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恋活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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聖女の真心というアレなのでございます

 


 水も滴る、私はとってもイイ女ですのッ!



「ふっふっふっ……これにてリリアーナ・プラチナブロンドッ! 完全復活いたしましてよッ!」


 泉に差し込んだ光がイイ感じに反射して私をキラキラと照り輝かせてくださいます。


 すべすべもちもちの柔肌に、綺麗に処理されたありとあらゆる部位に、世の殿方が黙っていられるわけがございませんのッ!



「あー、さっぱりしたねー」


 どうやらスピカさんも無事に沐浴を終えられたようで、清々しい笑顔を見せてくださいます。


 ただいまは持参したタオルで濡れた髪を丁寧に拭き取っていらっしゃいますの。



「それでねリリアちゃん。今後の予定なんだけどさ」


「ほいさっさですの」


 着ていた修道服も軽く洗って干して畳んで旅鞄に仕舞って、既に予備の服に着替え終えております。


 つまりは準備完了しておりますのっ。

 いつでも次の行動に移れましてよっ。


 しいて言うならお腹が減ってるくらいでしょうか。

 叶うのならば肉々しいワイルドなお食事をご所望させていただきたいところです。


 お野菜だけではエネルギーが足りないんですのッ!



「今回はわりと早めに出発しようかなぁって思ってるんだよね。滞在するにしたって、あと一日くらいが限度かもって」


「ふぅむふむ。理由をお聞きしても?」


「……集落のエルフ族さんの目がずっと怖くて。余所者扱いされるの、私あんまり慣れてなくてさ。ほら、今まではわりと歓迎されてきたわけじゃん?」


「それは、そうでしょうね」


 王都を出てからトレディアの街まではお国の代表として、それこそ両手を振って邁進してこれましたけれども……。


 大森林はもう完全に別の方々の領土なんですの。

 となれば歓迎されるわけもありません。


 排他的なエルフ族さんなら尚更だと思われます。


 そしてまた、冷たく……ですか。


 まして先代勇者の孫として有名なスピカさんは、生まれたときから大人たちに可愛がられて成長してきなさったのでございましょう。


 他者から冷たくあしらわれるという行為にあまり慣れていらっしゃらないのかもしれません。


 逆に私は幼い頃から厄介者扱いされてきましたゆえ、いつの間にか気にすること自体をやめてしまいましたけれども。


 ……きっと、私なんかよりもずっと。

 メンタルに来てしまうんでしょうね。


 陰ながら心中お察しいたしますの。


 とはいえ、これから少しずつ北に向かうにつれて、段々とそういう扱いを受けることも多くなってきますでしょうし、早いうちに慣れていただきたいとも思ってしまうわけでありまして……。



「そうですわねぇ……スピカさんも今よりもう少しだけ図々しく生きられてみてはいかがでしょう。気楽でイイですわよ」


「あっはは、そんな簡単にはできないよ。私は由緒正しき勇者なんだもの。全部私にかかってるんだもん」


「ずっと気負われていては疲れてしまいましてよ?

私も最低限の責務を全うするつもりではありますけれども」


 私の場合は責任感というよりは意地とプライドですわね。


 そして同じく、羨望の眼差しをダイレクトに身に受けて悦に浸りたいだけですの。


 キチンと役目を果たしてから凱旋して、国王陛下から莫大な富をいただいて、合わせて素敵な伴侶様も捕まえて、らぶらぶちゅっちゅな未来を築き上げたいだけなんですのッ!


 それを思えば今の苦労くらい気にすることでもないんでしてよ。


 寝て起きたら忘れられちゃいますもの。



「それでね。どのみち森に戻ったら道に迷っちゃうと思うし、いっそのこと道案内役の方を雇おうと思ってるんだ。一応、トレディアの街でお金稼ぎもしたわけだし。集落に立ち寄る回数も減らせるかなって」


「いいんじゃありませんの? 効率的ですし」


 森の中で彷徨うよりは何倍もマシかと思いますの。

 遭難してしまっては元も子もありませんし。


 回答に合わせて大きく頷いてさしあげます。



「それじゃあ準備できたら早速交渉に行こっか」


「ほほいですの。あ、でもその前にお一つだけご要望がございまして」


「うん?」


「私、エルフ族の郷土料理(・・・・)を食べておきたいですの。いわゆる牢屋メシでお腹は膨れませんでしてよっ。まったくもうっ」


 お野菜の切れ端が主食とは思えませんもの。

 もっと美味しいモノがあるのでしょう!?


 スピカさんは私よりもひと足先に美味しいモノを召し上がられたのでございましょう!?


 ズルいですのー!

 私も食べたかったですのー!



 彼女は一瞬だけキョトンとなさいました。


 けれどもすぐに私の発言の意図をご理解いただけようですの。


 陽光のように煌めく笑顔を見せてくださいます。



「あっはは。そうだね。まずは腹ごしらえだ」


「そうですのそうですのっ」


 私、もうお腹と背中がくっ付いてしまいそうなのです。


 その気になれば泉の水を全て飲み干してしまえるくらいのぺこ姫状態なんですのッ!


 今思い出せば昨日から何も食べていないんですもの。



「……ふぅむ。そうですの。お腹が空いたままでは頭も回りませんし。今後の敵さんの対策も練れそうにありませんし」


「リリアちゃん?」


「あ、いえ、何でもないですの。さっさと行きましょう。この集落内に大衆食堂的な施設は存在しておりましてー?」


「あー、えっとねぇ」


 ふと呟いた独り言を拾われてしまいました。


 前向きな気持ちのときに余計な釘を刺すのも無粋ですな。


 ミントさんの仰っていたことについてのお話は、ご飯を食べて軽く観光もして、その後にお宿に戻ってからでも遅くはありませんわよね?


 別に問題の先送りをしたいわけではありません。


 なんだかんだ言っても、ピュアな彼女に余計な心配をかけたくないと思ってしまう、聖女の真心というアレなのでございます。


 先を歩くスピカさんの背中を追いながら、私はついそんなことを考えてしまいましたの。

 

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