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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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度々見かける軽作業とは決して楽なお仕事ではありませんの〜っ

 



「ふわぁぁ……ぇぁ……ぁふ。ねむぅぅぅっ」


 

 朝早くから冒険者ギルドに赴いては掲示板に貼られた依頼を確認し、良さげな内容を見つけては着実に遂行し、そして報告しに戻ってくる日々を過ごすようになって、早くも十と余日が経ちましたでしょうか。


 目を瞑ったまま古宿に歩いて帰ってこれる程度には、このトレディアの街での生活にも慣れてしまったのかもしれません。


 ここ最近は特に早起きが続いておりますの。

 美味しい依頼はすぐに先取りされてしまうんですもの。


 どこのどなたよりも先に確認して、いち早く現場に駆けつけてを繰り返していれば、寝不足のねぶちゃん状態にもなってしまいましてよ……。


 ちなみに報酬が豪勢なモノは総じて時間も掛かりますの。


 夜遅くに帰ってくることも多々ありましたゆえに、慢性的に睡眠が足りていないのが重なりましてぇ……。


 ふわぁふという大きなあくびと共に眠い目を擦りながら、目覚ましがてらに大声で歌いながら道を歩く私をどうかお許しくださいまし。



「ふんふ〜……ふんふふ〜」


 ちなみにどなたにも音痴だとは言わせませんの。


 オリジナルの即興歌ゆえに、決まった音階とフレーズが存在していないだけですの。


 自由と不定形こそが私の全てなのでございますっ。



「こっほん。あ〜あ〜。今日の依頼はなんでして〜っ。

正直、道端の草むしりは飽きましたの〜っ。度々見かける軽作業とは決して楽なお仕事ではありませんの〜っ。

風通しのよい職場はブラック間違いなし〜っ。やりがい搾取は蜜の味〜っ。あーあー……なんて素敵な労働者生活ー……ですの……」


「あっはは。根性が足りてないからだよリリアちゃん」


「そう仰るスピカさんこそ、底無しの体力はどこから湧いて出てきていらっしゃいまして!? お子さまよろしくな超絶ロリ体型なんですのに!? 肉体強化の魔法も掛けられておりませんのに!?」


「えっへん。鍛え方が違うんだよ、ウンウン」


 そんなぁですの。毎日ほぼ同じモノを食して、同じ空間で寝泊まりしていると言いますのに、


 どうして世の中はこんなにも理不尽なのでしょうか。

 悲しさに涙がチョチョ切れてしまいそうですの。


 もしかして、勇者さまは魔法に頼らずとも、大前提として身体能力補助の加護が働いていたりしますの……?


 ともすれば、どうして主たる女神様は、仕える者(わたくし)の貞操を守ることだけに固執なさって、体力やら気力やら、ベースとなる部分には全く興味を示してくださらないのでございましょう……?


 ……あ、分かりましたの。

 真面目でお堅い女神様のことですの。


 ガチめなへろへろ状態では、私が性欲を満たす気も起こさなくなると思っていらっしゃるからですわよねぇー?


 ……も、もちろん冗談でしてよ。


 本気になさらないでくださいまし。

 私から最後の癒しを奪わないでくださいまし。


 訂正いたしますの。きっとアレですの。


 スピカさんはスレンダーなご体型ゆえに様々な負荷が少なく済んでおりますが、対する私はボンキュッボンな魅力的体型です。


 彼女の何倍も疲労の溜まり方が大きいのだと思われます。


 そう思い込んでおかないとメンタルがへこへこのへこりんになってしまいそうですのー!


 決して私は筋肉より贅肉が多いわけでは……いえ、そうとは言い切れない不摂生さにも自覚が……ふぅむぅ……。



「ええいっ。そんなことはどーでもいいですの! 今日もあくせく馬車馬のように働けばよろしいのでしょう!?」


「ゴールは近いよリリアちゃんっ」


 揺れ動きつつある心を誤魔化すように、冒険者ギルドの入り口のスウィングドアを豪快に開け放ってさしあげます。


 気分は〝たのもー!〟な乗り込み野郎ですの。

 正確には野郎ではなく乙女なんですけれども。


 わりと大きな音を立ててしまったことにシュンと反省しつつ、今日もまたカウンターの向こう側に静かに佇んでいらっしゃる受付様に軽く会釈を向けておきます。


 相変わらずご出勤がお早いんですのね。


 貴女、固定休はないんですの?

 それともココには住み込みで働いていらしたり?


 ほぼ毎日のようにお姿をお見かけいたしますけれども。


 私たち以上に過労に悩まされてはおりませんでして?


 人生相談くらいなら聞いてさしあげますの。


 私、こう見えて紛うことなき聖職者ですゆえに。

 迷える子羊さん方をお導きするのが本来のお仕事なのですから。


 そんなふわわ〜っとして根拠も脈絡もない瑣末事を、寝ぼけた頭ながらに考えていたのですけれども。


 完全に、杞憂らしかったのでございます。



「ああ、ちょうどよかった。お見えになるのをお待ちしておりました」


「はぇ? 私たちを?」


「はい。他でもない勇者様(・・・)聖女様(・・・)のお二人を」


 予想だにしない一言に面を食らってしまいましたの。


 滅多に話しかけてこない受付様が、珍しく開口一番に自らアプローチしてきたのでございます。


 えっと何ですの? 今日はお祭りか何かでしたの?

 それとも至極面倒な厄災のスタート日でして?


 思わず身構えてしまったのは私の第六感がむやみやたらに鐘を鳴らそうとしたからでしょうか。


 恐る恐るカウンターに近付かせていただきました。


 到着し次第、正面の受付様から折り目一つない新品同様のペラ紙を一枚手渡されましたの。


 コレ、掲示板に貼り出されている依頼書と同じ形式の紙ですわよね?


 もしかしなくとも掲載される直前のモノでしょうか。


 お一つ、用紙がいつものくすんだ茶色ではなく、ほんのり高級そうな紫がかった質感なのが気になりますけれども。


 とりあえず内容を一瞥してみましょうか。


 ふぅむふむふむ、どれどれ……?



「護衛依頼……前金有り……受注者、勇者と聖女のみ……あんまり見たことのない文言ばかり書いてありますの」


「こちら、受注人指定の特殊依頼書にございます。時期や対象者のご都合にも左右されますので普段はお断りさせていただいているのですが、今回は依頼人の方がどうしても、と」


「はぇー。私たちも有名になってしまったものですわね。売名行脚を続けた甲斐がありましたの」


「いや、別に身分を明かしてギルド依頼をこなしてたわけでもないけどね。実際、堂々と名乗ったのは初日くらいだと思うし」


 早速ながらスピカさんのツッコミが光りました。

 それも確かに仰る通り、ですわよね。


 ふぅむ。でもなーんか引っかかりますの……。

 単に私の思い過ごしであれば嬉しいんですけれども。


 依頼人とやらが本当にお困りのようであれば、すぐにでも手を差し伸べねば女神様に叱られてしまいますし。


 何より珍しく前金までいただけるらしいのです。

 身を引くはその後でも遅くはないと思われます。


 一応、お話くらいは聞いてさしあげましょうか。

 

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