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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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へこへこゴマ擦りモード、継続しておきます

 

 おっけですの。静かにしなければならないのは重々に理解いたしましたの。


 ですからこの尻尾による口止めを外してくださいましっ。


 と言いますか勝手に外しますからねっ。



「……ぷぇっぷ」


 うっへぇっ。ミントさんの尻尾、一瞬でしたがほんのり甘酸っぱいような味がいたしましたの。


 汗なのか謎の汁なのかは分かりませんが、何かが染み出しているような気がするのです。


 あー、でも舌触りの滑らかさ的にはアレでしたわね。使い終わったデザートスプーンを延々と舐めているときのような?


 虚しさをしゃぶり尽くすんですのっ。


 何にせよ今ここで下手に味の感想を伝えて機嫌を損ねられても勿体ないですし、声に出さないように注意しておきましょうか。


 代わりに上目遣いにて続きを促してさしあげます。



「で、こうして集落に忍び込めたのはいいんだけど、ココはどうやらハズレだったようね。だって反の連中の気配を少しも感じ取れないんだもの。全くいないか、もしくは相当の手練れか」


「そんな簡単に肌で感じられちゃうものなんですの? さすがは泣く子も黙る女魔族さんですわねぇ。お見それいたしましたの」


 とりあえず適当にヨイショしておきます。


 ヨイショは私が健気に生きていく上で身に付けた一種の処世術みたいなモノですの。


 私、ただでさえ難の多い人生を歩んできましたからねぇ……。


 お相手のお顔を見れば、求めていそうな言葉を自然に出せちゃったり出せなかったりしますの。


 元より私はビンカン乙女なのですしっ。

 お茶の子さいさいなのでございますっ。



 ……はっ!? そ、そうですの。


 これこそが肌で感じるということに違いありませんこと!?


 お相手のそわそわに気が付くことができるなら、向けられている敵意などにはもはや余裕のヨッちゃんで感じ取ることができるはず……!


 私、とんでもない閃きをしてしまいましたわね。


 索敵能力が一気に向上いたしますの。

 いつまでも無能聖女とは言わせませんわよ。



「まぁね。感知なんて私くらいにもなれば余裕よ」


「魔族さんにもランクがあるんですの……?」


 どうやら私のおべっかがブッ刺さりなさったのか、ミントさんはふふんと得意げに鼻を鳴らしなさいました。


 むふふと結んだ口元には尖った八重歯が無邪気にコンニチワしていらっしゃいます。


 ふっ。朝飯前でしたわね。


 私も相応にチョロい性格だとは自覚しておりますが、その辺はミントさんもあんまり変わらないと思いますの。


 私のことをザコだヨワヨワだと罵るわりに、ミントさんにも子供っぽいところがあるんですもの。


 ほら、見てみてくださいまし。


 その証拠に己の黒尻尾をゆらゆらとご機嫌そうに揺らめかせていらっしゃいますでしょう?


 褒められて満更でもないようなのです。

 ざぁこざぁこ返しをしてやりたいですの。


 あくまで心の中で、ですけれども。



「では、今回は特に収穫なしということで?」


「そういう感じになるわね。ほとぼりが冷めたらサックリと脱走させてもらって、さっさと()に向かうつもりよ」


「次……と仰いますと、もしや他にも集落があるんですの?」


「そりゃそうでしょ。ただでさえ自然と一体になって暮らす種族なのよ? あんまり拓けた場所は好まないの。ここが逆に珍しいんじゃない?」


 はぇー。


 私、てっきりエルフ族の皆さんは大きな大きな集落を形成して、その中にギューッとまとまって住んでいるものと思い込んでおりましたけれども。


 言われてみればそれって人間の街の形ですわよね。


 確かにこの集落は広めではありましたが、かといってメチャクチャ大所帯というわけでもなさそうでしたの。


 ツリーハウスの数から考察しても、せいぜい村以上町未満の規模かと思われます。


 更に言えば、広大な大森林の中にこれだけしかエルフ族の方が住んでいないだなんておかしな話ですものね。


 もっともっと沢山いらっしゃるはずですの。


 ミントさんが続けてくださいます。



「ナワバリ、とでも言うのかしら。いくつかのエリアに分かれて統治してるって噂。ここの(・・)はあくまで南側のトップよ」


「ということは、大森林を縦断するためには、少なくとも北側のエルフ族さん方にもお世話になる必要があるってことですわよね?」


 もしかしたら中央部とか北西部とか、もっと細かくエリアが分かれているかもしれません。


 この集落を後にしてからもずーっと森の中を彷徨い続けるのは得策ではありませんし。


さ可能ならばエルフ族さん方にはちょこちょこお世話になって、集落の中でその都度身支度を整えさせていただければと思っているくらいなのです。



「あー、アンタらの目的地って北の魔王城だっけ?」


「ええ。そうですけれども」


「だったらそれが一番手っ取り早いんじゃない? 

 何より安全だし確実だし。女子二人で毎晩野宿ってのも大変でしょ?」


「ええ、よくご存知で。ぶっちゃけメチャクチャ大変ですのぉ。毎夜に結界魔法を張っているとはいえ、うら若き乙女の二人旅ですもの」


 夜間にトンチキな暴漢に襲われてしまってはたまったものではないのです。


 いつでもウェルカム体勢な私ならともかく、スピカさんはあんまり夜這いを求めてはいらっしゃらないようですし。


 叶うのならば、是非ともエルフ族さん方の集落内で、安心安全に身を休めさせていただきたいものですわね。


 そうなる未来のためにも、この独房内での過酷な生活に慣れておきつつ、一日でも早く客人として迎え入れていただきませんと。


 まずは私の身にかけられた疑いを解いて、堂々と胸を張って森を歩けることを確定させてからですのッ!


 ともなれば、お次の集落までの道のりを聞いて回るのがベストかとッ!


 聞き込みと移動を何度か繰り返せばいずれは大森林の出口の方向も分かってきますでしょうし、道に迷うことだって圧倒的に少なくなるはずです。


 とは言いましても、私たちの素人眼では各集落の入り口を見つけられる気がいたしませんし……はてさて、いかがいたしましょう。



 ここは一つ、ミントさんから秘訣を聞き出しておくのが良さそうですわね。


 何故だか大森林の歩き方に精通されていらっしゃるようですし。


 へこへこゴマ擦りモード、継続いたします。



「あの、ミントさんはどうやってこの集落に入ったんですの? あ、いえ、腕をグルグル巻きにされてる辺り、私と同じく拘束されちゃってるんでしょうけれどもっ」


 悲しみの表情を駆使して、同調している感を爆アゲしておくのでございますっ。



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