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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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テント張り職人のリリアと呼んでくださいまし

 


 一面に広がる、(あお)(あお)(あお)


 いかにも穏やかな湖畔風景って感じですわね。


 今日はあまり風が吹いておりませんゆえ、水面もまた慌ただしく波立つこともありません。


 時折雲の切れ間から降り注ぐ日の光によって、湖面がキラキラと輝いて見えますの。


 とにかく幻想的で、この光景を見れただけでも来た甲斐があったなぁと思えてくるくらいには……心奪われる空間が広がっているのでございます。



 はい、目的地に到着いたしましたのッ!


 大きな湖の横にわりと広めな野っ原がありまして!

 ここをキャンプ地といたしましてよっ!



「ほわぁー……本当にめっちゃくちゃ広いですわねぇーっ。アルバンヌの村をまるごと飲み込めちゃう規模ではありませんことー!?」


「あっははどーだろ。今頃は小麦畑の拡張工事でも始めてる頃なんじゃないかな。今はまだちっちゃな村だけど、いずれはこの湖よりずっと広くなるはずだよ。きっと、ね」


「ええ。是非ともそうなってほしい限りですの」


 皆さまで仲良く小麦を沢山作っていただいて、どの街でも美味しいパンが手軽に手に入るような、そんな素敵な農村になってくださいまし。


 あ、そうですの。小麦でお金儲けに成功したら私たちの銅像を建てていただきましょう。


 単に女神様にお祈りを捧げる聖女としてだけでなく、人々をより良き方向に導いた賢人としても後世に名を残してさしあげるのです。うぇっへっへっ。



「ま、景色を楽しむのもいいけど、早いところテント張っとかないとね。あと夜ご飯の準備もっ」


「ほっほいモチロンですの了解ですのっ!」


 私は光球魔法を扱えますので準備自体は暗くなってからでも別に構いませんが、辺りが明るくて体力も残っているうちに展開しておいたほうが何かと気が楽なのでございます。


 後は寝るだけにしておいたほうがはっちゃけられますし。


 これだけ広くて透明度の高い湖なのですから、沐浴だって難しくはございませんでしょうね。


 肌寒さは焚き火に当たって誤魔化しますの。


 度重なる寒暖差でスッキリ《ととの》整えられること間違いなしでしてよっ!



 という経緯がございましたので、私たちは到着して早々に持参した荷物を広げては、黙々とテキパキと各々の役割をこなし始めております。


 多少のチカラ仕事にはなってしまいますが、今回は私がテントを建ててさしあげましょうね。


 数ヶ月も旅を続けていればもう慣れたものですの。


 (ペグ)打ちやら支柱(ポール)立てやらフライシート張りやら、乙女の非力な腕力でもできるよう、チカラの込め方を模索いたしましたもの。


 私のことはテント張り職人のリリアと呼んでくださいまし。


 一方のスピカさんは今回はキッチン設営をなさっていらっしゃるようです。


 簡易的な焚き火かまどであったりお料理の作業台であったり、今は主にテーブル周りを組み立ててていらっしゃいますわね。


 いつもならばちょっとした身支度の説明など、この辺で終えてしまうんですけれども。


 今日はもうお一人(・・・・・)いらっしゃいますの。



「あのー、ミントさん? 何をボーっとつっ立っていらっしゃいまして? もう目的地に着いたのですから後はアナタのお好きになさってくださいまし。用事がお済みになられましたら、またお声掛けいただければと」


「あ、うん。言われなくても分かってるけど」


「ちなみにご飯が食べたかったら〝働かざる者食うべからず〟なんでしてよっ! ずぅっとお客さまのご気分で食事にまであやかろうとは100年早いのでございますぅっ!」


 それはそれ、コレはコレ、ですの。


 今回の護衛任務に衣食住のケアまでは含まれておりませんもの。


 アナタ、この地にご用事があったのではございませんでして?


 興味がないかと問われたら嘘にはなりますが、他人のプライベートに首を突っ込むほど無神経でもありませんし、どうぞお好きにご行動なさってくださいまし。


 早く終わらせられたのなら、そのときは一緒に食事を囲んでさしあげてもよろしくってよ。精一杯のご機嫌取りをしてあげますの。


 だって、たったの一泊して帰るだけで銀貨8枚が手に入るんですものねぇ。うぇっへへへへへ……っ。


 あ、それともまさか、ご用事の最中も護衛を続けろと仰りたいんですの!?


 さすがに追加報酬を要求いたしますわよ!?

 せめて夜くらいは寝かせてくださいましっ。


 木槌と(ペグ)を握りしめながら、むむむと腕を組んでさしあげようとした、ちょうどそのときでしたの。



「あ、そうだリリアちゃーん。余裕があったら焼き石風呂とかも作ってみるー?」


「はぇっ。ななな何ですのその魅惑的なお風呂はッ!? 作れるならばヤるに決まってましてよッ!」


 焼き石風呂とはもしかして、湖と陸地の境目に穴を掘っては水を呼び込んで、その後に熱々に熱した石を放り込んでお湯にするという、野外でしかできない超自然派のお風呂のコトですわよねッ!?


 そしてアナタ今、余裕があったらと仰いましてッ!?


 その程度の余裕なら私が作ってさしあげますゆえ、絶対にお風呂を設営してくださいましッ!


 こうしてはいられませんの。


 ササッと口の中で簡易的な治癒魔法を唱えて、身体に溜まりつつあった疲労感をほんの少しだけ軽減しておきます。


 ほわわ〜っという暖かな緑色の光が私を包み込んでおりますが、そんなことは一切気にせずにやはり黙々と手を動かしておきますの。


 魔法の詠唱省略は職権濫用ならぬ私権濫用の行いですが、お風呂の為ならセーフとさせてくださいましっ。


 女神さまだって私の身体が清くて潤いに満ち溢れていたほうが心地がよろしいのでしょう!?


 これくらいは目を瞑っていただけませんとっ。


 街の拠点のオンボロ宿にはお風呂が付いておりませんし、街中の銭湯も小綺麗そうなところはちょっと値が張るのですし。


 ゆったりとお湯に浸かれるチャンスなど、今しかないと言っても過言ではないのですッ!


 どこの誰にも文句は言わせませんのッ!!!

 


 あ、それともしもしミントさんッ!?

 一言物申してもよろしくてッ!?


 何故にいまだに直立不動されたままなんですの!?


 ボーっと私たちの作業を眺めているお暇があるのなら、少しはテント張りを手伝っていただいてもよろしいのではなくって!?


 むむぅ。睨みを向ける時間も惜しいですの!


 乙女は背中で訴えかけるのでございます!


 テント組み立て用の部品を絶え間なく触っているせいか、私の手元ではカチャカチャといった音が鳴り続けております。



 そのせい、だったのでしょうか。




「――あ〜、う〜ん。どうしよっかなぁ。変に切り出しにくいなぁ。

……まぁでも仕方ないか。勇者サマも聖女サマも、今のうちに束の間のキャンプ気分、味わっておきなよ。

そう。馬鹿みたいに。呑気に、さ」



 ミントさんが小声で何かをお呟きなさったのを、私は上手く聞き取ることができなかったのでございます。


 

 

あ、この流れ。

もしかして

お待ちかねのバトル展開!?

(*´v`*)

 

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