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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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私の美貌と欲望を活かしたマッサージ業を

 

 その後はご機嫌斜めになってしまったスピカさんに甘味の選択権を譲ってさしあげたり、肩揉みやら荷物待ちやらを積極的に施してさしあげたりいたしまして、何とかトレディアの街の散策を終えましたの。


 いやぁー、私の秘密を打ち明ける際は痛いのは避けたほうがよろしいかもしれませんわね。


 前情報が足りなすぎるのもNGだと思いましたの。


 次回の真夜の日を迎える際には大いに参考にさせていただきましょうか。


 さてさて。

 ということで本日の散策につきまして。


 屋台通りや新鮮仕入れ市場など、街の主要部の大半は歩けたと思うのですが、中でも職人街などは眺めていてとっても楽しかったですわね。


 武器屋さんだったり防具屋さんだったりと、多数の冒険者向けのお店がございまして、最新のトレンド装備がズラリ勢揃いしておりました。


 特にスピカさんは綺麗な宝石の埋め込まれた小型ナイフに興味を惹かれていらしたようで、その目をキラッキラに輝かせていらっしゃいましたの。


 少々値が張るシロモノではございましたが、デザイン的にも機能面的にも、今後の旅に役立つコト間違いなしな物品でもありました。


 お財布事情にもう少し余裕が出てまいりましたら、購入を検討してみてもよいかもしれません。


 何にせよ先立つもの(お金)がなければ絵に描いた小刀でしかありませんの。


 これからなるべく効率よく、そして時間をかけずにお金稼ぎをいたしましょう。


 そのために頼るべきは冒険者ギルドですのッ!


 私たちは初級の許可証しか持っておりませんけれども、勇者と聖女という肩書きを上手く使えば、それ以上の案件だって受注することができるはず……!


 使えるものは何でも、最大限に利用していく所存でしてよっ。


 それでは、リリアーナ・プラチナブロンドによるキュートでクレバーな錬金術、トレディアの街にて、これより華麗に優美に始めさせていただきますのっ!






――――――

――――


――




 それからまた、早くも数日が経過いたしました。


 口糊を凌ぐために毎日必死に働いておりまして。


 ギルドの受付様に、達成報告をする夕夜のこと。



「――は、はぁーんっ!? たったのこれっぽっちですのぉ!? 少しくらいは報酬に色を付けていただいてもよろしいかと思うんですけれどもぉ!?」


 冒険者ギルドのカウンターをビシバシと叩いては、受付様に直接訴えかけてさしあげますッ!


 日も既に落ちて、建物の中にも人が少なくなってきた頃合いに、ようやく今日の依頼内容が片付きましたの!


 文字通りに足を棒のようにして、へろっへろになりながらも舞い戻ってまいりましたのっ!


 まる一日フルに使って粉骨砕身いたしましたのッ!


 だと言いますのに、私たちの日給がたったこれっぽっちの金額ですと!?


 もっと出していただかないと割に合いませんの!!!

 


 ……ふ、ふぅむ?

 面倒で厄介な悪質クレーマー?


 いったい誰のことでしょうか。


 わ、私は私の頑張りを正当に評価していただきたいだけですのー!


 誰が好き好んでこんな疲労しかない肉体労働に勤しむものですか……!


 愚直に汗水垂らして働くよりも、私たちにはもっと似合ったお仕事があるはずなのでございますぅー!


 それこそほら、聖女の癒しのチカラを活かしたマッサージ業を行ったりだとか、私の美貌と欲望を活かしたマッサージ業を意味深に行ったりだとか、その他にもぉ……!


 うぐっ。


 今日はずっと中腰の姿勢で移動していたせいか、背中に地味ぃな痛みが走ってしまいました。


 全身の骨々が軋むほどの重症なのです。


 早いところお宿のベッドに横になりませんと……!


 あんな古ぼけた安宿でも、毎日安全に寝られるだけマシだとは思います。


 けれどもお風呂がないのが難点ですの……。


 お布団に飛び込む前に、毎度毎度全身に洗浄魔法をかけなければいけませんものね……。


 ふぅむ……しかも今日は特に念入りに行わなければなりません。


 修道服の色が変わるほどに汚れてしまったんですもの。


 とりあえず眉をハの字に寄せつつ、そして口をヘの字に曲げつつ、相変わらず仏頂面をお続けなさる受付様に必死に救いの手を求めさせていただきました。



 ……しかしながら。



「貴女様のお気持ちも分かりますが、こちらは規則で決められた金額ですので。そもそも報酬額をご確認の上で依頼受注されていらっしゃいましたよね?

〝ふっふん、コレくらいちょちょいのちょいの朝飯前でしてよ!〟とも朝方に仰っていらしたかと記憶しておりますが」


「ぐっ、ぐぬぬぬぬぬぅ……っ!」


 淡々とド正論を並べられてしまっては何も言えなくなってしまうではありませんか。


 それはそれとして受付様、ビックリするくらいに私の声マネがソックリですわね。


 もはや遠隔通信魔法で顔を隠してお話ししてみたら、通話相手を騙せそうなレベルでお上手ですの。


 毎日沢山の方々と接するうちに身に付けなさったご特技なのございましょうか。


 惚れ惚れするほどの仏頂面からどうやって感情豊かな声を出されているのかは全くの不明ですが、確かに私、今朝にまったく同じセリフを言ったような気がしなくもありません。


 こ、このまま押し黙ってしまっては交渉が簡単に決裂してしまいますので、とりあえず詭弁やら情論やらを並べて訴えを続けさせていただきます……っ!



「んだってぇ! こんなに大変だとは思いませんでしたのぉ! 私たち、人一倍に泥だらけにも埃まみれにもなりましたのぉ! この街の安心と平和を守るために、人知れず無事に見事にお仕事達成いたしましたのぉ!

ですからどうか受付様。主の女神様も涙を流すようなお慈悲とお恵みをぉ……」


「横からごめんねリリアちゃん。今日のお仕事内容はあくまで地下水道のお掃除(・・・・・・・・)迷子のペット探し(・・・・・・・・)だったわけだからさ。銀貨一枚ってのは結構妥当な金額だと思うんだ。むしろ相場よりもちょっと多いくらい?」


「…………それは、重々、承知しておりますけれども」


 ちょっとぉ。

 横から最強の正論を足さないでくださいまし。


 とりあえず駄々を捏ねてみた私がカッコ悪く見えてしまいますでしょう!?


 ……ぐぅ。分かりましてよ。

 銀貨一枚、ありがたく頂戴しておきますのっ。


 これで目標金額にまた一つ近付きましたわね!

 ホントに牛歩レベルではありますけれども!


 うぅ、まだまだ先は長そうですの……っ。

 もうしばらくしたら、真夜の日になりますし。


 今のところは何事もないですので、次回も無事に迎えられるとは思いますけれども、


 まだまだ油断はできませんわよね。

 引き続き誠実に過ごしてまいりましょう。


 えっへん、ですの。

 

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