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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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……ここは……ツリーハウスの中……?





――――――

――――


――




「……んっ……うぅ……ふわぁぁんむ……?」



 どれくらい眠っていたのでございましょう。


 なんだか背中の辺りが柔らかいような。

 ふわふわというよりはワサワサした肌触りですの。


 毛皮や羽毛のような動物性ではなく、干し草や真綿のような植物性の……優しく包み込んでくださる感じと言えばよろしくて……?


 ゆっくりと目を開けてみますと、天井がじんわりと緑一色に変わっておりました。


 寝起きのボヤけた視野ではよく見えませんが、もはや知らない天井どころの騒ぎではないのです。


 ……あ、そうですの。

 寝落ちする前に思っていたことを思い出しましたの。


 完全に! コレは見たことのない天井ですの!



「あ、目が覚めた? リリアちゃん」


「ふぅむ」


 声のした方向に首を向けてますと、スピカさんがお手持ちの道具を床に広げて、お手入れをなさっていらっしゃいました。


 段々と目が慣れてきましたの。

 私の明順応を捨てたモノではございませんわね。


 どうやら今はご愛用のナイフを乾いた布でキュッキュと丁寧に磨いていらっしゃいます。


 そしてまた見慣れぬ天井の材質も分かりましたの。


 大きな葉っぱを何枚も折り重ねるようにして一つの屋根として成立させているようです。


 頭上が自然由来なら周りもモチロンなのです。

 壁も丸太と木板とで組まれている感じですわね。


 この自然豊かな造りには見覚えがございます。



「……ここは……ツリーハウスの中……?」


「うん、そうだよ。空き家を特別に貸してくれたんだ。数日間の幽閉のお詫びだってさ」


「ふぅむぅ。どおりでベッドの質がよろしいわけですの。明らかにふわっふわですもの」


 下手したら今までお泊まりしたお部屋の中でも、一番に寝心地がよろしかったかもしれません。


 今もなおフンワリと包み込まれております。

 おまけに保温効果も高いのです。


 さすがという他に言葉が見つかりませんわね。



 ベッドから降りようとしましたが、まだ思うように足に力が入らなくて、少しばかり体勢を崩してしまいました。


 ぽふりと顔面からベッドに横たわり直してしまいます。



「……ふふっ。思えば自分の足で立つこと自体が三日ぶりですものね。無理もありませんか」


 つい先ほどまではまさに地に足がつかない状況でしたし、腕も足も縄で括られていたせいで、かなり血流が悪くなっておりましたし。


 一晩ぐっすりと眠れたところで万全の体調に戻れたとは言えないのでございます。


 せめてお風呂にゆっくりと浸かることができたら回復のスピードも変わるんでしょうけど。


 エルフ族さんに行水の文化があるとも限りませんし。



「……はぁ。気付けば汗と埃で身体中がベッタベタですの。浄化魔法を使うにしたって、もう少々回復しませんと唱えられそうにありませんし……そうなると更に時間が掛かってしまいそうですし……」


「あぁ、えっとね。さすがにお湯は出ないんだけど、集落の外れにある泉でなら沐浴してもいいって言ってたよ」


「はぇっ。ままままマジですのッ!? であればさっさと行きましょう是非とも行きましょうッ! 動かない足など気合いで何とかいたしますゆえッ!」


 ぶっちゃけ体力的な方面は関係ないのです!

 今はまだ頭と身体の歯車が上手く噛み合っていないだけで!


「あっはは。焦らなくても泉は逃げないからね」


 しばしお待ちくださいまし!

 今すぐ魔法でゴリ押しいたしますゆえ!


 口の中で簡易的な治癒魔法を唱えておきます。


 でも……それにしても……やけに気前がよろしくなりましたわね、エルフ族の集落さん方。


 いきなり牢屋にブチ込んできなさった方々とは思えないくらいの高待遇ですの。


 ご長老様への説得がよほどうまくいったのでしょうか。


 それとも、私たちの高待遇を許す代わりに、何か特別な要求に応えなくてはならないとか?


 私に出来ることなんて傷付いた方々の癒やしをご提供してさしあげるくらいでしてよ……?


 先代勇者様のお孫様であるスピカさんへの待遇ならともかく、つい昨日まで牢に入れられていた私にも同等の扱いを施してくださるなんて。


 ふぅむ。何か裏がある気がしてなりません。

 ただの思い過ごしだとよろしいのですけれども。


 ミントさんの仰っていたことも気掛かりですし。


 今回の私は皆様からの善意を鵜呑みにしないよう、常に慎重に行動していく必要がある気がしております。



「念のために、今日は交代で沐浴しておきましょうか。待機している側は見張り役ということで」


「えー? せっかくだから一緒に入ろうよー。集落の中なんだから魔物に襲われることもないだろうし。それにほら、身体流せるのって結構久しぶりじゃん? たまにも洗いっこしてもイイんじゃないかなー、なぁんてさ」


「ぐぬぬぬぬぅ……っ! 一番身近にある善意こそが、私の心を一番に揺るがす脅威だったとは……っ!」


 スピカさん、やはり恐るべしですの。

 無邪気さがとても可愛らしいのでございます。


 その健気さを素直に受け止めてさしあげられない己の心の狭さに、余計に惨めさを感じてしまったではありませんか。


 ……まったく。分かりましたの。


 スピカさんがそう仰るのであれば、そうするしかありませんでしょう。


 貴女の悲しむお顔は見たくはないのです。



「おっけですの。けれども周囲の警戒は怠らないようにいたしましょうね。私との絶対の約束でしてよ」


「うん。でも、どしたの? やけに慎重だけど」


「私の第六感がビビビと騒いでいるのです」


 気にしすぎということはありません。


 けれども下手に警戒しすぎて敵さんに勘繰られても困ってしまいますし。


 ちょうどいいって結構難しいですわよね。


 詳しくは泉でご報告させていただきましょう。

 収監中に見聞きしたことの全てを、ですの。

 

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