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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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でも多分……十中八九は罠でしてよ?

 

 地図を読めない私にとっては、街の近隣環境など気にも留めたこともございませんでした。


 ほとんどスピカさんに着いてく着いてく状態でしたもの。


 決して褒められたことではありませんけれどもっ。


 あのぅ……。おんぶに抱っこを重なるようで大変恐れ入りますが、どうか土地勘のない私でも容易に光景を想像できるよう、これから辿る道順を踏まえて教えていただけませんこと?


 本気の困り顔を見せてさしあげましたの。

 するとどうでしょう。


 ふふっ。さすがは親愛なるスピカさんですの。


 仕方ないなぁとこぼしながらも微笑んで、空間に絵を描くようにして補足してくださいました。



「うんっとね。湖(ほと)りの草原となると、たしか街の外れの農林エリアを越えた先にあったかな。一応は徒歩で行ける範囲だとは思うけど……日帰りだとちょっとキツいかも。

時期が時期ならキャンプとかで賑ってる場所だと思うんだけど、今はオフシーズンだから特に何もなかったはず」


「オフシーズン……湖に入って遊ぶにはちょっとちべたい時節ですものね」


「そうだね。多分風邪引いちゃうかな」


 ふぅむ。となりますと、本当に向かうならほぼ必然的に一泊二日のミニ旅になってしまいそうですわね。


 私、頑張れば何とかできることは、極力頑張らないでコトを進めたい主義なんですの。


 だって眠い目を擦りながら暗い夜道を歩きたくはありませんもの。


 魔法の光によって辺りを明るく照らすことができるとはいえ、注意力は格段に落ちてしまうと思われます。


 もし行くのならば泊まりましょう。

 是非に及ばずそうしましょう。


 本当に行くのならば、ですけれども。



「でもどうしてまたそんな辺鄙なところに? それに街からあまり離れていないのであれば、お一人でも行けますでしょう?」


「たしかに」


 別に大した魔物の目撃情報も上がってきてはおりませんでしょうし。


 もし危険な生物が悠々と闊歩しているような環境であれば、レジャー用の土地とはならないはずですの。


 日頃から討伐の依頼が出ているのであれば、真っ先に私たちが目をつけて、更には片っ端から片付けていると思いますし。


 討伐系の依頼って、他と比べるとケタ違いに報酬が美味しいんですの。


 それこそ迷子のペット探しを三回行うよりずっとお得なのでございます。


 でも、そういった観点からの護衛依頼ではないんですよね?


 ふぅむ……謎は深まるばかりですの。


 護衛任務とは言っても特に危険な魔物の情報は出ておらず……おまけに頑張れば街の住人でも辿り着けるような場所ともなりますと……。


 勇者と聖女(わたくしたち)でなければならない理由がどこにあるのでございましょう?


 小首を傾げてさしあげます。


 ……あらら。グッと睨まれてしまいましたの。



「ちなみに余計な詮索は受け付けてないのでヨロシク。アタシ金払う、アンタら金もらう。それだけで充分じゃん? 別に危険な場所じゃないなら尚更問題ない感じでしょ? それとも今代の勇者と聖女って、ビビリ(・・・)なの?」


「んなぁっ」


 今のはさっすがに聞き捨てなりませんわね。


 百歩譲って慎重にはなっているかもしれませんが、それは確固たる安心要素が見つかっていないからですのっ。


 私だって分かっておりますのっ。スピカさんほどの実力者がいれば、まして回復特化の聖女がそばにいればっ!


 まず間違いなく怖いモノ無しなんですのっ、


 フフンとこちらを鼻で笑ってきているご様子、トンデモなくナマイキなのでございます。


 あからさまに私たちを挑発してきているような……?


 どうも私には裏があるような気がしてなりませんのよね。


 彼女の含みのある挑発に、言い表しようのない引っかかり(・・・・・)を感じられてしまうのです。



「……ふぅむ。結論へと至る前に」


 この護衛依頼、簡単に鵜呑みにしてはいけないと思いますの。


 しっかりと話し合っておいたほうが安全かと思います。



「ねぇねぇスピカさんや。聡明かつ博名で有名なスピカさんや、ですの」


 というわけで、お隣のスピカさんのお肩をチョンチョンとつっつきまして、気を引かせていただきまして。


 それから可能な限り身を小さく屈めておきます。


 どうか私と同じ姿勢になってくださいまし。

 すぐ目の前でひょこひょこと手招きもいたします。



「あ、ちょっとごめんねミントさん」


 よかったですの。上手い具合に伝わりましたの。


 彼女もまた、ちょこんとソファの上で膝を抱えるような姿勢になってくださいます。


 更に小動物らしくなって、とっても可愛らしいですわね。そのままお持ち帰りしちゃいたいくらいには愛らしいお姿なんですの。


 ぐへへへへへぇ、ですの。



「で、どしたの、リリアちゃん。何かまたよからぬことでも考えてる?」


「あっと。この顔はちがいますの」


 ニヤつきかけた顔を無理やり引き締めて、すぐに真剣な面持ちになってさしあげます。


 そうしてごくりと大きく息を呑み込みまして、神妙に続けさせていただきますの。



「……実際のところ、スピカさんはどう思われまして? 何だかあんまりよろしくない香りがいたしませんこと?」


「うーん。まぁたしかに、変だなぁってのは思うんだけどさ。でもまだぎりセーフの範囲内かなぁって」


「でも多分……十中八九は罠でしてよ? 明らかに怪しさムンムンのムンですものっ。誰でも立ち寄れそうな場所に、わざわざ私たち二人を指名する理由がどこにございましょうか……」


 正直、己への自信と安心感だけで片付けられないほどには謎と未知に満たされてしまっておりますの。


 もし女一人では不安で、なるべく同性かつ複数人で行動しておきたい的な乙女な理由でしたら、私も全力で協力してさしあげられるんですけれども。


 彼女の理由が分からないから困惑しているのです。


 私としては、ここは〝(けん)〟を選択しておいたほうが安全かと思っているくらいですの。


 スピカさんはどのようにお考えでして?

 

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