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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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……こんな醜い姿の私でも、アナタは一緒に、いてくださいますの……?【挿し絵有り】

 

 それからもう何日か経ちました。


 楽しいときとは、己が思っているよりも数倍はあっという間に過ぎ去ってしまうモノなんですの。


 お買い物を済ませた後の数日ですが、基本的には街中で終わらせられる依頼を着々とこなしておりました。


 もちろん遠出をする余裕はございませんでしたし。


 おかげで出発の日までの滞在費用を確保することができたのでございます。


 あとに残るイベントはもう、私の中の最大心労告白を無事に乗り越えるだけですの。



――そう、なのです。


 今日こそが旅立ちの日から数えて二度目の〝真夜の日〟ですの。


 ああ……ついにやってきてしまいましたの……。



 オンボロ宿の、私たちのお部屋にて。


 私は着慣れたパジャマを身に纏いつつ、ベッドにちょこんと鎮座しております。


 スピカさんには私がよいとお伝えするまで、お部屋のすぐお外で待っていただいておりますの。


 打ち明けるとは言いましたが、身体変化(・・・・)の瞬間だけは見られたくはありませんでしたから。


 よーく耳を澄ますと、メキメキバリバリという痛々しい音が鳴ってしまっているんですのよね……。


 スピカさんにこれ以上余計なご心配を掛けたくありませんでしたし……。


 ベッドの上で更に丸くなって、ついでにウンウンと唸らせていただきます。


 パジャマのふわふわが私を優しく包み込んでくださいますの。


 とうの昔に心の準備を終えたと思っていたのにですが、それでも、私の胸の中には恐れと恥ずかしさがいっぱいに満ち溢れているのです。


 せめてもと薄っぺらい掛け布団で身体全体を覆わせていただきましたが……あくまでコレは付け焼き刃の目隠しでしかございません。


 それにきっと、すぐに外さなければなりませんでしょうし。


 うぅ……分かりましたわよ……駄々を捏ねても何も変わりませんの……しゃーなしですの……いつまでもうだうだ言っていたところで……何かが変わってくださるわけもなく……。


 私自ら動き出さなければ始まらないのです。


 さっさと乗り越えてしまったほうが身も心も穏やかになれるというもの……っ。



「……こっほん。スピカさん。そちらに、いらっしゃいまして?」


「大丈夫だよ。ちゃんとココにいるよ」



 ドア越しに彼女のご返答が聞こえてまいりましたの。


 いつもと変わらない、とっても優しげなお声なのです。



「…………うぅぅ……決心できましたの……もう、入ってきていただいても、おっけーですのぉ…………」


「うん。分かった」


 ベッドの端っこに移動しつつ、未だ布団をすっぽりと被りながらも、意を決してスピカさんを部屋の中へ招き入れてさしあげます。


 建て付けの悪いドアがギィィと鳴りました。


 その音にビクッとなって、思わず声を漏らして、また俯いてしまいます。


 いつも以上に敏感になっているのです。


 そろーり、またそろーりとスピカさんが少しずつ様子を見ながら近付いてきてくるのが感じ取れましたの。


 上目遣い気味に確認させていただきます。


 私の目の前に立って、優しく微笑んでくださっていらっしゃいますの。



「えっと、ね。リリアちゃんのタイミングでいいんだからね。何がどうなってても全然驚かない自信あるよ。だって私、勇者だもんっ」


「それはお頼もしいこと……ふふっ……でもどんな理由でしてよそれ……っ」



 スピカさんのご冗談に、今は素直に甘えさせていただきます。


 私が緊張しないように、平時以上に気を遣ってくださっているのでございましょう。


 ホントに、お優しい方ですわよね。



 すぅー……ふぅー……よし。


 おっけーですの。

 改めて覚悟を決めましたの。


 これまでの人生で何を言われてこようとも。

 これから、彼女にどう思われようとも。


 私は彼女に最大の秘密を打ち明けさせていただきますの。



 深く被っていた布団を剥がして……。


 ゆっくりとこの顔をお見せしてさしあげます。




挿絵(By みてみん)




 ねぇ……スピカさん。


 どうか正直に答えてくださいまし。

 この私の姿を見てどう思われましたでしょうか。


 正直、不安に駆られてしまって……。

 貴女の目を見て話せないのです……。


 だってだって、ヒトの頭には絶対に生えているはずのない巻き角(・・・)が、見えてしまっておりますでしょう……?


 それに、普段は赤いはずの瞳が、今は酷く濁った黄色に変わってしまっているでしょう……?



 己のこの姿が醜く思えて仕方がないのです。


 それも全て、私の人生の中で受けてきた差別や偏見の言葉の影響(せい)かもしれません。


 ある種のトラウマとも言えるのでございます。

 

 

 この角はきっと……先日にご覧になったミントさんのモノとほとんど同じような形状をしているはずです。


 ……角は魔族の象徴(・・・・・)ですものね。


 そちらの角度からは見えませんでしょうが、お尻からは尻尾も生えちゃってるんですの。


 先端がやんわりハートの形になっていて、黒くてツヤツヤすべすべとしていて、とってもしなやかな、人ならざるモノの証……。


 私の意のままに動かせちゃうんでしてよ……っ。



 ………………はぁ。



「どう、でしょうか。幻滅してしまいましたでしょう……?」


「ううん。そんなことないよ。リリアちゃんはリリアちゃんなんだし。っていうかむしろ可愛いくらい」


「……こんな醜い姿の私でも、アナタは一緒に、いてくださいますの……?」


「何言ってんの当ったり前じゃん。あんまり凹々(へこへこ)モード続けてると逆に怒っちゃうくらいかも!」



 うぅ……うぇぇぇ……だってぇ……。


 いつもは自分の容姿に完璧な自信を持っている私ですけれども……。


 この角を目にすると、昔からのイジメや、酷い仕打ちや、辛い思いがいっぺんに思い出されてしまって……一気に悲しくなってしまうんですのよっ。


 この姿は言わば私のコンプレックスの塊とでも言い表せばよろしいのでしょうか。



 私は、間違いなく人間なんですの。


 育ての親からは、生みのお父様もお母様も、どちらも共に人間だったという話を伺っております。


 けれども、何故か私は純度100%の人間ではございません。


 どうやら顔も名前も知らない祖父母か、もしくはその前の曽祖父母に魔族の血が混じっていたのか、末代の私にも少しだけその血が受け継がれてしまっているらしいのです。



 魔族や魔物は真夜の日にこそ最も活性化すると聞いております。


 ゆえに、月に一度、この真夜の日にだけ。


 私の中に眠る魔族のチカラが暴走してしまうのでございます。


 普段は隠れている頭角や尻尾がグイグイと押し出してきては、表側に現れ出てきてしまうのです……っ。


 もはや己の意志ではどうしようもできません。

 収まることを待つばかりなのでございます。



「スピカさんは〝先祖還り〟という言葉を聞いたことがございまして?」



 ……こんな聖女、おかしいですわよね。


 魔族の血が混ざった者が、人々を導く聖女だなんて。


 ずっとずっと、それこそ孤児院に拾われてからも、修道院で暮らすことになってからも、常に心無い言葉をぶつけられながら……必死に生き耐え抜いてきたのでございます。


 

 


長らくお待たせしました。

リリアちゃんの真の姿……!


ああ可愛ええのう……!

己の魅力、無自覚系女子……!


 

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