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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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バッキバキでムッキムキなモノでずぷりと一発

 


 私、驚きのあまり「はぅぇっ!」と吐息を漏らしてしまいましたの。


 しかもあまりにも大きく息を吸い込んでしまったものですから、直後にはゴホゴホと豪快に咳むせてしまったのでございます。


 悲しいことにここは細くて長い洞穴の中ですの。

 ゆえにとにかく音が反響しまくりましたの。


 さすがの看守様もこちらに振り向きなさいました。


 そりゃあこんな金髪の麗しい美少女が咳をしていたら、殿方は黙っていられませんわよね。


 けれども、ですの。

 今ばかりは見られてしまっては困るのです。


 閉じ込めておくべき囚人の一人がいなくなってしまっているのですからね。


 必然的に残っている私が重要参考人になってしまいましょう。



 ……ほーら、予想の通りなのです。

 怪訝な顔で檻に近付いてきちゃいましたの。


 正直に申し上げなくても非常事態ですわね。


 ついさっきまで檻に封じていたはずの要注意人物が、ほんの一瞬目を離した隙にポッといなくなっているだなんて、そんなの問題にならないわけがありません。


 まして彼女と一緒に入れられていた私に疑いの目を向けられてしまうに決まってますの。


 あー、あー……どういたしましょう。


 どう考えたってこれから更なる面倒事に巻き込まれてしまうに決まっているのでございますぅ……。


 質問責めの嵐に、挙げ句の果てには逃亡の共犯として濡れ衣を着せられてしまうかもしれません。


 どうして私ばっかりこんな目にぃぃ……っ。


 何度も言わせていただきますけれどもぉ。

 私、なーんも悪いことしてませんのぉ……。


 トホホな溜め息ばかりが出てしまうのです。



――――――

――――


――



 えっと、何とお伝えすればよろしいのでしょうか。

 拘束の具合がレベルアップいたしましたの。


 今まで以上に腕の自由が効かないどころか、ついには足枷まで嵌められてしまったのでございます。


 丈夫そうな編み縄をこれでもかというくらいに両手両足に巻き付けられて、更には檻に直接括り付けられてしまったのでございます。


 これでは身動きはおろか、寝返りの一つだって打てやいたしません。


 痒いところがあっても痛いところがあっても、今はもうムズムズと身をくねらせることしかできないのです。


 一応ながらおトイレに行きたいときだけは拘束を少しだけ緩めてくださるようですけれども……。


 もやは自由のジの字もありませんの……。



 スピカさぁん、早く迎えに来てくださいましぃ。


 このままでは私の心が折れてしまいそうですのぉぉぉ……ぅぇえぇ……。




――――――

――――


――




 そうしてついに、幽閉生活も三日目(・・・)を迎えてしまいましたの。


 ……めちゃめちゃ髪の毛がベタベタいたします。


 持ち前の癖っ毛ウェーブがいつも以上にボンバーしてしまっているのを感じますの。


 ここ数日、全くといっていいほどお手入れできていないんですもの。


 ……だって、仕方がありませんものね。


 口の中だけで唱える簡易的な浄化魔法では洗浄能力に限界があるのでございます。


 文字通り腕が使えない状況ですゆえに。



「…………ああ、暖かなお布団で眠りたいですの。お風呂に入りたいですの。乳液オイルでお肌ケアをしたいですの。肉汁滴るステーキが食べたいですの。もちろん甘いデザートも欲しいですの。

というよりそもそも愛が足りてませんの。ギュッと抱きしめてほしいですの。厚い胸板を撫で回したいですの。イキり勃つお――ぅおっほんッ!

あぁ……欲求不満ですの、ですの……ですのですのですのーッ!!!」


 ついつい言葉が荒れてしまうのも無理はないと思います。


 スピカさんが去り際に仰っていた「二、三日で迎えに行くからね」の三日が早くも経とうとしているんですからぁッ!


 この際身動きが取れないのは目を瞑りましょう。


 不満があるのは食生活ですの。

 味気ないお野菜生活に飽きてしまいましたのッ!


 この三日間、私が口にできたのは水とお野菜の盛り合わせだけなのです。


 サラダの品目こそ豊富でしたが、全部生でしたし調味料もドレッシングも掛かっておりませんでしたし、どんなに胃の中に収めても食べた気がいたしませんでしたしぃ……ッ!


 そんな辛い思いをしなくちゃいけないのであれば、いっそのこと幻覚キノコでも口にして夢の世界にトリップできていたらなぁ、と!


 退屈も苦痛も感じることもなかったですのに、と!


 昨日からアグレッシブかつネガティブなことばかりを考えてしまうのでございます。


 もしかしたら私は、自覚がなかっただけでホントは本当の大罪人で、今後も一切日の光を浴びることなく、この薄暗い穴蔵の中で一生を過ごすことになるのではないでしょうか。


 そうでなくとも、いずれは聖女という特権身分を剥奪されて、ただの混血のコ生意気な小娘という肩書きだけを背負って、虚しく生きていくしかないのではありませんでしょうかッ!


 使命を果たせない聖女は必要ないのですか……?


 女神様に見放されてしまって、加護も何もかも取り上げられてしま――はっ!?



「……それはそれで美味しい展開かもしれませんの」


 もしそうなれば、私に課せられたこの忌々しい〝貞操帯〟も綺麗さっぱり取り除いていただけるのではありませんこと!?


 この狭くて暗くて寂しいだけの檻の中生活にも一筋の希望が見えてくるというものです。



 ……あ、でも。そもそものお話ですけれども。


 檻の中から出られなければ、大恋愛もヘッタクレもできないではありませんでして?


 相変わらず看守のエルフ族さんは少しも見向きもしてくださいませんし。


 度重なる私の色仕掛けに対してもマジめのガチめに無反応をお貫きなさるだけですし。


 ああわこのままでは本当に女としての自信がなくなってしまいますの……。


 自尊心がもうバッキバキのバキなんですの……。


 私はただ、バッキバキでムッキムキなモノでずぷりと一発貫いてほしかっただけでしたのにぃ。


 どうして世の中とはこうも理不尽の塊なのでございましょう……?



「……所詮、私は非力で無能な小娘でしかありませんでしたの……。私が何をどう頑張ろうとも身体の自由は変わりませんし、世界が動くはずもございませんの……。

泰然自若なんて言葉は、私から最も遠くて手の届かない、いわゆる砂状の楼閣みたいな幻想でしか――」


「リリアちゃんッ! リリアちゃんってばッ!」


「…………んぅぇ?」



 それは私にとって一筋の光となり得るお声でしたの。


 私の濁りかけた思考を一瞬でクリアにしてくださる……澄んだ清水のようなお声でしたのっ。


 

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