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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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ごごご合計で金貨1枚分ってことですのッ!?

 

 始めに顎に手を添えて、それから少しだけ腕を組んで、お次に腰に手を当てて、最後には目を瞑ってウンウンと頷きなさいまして。


 あのー、スピカさんや。思考の流れが軒並み身体の動きに現れてしまっておりましてよ?


 そんなお姿もまたお可愛らしいんですけれども。


 どうやらお先にご納得されたらしいのでございます。



「いやぁーリリアちゃんの言いたいことも分かるよ。まぁでも、私たちを(おとし)めたい相手がどこにいるの? って話でもあると思うんだよね。しかもきっちり前金まで払ってくれるってのもさ。さすがに律儀すぎじゃない?」


 うぅっ。そうサラッと言われてしまいますと、そんな気がしてくる感じがないわけでもなく……。


 ただの小さな懸念であれば深く悩む必要もないのでございましょうけれども……。



「仰るとおり、もし途中で依頼をすっぽかされてしまってはお相手方には損しか残りませんものね。正直一理あるも二理もあるとは思いますけれども」


「ね? でしょでしょ?」


「でもそんな安直で大丈夫なんですの……? ただでさえお調子者で有名な私が、何故かマイナス方面にビビッと来てしまっているといいますのに」


 元よりスピカさんは良心の塊みたいな方ですの。


 疑う心は持ちつつも基本的には性善説をベースに生きていらっしゃいます。


 屈託のない微笑みを向けられてしまっては、私の心の闇が一目散に晴れていってしまうではありませんか。


 せめて私は公平性と利益性を重んじた、合理的かつ理知的な女でありたいものですのぉぉ……。


 私の考えすぎ、なのでしょうか。


 依頼者であるミントさんも私たちに逃げられるリスクを承知の上で前金を支払ってくださるのでしょうから、相応に覚悟はされていると思いますの。


 ともなるとやっぱりガッツリ考えすぎでして……?


 あ、いや、でも……。


 他のフリーの冒険者様方とはちがって、私たちのような公的な存在にとっては、依頼の途中放棄こそが一番のタブーとも呼べる行為に等しいわけですし……。


 前金を受け取る以上、簡単には断れないというこの状況こそを狙っているのかも?


 お相手の弱点を狙うのは勝負の常套手段ですもんね。


 そういった観点からすればやっぱり危険そうですし……。


 ああもう、ダメですの。

 もう何度目かも分からない思考の迷路へと突入してしまっております。


 パッと頬を叩いて気合いを入れ直します。


 明確な決定打がないからこそ、半信半疑のままでいることしかできないのでございます。


 もうっ。しっかりなさいまし、リリアーナ。



「ふぅむぅ。考えれば考えるほどドツボにハマってしまいそうですの……!」


 罠か、それとも私の思慮のしすぎなだけなのか。


 わざわざ特別依頼という回りくどい形式を選んで、更にはこちらに受諾の決定権を委ねてきているというのは、罠にしてはさすがに非効率を極めすぎているような気もする一方で……。


