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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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いやいやちょちょっとスピカさん!?!?

 

 チンピラのお二人が私たちを威圧するかのように、グンと眉をひそめていらっしゃいます。



「恨むンならテメェらの小生意気さを恨むンだな。死ぬほどヒイヒイ言わせてやるから覚悟しとけ。後悔ならオトナの階段登った後でするとイイ」


「なるほど〝弱い方ほどよく吠える〟とはよく言ったものですわね。また一つ勉強になりましたの」


 おあいにく、私どもは圧力に簡単に屈するようなヘタレ子ちゃんではございませんからね。


 無作法なアナタ方にエスコートしていただかなくても、自らの歩む道は自らの手で決めさせていただきますゆえに。


 それに私、簡単にひん剥かれてしまうような安っぽい衣服もプライドも、どちらも身に付けてはいないつもりですの。


 普段から一流の聖女として振る舞っておりますし。


 しかもそもそもそれよりも、ですの。


 女神様、聞いていらっしゃいまして?


 ああいう下品な殿方にこそ、貴女ご自慢の裁きの天雷を下してさしあげてはいかがですの?


 どうせいつものように遠目からご監視なさっていらっしゃるのでしょう。


 我関せずをお貫きなさっても構いませんけれども。


 このままでは貴女の愛する信徒が怒りに任せて、何をしでかすか分かりませんでしてよ?


 後からブーブー言われたって知りませんからね。


 助太刀してくださらないのが悪いんですのっ。


 私の出る幕がないことを祈らせていただきますが、万が一のときは本当に私の好きにさせていただきます。


 売られた喧嘩、買わない理由はありませんもの。


 負けるつもりだって小麦の一粒ほどもございませんのッ!



「さぁスピカさん。やっておしまいなさいまし。そんじょそこらのチンピラさんに、お国の勇者様が負けるはずがありませんわよね? そうですわよね?」


「そりゃあもちろん。でもなー、あっはは」


「ふぅむ? でも、何ですの?」


 不敵な困り笑いをなさっていらっしゃるようですけれども。


 お腰に付けたホルダーから、彼女御用達のナイフを取り出しなさいます。


 まだ、鞘から抜こうとはなさいません。

 少し残念そうなお顔でお続けなさいます。



「いやぁー、実は私、マジガチの対人戦って結構久しぶりなんだよね。おまけに今回は手加減もしないといけないんでしょ?

ホントはスパパーッと首掻っ切って終わらせちゃうのが一番早いなんだけどさ。よくて峰打ちだよねぇ。ちーっと物足りな――」


「いやいやちょちょっとスピカさん!?!?」


「冗談冗談。大丈夫だよ。ちゃんと分かってる」


 あの、ホントにホントですわよね!?


 今さっきにドス黒いご表情が見え隠れした気がいたしますけれども!?


 貴女、普段から基本的にニコニコしていらっしゃいますゆえに、ブチ切れガチ怒りのタイミングがイマイチ掴みにくいんですのっ。


 いつになく微笑みが色濃く見えてしまって、その先に燻る真っ赤な炎に尚更に気が付きにくくなっちゃっておりましたのっ。


 鞘付きのナイフを逆手に構えたまま、正面の男性二人を挑発するかのように指をクイクイっと折り曲げなさいます。



「ほら、二人まとめて掛かってきなよ。女だからって見くびらないでほしいかな。私、ただの人間相手に負けるような鍛え方はしてないつもりだから」


「ほーう。大した自信だ」


「いつまで余裕でいられるかなァ……?」


 勇ましい啖呵につい胸が熱くなってしまいましたが、しかしながらチンピラさん方は冷静に声を合わせて、再びニヤリと笑いなさいました。


 むむっ。早速何なんですのっ!?

 そちらもそちらも余裕そうな微笑みで。


 まさか何か秘策がお有りなんでしてっ!?


 はっはーん、分かりましたの。

 もしかしなくとも絡め手ですわよね!?


 絡め手といったら罠や毒が筆頭ですの。

 

 けれどもおあいにく。スピカさんならともかく私に洗脳や媚薬毒の類いは効きません。


 それはつまり、いつでもスピカさんに治癒魔法を施してさしあげられるってわけですの。


 実質無効に等しいとも言えましょう。


 何より私には女神様の加護がございますし、個人的な使用経験もありますので対処法も充分に存じ上げているつもりです。


 ふっふんっ。私たちのコンビネーションに抜け目はありませんでしてよっ。


 とりあえず渾身のドヤドヤ顔を見せてさしあげましたが、赤いトサカのチンピラさんにはあまり効いていないご様子です。


 むしろその逆……更に嘲笑うかのように――耳を疑うようなことを宣ったのでございます。



「ってわけで魔族の嬢ちゃん(・・・・・・・)。早速だけどアレ、頼むわ」


「ああアレね。別に構わないけど、先に払うモノ払ってからにしてくれる? 話はそ・れ・か・らっ」


「フン。がめついメスガキめ」



 あの、今……ミントさんのことを魔族と。


 たしかに魔族とお呼びなさいましたわよね?



「何とでも言いなさい。ビジネスってのはそーいうモノだから。ほら。さっさと出しなさいよ、報奨金」


「しゃあねェな。クソッ。取っとけ」

 

 正直、私に予備知識がなければスルーしてしまっていたかもしれません。


 ある意味では同族嫌悪の気持ちの裏付けともなるこの重要単語は……私にとっては決して聞き流せるようなモノではございませんの。


 イヤイヤ、というよりちょっと待ってくださいまし。


 何勝手に何事もなかったかのようにお話を進めていらっしゃいまして!?


 簡単にスルーできるお話ではないと思いますの!


 

 ……あ、ちなみに私は正真正銘の人間ですの。


 決して同族ではございませんので、あんまり深読みなさらないでくださいまし。いや本当に。

 

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