそばにいらしたときはそこまで緊張しませんでしたものね。


 性癖フルオープンな私でさえも、知らず知らずのうちに警戒してしまっているのかもしれません。


 誰でもよろしいわけでもないのです。

 むしろ駆け引きを含めて楽しみたいのでございます。


 ともなれば、別にそういう(・・・・)目的でもないのに、わざわざ殿方に道案内をしていただく理由はなくなりますのよね。



「はぁ。分かりましたわよぉ。ちゃんと理性で適任者を定めますの。感情に流されないようにすることをお約束いたしましてよ……」


「えへへ。ありがとリリアちゃんっ」


 基本は貴女と私の二人旅ですものね。

 快適にするためなら多少の我慢はいたしますの。


 私のワガママのせいで貴女が縮こまるのもおかしなお話ですもの。


 その辺は空気を読みましてよ。

 私も一人のオトナの女なのですから。



「それでは今日はもうお宿に戻りましょうか」


 お伝えすべき事柄もたくさんありますし。

 街中で大声で話せる内容でもないのです。


 結構、珍しいことなんでしてよ?

 私がこんなにも大真面目に取り組もうとしているだなんて。

 

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