今すぐドンパチやろうぜヒャッハァァァッ!
意気揚々と続けさせていただきますの。
「親と反のちがいとは、今の世界情勢を――つまりは休戦状況を是としているか否としているか、ですわね。議会で言うなら穏健派と革新派ってヤツですの」
徹底抗戦の道をお選びなさらなかった現魔王さんですが、そんな彼に賛同している方々が〝親〟であり、逆に異を唱えている勢力が〝反〟だと言えましょう。
ちなみに私は基本的に平和で慎ましく、更に望めるのならば数多の愛に包まれて生きていたい派ですの。
その観点からすれば私は〝親・魔王派〟かもしれませんわね。
あくまで戦いを好んでいないという点だけであって、別に現魔王に与み従っているわけでも、崇拝しているわけでもありませんけれども。
「数百年続く休戦状態というのも、実は危ういものなのでございます。ほんの少し勢力分布が変わってしまうだけで、戦乱の世に逆戻りしてしまうかもしれませんもの」
平和を求める方々の一方で、世の中には戦いの中にこそ己の生き甲斐を求めていらっしゃる方々も一定数いるらしいのです。
まどろっこしい休戦協定なんて関係ねぇッ!
今すぐドンパチやろうぜヒャッハァァァッ!
さぁ侵略だァ殺戮だァ戦争だァッ!
という思想をお持ちの、過激かつ革新的な方々が〝反・魔王派〟ってことになりましょう。
属する方々といえば、好戦的な魔物さんや魔族の皆さま方、その他にも人類の存在をあまりよく思っていない種族さんなんかは、今すぐにでも戦争をおっ始めたいと思っていらっしゃるかもしれません。
あとは人の身であっても、フリーの傭兵さんや武器商人さんなど、戦争を生業としている方々は〝反〟に分類されるのではなくって?
何にせよ、穏便という言葉からは程遠い方々と見て間違いはないかと思われますの。
ふぅむ。ああ、何とも恐ろしいこと。
できれば関わりたくはありませんわよね。
しかーし残念ながらッ!
この問題だけは、適当に放っておいても一ミリも解決することはないのでございますッ!
むしろ私たちが一番見て見ぬふりをしてはいけません。
魔王さんとの休戦協定の継続延長こそがその鍵なのですからねッ!
勇者と聖女が協定を更新できなければ、すぐにでも戦争の日々に逆戻りしてしまって、この平和な世の中が終わってしまうかもしれません。
私たちが必ずや成し遂げねばならないのです。
そしてまた、ただ魔王城へ向かうだけの平坦な道のりとはまいりませんでしょう。
混沌に満ちた世界を望む方々がいるということは、今後私たちの旅を阻もうとする不埒な輩が現れる可能性があるとも言えるんですもの。
魔王城に近付くにつれ、困難さは増していくと思われます。
ぶっちゃけおそらく今だけでしてよ。
こーんなにのほほんとしていられるのは。
旦那さま探しの余裕も、まさか今だけぇ……?
「……ともかく〝反・魔王派〟の動向には細心の注意を払っておいたほうがよろしいでしょうね。
もし対峙してしまったときには、単に真っ正面から退けてさしあげるだけでなく、ときには逃げるが勝ちを選ぶのもアリだと思いますの」
彼らがどんな手を使ってくるかも分かりませんし。時間と命がもったいないですし。
卑劣な罠や絡め手、人質に人海戦術……数多の困難が待ち受けていると言っても決して過言ではないのでございますっ。
私の魂の熱弁、少しは伝わりまして?
「そっかぁ。ありがと、何となく分かったかもっ。こんなふうにピクニック気分なおでかけができるのも、今だけなのかもしれないね……なぁんか残念」
「ふぅむぅ。ピンチの際にはスピカさんが守ってくださるのでしょう? 頼りにしてましてよ本当に。私は表立って戦えないのですから」
貴女の傷付いたお身体を治してさしあげることはできますが、それ以前の問題として、危険から守ってさしあげること自体はできませんの。
排斥よりも回避が重要になるのです。
お互いのできることをしっかりと見定めて、できるだけ安全に旅を進めてまいりたいものですわね。
潤沢なお金さえ手に入れば、旅の選択肢だって色々と増やせますでしょう?
やっぱりお金こそが大事ですの。
たーいむ、いず、まにぃ。
ガッポガッポ儲けて楽をなりましょう。
是非ともそういたしましょうッ!!
虚空にガッツポーズをいたしますのッ!!
そうして立ち止まっては天を仰ぎ見て、神よ金よとお祈りを捧げますのッ!!!
「あのさぁ。つーかアンタたち、コレもお金稼ぎの護衛任務だってこと忘れてない? そんな呆けてちゃ報酬の銀貨渡さないよ? それでもいいわけぇ?」
「ほらー行くよーリリアちゃん」
「あ、ちょっと置いてかないでくださいましぃッ!」
お金を盾に取るとは最低ですわよぉ!?
運動不足な乙女走らせないでくださいましぃっ。
ひぃっ……ひぃっ……ふぅぅぅっ……!
この依頼が完了すれば金貨一枚分っ。
多少の泣き言は呑んでさしあげますのぉ……っ!