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恋活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第2章 大森林動乱編】

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もしもーし? もしもしもーしー?


 困ったことにほぼ世襲制の勇者様とはちがって、聖女はその限りではありません。


 むしろ生涯純潔を守り通すことが善行とされておりますゆえに、その血は後世には受け継がれませんの。


 つまりは親の優れた容姿を引き継いで、娘や孫もまた聖女に抜擢されるなんて都合の良い展開はまず起こりえないのでございます。


 私たち歴代の聖女は、あくまでその年代の中で最も女神様に近しい者が選出される仕組みになっておりますからねぇー。


 身分も血筋もお家柄さえも関係ありません。


 こうしてポッと出の孤児でさえもなれてしまっているのです。


 私自らが生き証人と言えましょう。



 一応まとめさせていただきますわね。


 私は、先代の聖女様から引き継いだモノなど一つもなく、まして目で見て分かる証明などは何も持っておりません。


 分厚くて古くさくて重いだけの聖典を持ち歩いていれば説得のしやすさも変わったんでしょうけれども。


 正直アレは旅のお荷物でしかありませんし。

 

 実際、持っていた頃も漬物石として扱うくらいにしか使っておりませんでしたし。


 そもそも内容の半分も覚えておりませんしっ!


 ぶっちゃけたお話、聖典って女神様がどれだけ素晴らしいお人なのかを知らしめるための自慢が書かれているだけなのです。


 ご本人をよく存知上げている私にとっては余計に無用の長物なんですのよね。


 女神様ご本人も異文化圏のところに降臨してくださるほど心の広い方ではありませ――ぅあっふんっ♡


 ……そ、それゆえに、自らの身分を証明できるモノなんて、それこそ今は国王様からの勅命状しか存在しないはずですの。


 ないならないで仕方がありませんよね。


 紙っぺら一枚でも見せないよりはマシだと思うのです。


 アレが唯一の証明書に等しいのですから……っ!



「ふぅむ。しっかたないですわねぇ。分かりましたの。それでしたら鞄の中に国王陛下からの勅命状が入っ――」


「悪いが我々はヒト族の文字に長けていない。感覚的に目で見て分かる物でないとダメだ」


「…………ふぇぇ。一瞬で万事が休しましたの。もはやお手上げのテっちゃん状態ですの。私は悪い淑女ではありませんでしてよぉー。ぷるぷるぷるぅーと声を震わせて嘆くしかできませんのぉ……」


 ヤッベェですの。マジでピンチですの。

 今世最大級のピンチかもしれませんの。


 このままでは有無を言う隙もなく不法侵入美女というレッテルを貼られてしまいます。


 きっとエルフ族の皆さまから蔑まれた目で見つめられてしまいますのぉ……っ。


 そうして裸にひん剥かれて奴隷のように扱われてしまうんでしょうねぇ……っ!


 ちらっ。ちらちらちらっ。


 一応ながらお空にアイコンタクトを向けてみます。


 あ、あのー、女神様?


 お空の上で黙って見てないで、手を差し伸べてくださってもよろしいのでは?


 あなたの大事な従僕(しもべ)が危機に瀕しているんでしてよ?


 貴女がパパッと降りてきて、私が聖女である旨と説明してくだされば一発で解決すると思うんですけれども。


 もしもーし? もしもしもーしー?


 ……ちっ。あの無駄に超絶美人神。

 マジでウンともスンとも言わねぇですの。


 可愛い子には旅をさせよの精神ですの?

 中途半端な放任主義にはウンザリいたしますわね。


 ただでさえ私は他者からの愛情に飢えているといいますのに……。

 


 私は確かに清き聖女ではありますけれどもっ。


 そしてまた癒しのチカラで人々を導く真の淑女を自称しておりますけれども。


 かといって私自身が比較的得意としている治癒魔法は、別に聖女の固有魔法というわけではないのでございます。


 あくまで女神様のご加護パワーによって発動時間が短くなっていたり、通常の詠唱よりも遥かに効果を高められているだけに過ぎないんですの。


 治癒魔法をお見せしたところで、エルフ族さん方への説得材料にはなりえませんの。


 あー。これどうしましょうかー……。

 マジめのガチめに困っちゃいましたわねぇ……。


 とりあえずうるうるの瞳でスピカさんとエルフ族の女性さんとを交互に見つめさせていただきます。


 今はもう、情に訴えかけるくらいしか取れる選択肢がないんですの。



 一瞬の静寂がこの場を支配いたしました。


 何と言いますか、薄ら寒ーい感じの、憐れみとも冷ややかとも異なる、まるで子どもの戯れを遠巻きに眺めている親のような……。



 ど、どどどうしてお二人とも大きなため息をお吐きなさるんですの!?


 今この状況で哀れみの目を向けるのはおかしいのではございませんでして!?



 静かに、凛々しいお顔の女性エルフさんが片手を掲げましたの。後ろに控えている方々に目配せをなさいます。



「その小娘を拘束しろ」


「さ、さすがに理不尽すぎやしませんこと!?」


 問答無用がすぎるかと思いますの!?

 私何にも悪いことなんてしてませんし!



「……とはいえパールスターの同伴者であるとは認めてやる。貴様に非がないと分かればすぐに解いてやるさ。パールスターへの事情聴取の後にな」


「それって、情状酌量の余地多めって認識でいいんですの……?」


「こちらもしきたり(・・・・)に従っているだけだ。悪く思うなよ。二、三日は牢の中で過ごしてもらうことにはなるがな」


 牢屋の中ってことは罪人扱いですの?

 でもその一歩手前ということは、被疑者ってことですの?


 ひ、ひぎぃぃ……。



 で、でもっ。目の前の女性は顔も声も怖いお方ですが、最低限の人の心――もといエルフの心はお持ちのようで安心しましたの。


 数日で解放してくださると仰るなら仕方ありません。

 素直に受け入れておきましょうか。


 これも長い人生の中の試練だと。

 そう飲み込んでおくしかないのでございます。


 聖女とは誰よりも慈悲深く、そして忍耐強い存在ですからね。きっとおそらく。


 スピカさん。

 ご弁明のほど、お頼みいたしましてよ。



 どうか、どうかなるべく早くエルフ族さん方の誤解を取り除いてさしあげてくださいまし。


 それが一番の近道に違いありませんの。


 この試練を乗り越えることができれば、つまりは私たちの身分と正当性を証明することができれば、このだだっ広い大森林の中を大手を振って歩けるようになるのですから。


 排他的と有名なエルフ族の方々から直々に通行手形を得られるようなモノですの。


 実はかなりのメリットがあるのではございませんでして?


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