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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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そういうスピカさんはツルッツルですこと


 治癒魔法のおかげでだいぶ足腰に感覚が戻ってまいりました。


 まだ走ることは叶いませんが、普通に立って歩くことくらいなら楽勝になりましたの。


 お泊まり先のツリーハウスを一旦後にした私たちは、集落のはずれにある泉に足を運ばせていただきました。


 周囲には背の高い草が多々茂っておりますゆえ、外側からは絶妙に見えない沐浴場と化しているようです。


 ありがたいと思うのと同時に少し残念ですの。


 私としてはスケベェな殿方にギリギリ覗かれてしまうくらいが適度なスリルを感じられて好きなのです。


 けれどもまぁ、そういう状況をスピカさんが是と仰るとも思えませんし。


 何だかんだ目隠しがないよりはあったほうがマシということですの。



「なかなかキレイな場所ですわね。水底が白砂なのも好き好きポイント追加の要素ですの」


「泉の精霊とか住んでそう!」


 それでは姿を表しましたら挨拶いたしましょうか。


 とりあえず岸辺の辺りで衣服を脱いですっぽんぽんになりまして、足先からゆっくりと泉の中に浸からせていただきます。



「ひぇー……でも真水はやっぱりちべてぇですの……」


「暑い季節はもう少し後だからねぇ。温泉でも沸いてたらいいんだけど、大森林の近くではあんまり聞いたことないかなぁ」


「私も同じくですの。……うっひぃー……」


 季節的には暑くなるのはまだまだ先のことですゆて、当分の間はこの冷たさを味わうしかないのでございます。


 それがイヤならわざわざ湯を沸かして浴びるか、もしくは火炎魔法が得意なエルフ族さんを見つけて頼み込むか、ですわね。


 一応は客人として認められたとはいえ、他種族に気軽に手を貸してくださるほど有効的な方々ではないと思いますし……。


 温かいお湯に浸かりたいのなら、その文化の栄えている場所に行くのが一番ですの。



「温泉地と言えば山間部ですわよね。となると山脈縦断ルート……は、今回の旅では選ばないんでしたっけ」


「そうだね。私たちが通るのは、大森林を抜けた後に山脈を迂回して海の上を渡るルート。多少の遠回りにはなっちゃうけど、結果的にはそっちのほうが早く着けそうだから」


「ふぅむぅ……非常に残念でなりませんの……」


 山間部は主に炭鉱や宝石鉱で栄えていると聞きますの。


 出稼ぎの人族はもちろんのこと、職人気質のドワーフ族さん方も共に鍛冶業に励んで、季節を問わず熱い日々を過ごしていらっしゃるそうなのです。


 あぁ……己の肉体を酷使して働く筋骨隆々な殿方に混ざったりだとか、仕事終わりに豪快に酒を飲み干す殿方に囲まれたりだとか、まさに酒池肉林な世界が待っていたはずですのにぃ……。


 およよよと唇をへの字に曲げつつも、ウェーブのかかってしまった金髪を手櫛で少しずつ解きほぐします。


 数日のケアを怠ってしまった髪にも治癒魔法を施せばあら不思議、キューティクルがキラリと煌めく素敵な御髪に元通りですの。


 ほんと、聖女のチカラって便利ですわよね。


 あんまり私利私欲のために行使しすぎると、いずれまた女神様に叱られてしまいますけれども……。


 とはいえ私の美貌を買っていただいているだけあって、ある程度のお手入れには目を瞑ってくださるんですのよね。


 あの神様(ひと)、意外に現金な方ですの。



 スピカさんに視線を戻します。


 彼女も彼女で身体の汚れを清めていらっしゃる最中のようです。


 指の隙間からチラ見しておきますの。


 えっと……山脈ルートを使わない件についての話題でしたわよね?



「山は登らなくちゃいけないからダメなんですの? 確かに疲れそうではありますけれども」


「それもあるんだけど、山脈の頂上は竜の住処(すみか)になってるって言うでしょ? 賢人危うきに近寄らずってね」


「あらまぁ。今代の勇者サマが随分と弱気ですこと」


「この旅は完遂することが目的であって、早ければ早いほどイイってわけでもないのであーる!」


 そういえば国王陛下もなるべく期限ギリギリで到着しろなどと仰っておりましたっけ。


 私としては海は海で恐ろしい場所だと思うのですが、それでもまぁ常人なら竜の住む場所を素通りしようとは思わないでしょうね。


 そう考えればスピカさんのお気持ちも分からないでもないですの。



 ちなみにですが、髪を洗い終えました。


 本来なら整髪料で綺麗さっぱり脂分を洗い流しておきたかったのですが、泉の水を必要以上に汚してしまうのもどうかと思いましたの。


 なくなく断念した私を褒めてくださいまし。


 お次はお身体のほうを洗いましょうね。

 目の荒いタオルでごっしごしいたしますの。



「……前々から思ってたけどさ、リリアちゃんのその金髪って本当に地毛なんだね」


「ふふっ。どこを見てそう呟かれたのでしょう。そういうスピカさんはツルッツルですこと」


「ど、どこ見てそんなこと言ってるんだろうねぇ!」


 そりゃあ若々しい乙女の頭頂部(テッペン)がツルツルなわけないでしょう?


 賢人なら賢人らしく察してくださいまし。



 冷たい泉の水とは裏腹に、スピカさんから向けられる冷ややかな目がとても気持ちいいのでございます。

 

 実はわりと久しぶりなんですのよね。

 こうやってスピカさんにダル絡みができるのは。


 コレが束の間の日常、もしくは嵐の前の静けさのようなモノでなければよろしいんですけれども。

 

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