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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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元より歩む道がイバラの道だと承知の上ですの

 


「残念ながら……誠に遺憾ながらッ! 女神様が私に似ているのではなく、私が女神様に似ているみたいですの。それが聖女となる者の宿命とも言いますか、似ているからこそ、この方からのご加護を授かれるのだと言いますか」


 聞いたところによれば、代々聖女に選ばれた人間は、顔付きなり容姿なりその能力なり、どこかしらが伝承の中の女神様と似通っていたらしいんですの。


 私もまた御多分に洩れずその系譜を継いでおります。


 私の場合は間違いなく容姿でしょうね。


 誰もが羨む超絶パツキン美女だったがゆえに幸か不幸か女神様のお眼鏡に適ってしまったというわけです。


 ……魔族の血が混じるこの私めが、ですの。



「ぅおっほん。私の容姿の素晴らしさはもちろんご周知のことと――」


『よろしいですかエルスピカさん。綺麗なモノを愛でたいと思う心については、人と神と間にそこまでの相違はございません。私は私の良いと思う存在にチカラを分け与えるのみ。これは真理なのです。分かっていただけますか?』


「……と、いうわけですの。以降の発言は省略させていただきましてよ。んもう」


 ちなみに言わせていただくと、女神様は私以上のナルシスト(・・・・・)さんですの。


 己自身を美の最高基準と認識なさっていらっしゃっていて、それに近い容姿を持つ人間に対して、積極的に加護を授けていらっしゃるそうなのです。


 初めてお会いしたときなんて、まるで鏡の中の世界の私が現れたのかと目を疑いましたの。


 私も最初は話半分で聞き流そうかと思ったのですけれども。


 こうして実際に本物に相対してしまって、更には加護まで受けてしまっては、無理矢理にでも納得するしかありませんでしたのよね。


 もちろんよーく見て比べてみると私と女神様とでは細部は異なっておりますし、悔しいことにどちらかと言えば女神様のほうが女子の見た目としての完成度は高いですゆえ、泣く泣く黙って引き下がってさしあげますけれども。


 さすがに神様相手に容姿で嫉妬するほど身の程知らずではないつもりですの。


 私のはあくまで人並みレベルの美人度ですの。

 決して神がかりレベルの美しさではありません。


 ……自惚れにも限界はあるのでございます。

 そしてまた、常識人でもいたいですの。


 っていうかこの女神様。

 人の話を遮るのがお好きなんですのよね。


 どれだけ主導権を握りたいのでしょうか。

 我が道を征くのド真ん中を貫いていらっしゃるのです。


 分かりましたわよ。

 お好きにお話しくださいまし。


 まるで神様らしからぬドヤりドヤドヤとした微笑みのまま、会話の主導権をお握りなさいます。



『私は何よりも美しいモノが好きなのです。であれば、この世で最も美しい存在である私に最も似ている存在は、私の次に力を有していても何もおかしくはありませんでしょう?

私に最も似ている人物――それが今代はリリアーナさんだったというだけの簡単なお話なのです。

も・ち・ろ・ん。聡明な勇者様にならご理解いただけますよね?』


「え、あ…………うん。分かったような、よく分からなかったような。えっへへ」


「あんまり圧をかけないでくださいまし」


 困惑なさる気も分からないでもありません。


 女神様ってお喋りのわりにはまどろっこしい話し方をなさるんですのよね。そのくせ言いたいことは直球ですので尚のことタチが悪いのです。


 知的な口ぶりをなさろうとしているのは分かるのですが、本当に賢い方というのは誰でも分かるような簡単な言葉を使うと思いますの。


 というわけでこの私が丁寧に噛み砕いて教えてさしあげましょう。



「要するに聖女とは、女神様の分身みたいなモノですの」


 ただ似ていたというだけで勝ち組扱いですの。


 正直に申しまして、こんな理不尽なコトはないと思うのです。



「……ほら、以前スピカさんにお話しいたしましたでしょう? 私はあくまでポッと出の聖女でしかありませんの。持ち前の悪運と強運に助けられて、今日まで辛うじて生き永らえてこれただけのイチ乙女ですの。

大変な修行も苦難も全部すっ飛ばして、偶然なれてしまっただけのつまらぬ小娘ですの」


「でも運も実力のうちって言うくらいだからさ。いいんじゃないかな、リリアちゃんはリリアちゃんだってことで」


「そう、だと、いいですわね」


 慰めていただけるのは大変ありがたいですけれども。情報の波に押し流されて、早速ながら思考を放棄されてはいらっしゃいませんでして?



「……運命というモノは残酷でしてよ……」



 修道院の中には私よりもよっぽど敬虔で一途な信徒が沢山おりましたし、それこそ毎日毎日お祈りに明け暮れなさっている姿をこの目で見ておりますの。


 そういう方々に光が当たらないで、こんな、私なんかに……。


 各地に点在する宗教都市であれば、女神様を信奉している方々の数もグッと増えますでしょうし。


 もっと生真面目な方がたくさんいらっしゃるはずです。


 それこそ使命感に燃えた未来の聖女見習いが何人も何人も修行に明け暮れているはず……!



「ゆえに私は聖女であっても、ずっと見習いなんですの」


 今でも思う日はあるのでございます。


 どうして魔族の血が混じる私なんかが聖女に選ばれてしまったのだろう、と。


 初めの頃は色々と暴言を吐かれましたの。


 これは何かの間違いにちがいない、と。

 どんな裏工作を計ったのだ貴様は、と。


 何度も何度も……あらゆる人から数え切れぬほど疑われ続けてきましたの。


 ……ただしッ!


 私だってずぅっと黙っていられるほどの聖人であったわけでもございません。


 ただの普通の女の子なんですもの。


 そんな他所様が勝手に定めた適当な選定理由なんて、私の知ったこっちゃねぇですわよ、と。


 真っ向から開き直ってさしあげるしかないのです。


 別に私自らが聖女に立候補したわけでも、誰かから推薦されたわけでもありませんしぃー。


 疑う方々にキチンと理由を説明したところで、誰も信じてはくださりませんでしたしぃー。


 であれば開き直る他に手はないわけでして。



「元より歩む道がイバラの道だと承知の上ですの。使命を全うした先に薔薇色の人生が待っているのであれば、私はそれに向かって突き進むだけですのっ」


 聖女のお役目さえ終えてしまえば、厄介な貞操帯だって外していただけて、自由恋愛をも許していただけるはずぅ……ッ!


 乙女が乙女として好きに生きられるはずッ!


 真っ当な野心は尽きないのでございます。

 野心というよりただの願望そのものでしょうか。


 私が、私であるための、ですの。


 

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