 しかぁしそれこそが彼女のバックにいるかもしれない極悪党さんのカムフラージュとも……ああ、頭の先からぁ……火が出てしまいそうですのぉ……。



「はい。ここらで一旦切り上げとこうね。ミントさん、待ちくたびれてあくびしちゃってるし」


「はぇっ」


 耳元で、いきなりスピカさんがパチリとお手を叩きなさいましたの。ハッと息を呑んでしまいます。


 そのままハキハキとお続けなさいましたの。



「何にせよ、先に報酬の金額くらいは聞いておいたほうがいいかもね。それだけでも多少は依頼人さんの本気度が分かると思うんだ。

あとはアレだよ。やらぬ後悔よりやる後悔って言葉もあるわけだし。もう少し心を開いてくれたらキチンと理由を教えてくれるかもだしっ」


「……ふぅむ。スピカさんがそこまで仰るなら」


 やはり貴女の基本方針は迷ったらGOなんですのね。

 でも、貴女らしい素直な選択肢だと思います。


 ……おっけですの。分かりましたの。

 私は私ではなく貴女を信じますの。


 キチンと座り直して、改めてミントさんを正面に捉えさせていただきます。


 今度はまっすぐに目が合いましたの。


 相も変わらずジッとこちらを睨むかのように目を細めていらっしゃいます。


 しかしながら、私はもう臆する気など毛ほどもございません。スピカさんがそばで支えていてくださいますもの。



「こっほん。それではミントさんとやら。下世話なお話で大変申し訳ありませんけれども。

依頼をお受けするしないの結論に至る前に、報奨金の確認をさせてはいただけませんこと?」


「このタイミングで金額ぅ? 別に構わないけど」


 ほほう。意外に駄々を捏ねなさいませんのね。

 素直なことは大変よろしいと思いますの。


 できればずっとそのままでいてくださいまし。


 改めて仰々しく、されども一応は礼儀も正しく。


 私たちを雇用するためにいくらご用意いただいたのか、是非とも拝聴させていただきましょうか。


 ごくりと大きく息を呑み込みます。



「とりあえずの前金払いで銀貨2枚。最終的な報奨金で更にその4倍(・・)。依頼完了の条件は……そうね。行ってココに帰ってくるまでって感じでどう? そこまで悪い話でもないと思うけど?」


 特に隠すようなそぶりもなく、ミントさんは堂々とお口をお開きなさいましたの。


 えっと、始めが2枚、そこから指折り数えまして……。



「はぇっ!? ごごご合計で金貨1枚分ってことですのッ!?」


「それ以外に何があんのよ。あ、分かったぁ。アンタ阿呆だからすぐには理解できなかったんでしょう? それともビンボー人には夢みたいな金額ぅ? うっわぁーざっこぉ」


「うううっさいですのっ! 毎度毎度的確に図星を突いてこないでくださいましっ!」


 けれども驚きなのでございます。


 それだけの大金をいただけるのであれば、依頼を受けない理由はございませんの。


 たとえコレが罠であったとしても……っ! 

 金はリスクより重いのでございます……っ!


 むしろ前金の分をいただけるだけでも、メリットのほうが余りあるのでございますぅぅうっ!


 うまくいけば数日は豪遊できる余裕さえ生まれてしまいますの〜。



「金貨、金貨。だって金貨でしてよ!?」


 大変な肉体労働とは楽々おさらばできるレベルの破格さと言えますの〜。


 受けない選択肢が消え失せましたの〜。


 そ、それにほらっ。別にお金稼ぎはこの街だけでしか行えないわけでもないのですしっ?


 もしも護衛の最中で怪しさをMAXに感じられてしまったのならば、それこそ即座にトンズラをキメ込んで、トレディアの街に悪い噂が広がる前にさっさと出発してしまえばよろしいだけなのですしっ?


 先ほどのスピカさんのお言葉を思い出します。


 〝やらぬ後悔よりやる後悔〟と仰っていましたわよね。


 私、逃した大魚に後で口惜しみたくはありませんの。


 とりあえず全部試してみてから一気に後悔したほうが、ずっとウジウジしているよりも清々しい気もしているのでございます。


 よーしッ。危惧はたった今吹っ切りましたのッ!



「だって金貨1枚は……破格ですのぉ……ぅぇへへへ」


「リリアちゃん。目が金貨の形になっちゃってるよ。あとヨダレも」


「おぁっと私としたことが」


 袖口でちゃちゃっと口元を拭っておきます。

 


「で、結局どうすんの? アンタら受けるの? 受けないの? ねぇ腰抜けの聖女サマと勇者サマ?」


「「もちろん引き受けさせていただきます!」ですの!!」


 世の摂理とはハイなリスクを乗り越えてこそ、ハイなリターンを得られるようにできておりますの。


 それにどんな乙女であれ淑女であれ、目先の大金の誘惑には勝てやいたしませんものッ!!!

 

 ささっ。そうと決まれば即行動でしてよっ。

 うだうだ言ってないで出発いたしますのっ!


 何事も善は急げでしてよっ! お二方っ!

 

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