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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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お互いに首を傾げている姿がおかしくって

 


「お待たせいたしました」


「ま、待ってましたのっ!」


 倫理的な道からは逸れないかつ、非合法にギリギリ片足を突っ込むか否かという絶妙なお金稼ぎ方法を思いつこうと躍起になっていたのも、ついほんの数分前のこと。


 ご安心をば。

 今はもうだいぶ落ち着いておりますの。


 カウンターに並べられていた最後の素材を鑑定し終えたのか、さらりとメガネを外された受付様のお声によって、難解な思考の迷路から完全に帰ってまいりました。


 どうも皆さまご機嫌麗しゅう。


 私、リリアーナ・プラチナブロンドは今日も今日とて美人さんですの。


 この後すぐにギルドの建物を出たら、きっと道行く人々が軒並み振り返っては顔を確認しに戻ってくるくらいには美人さんに違いありませんの。


 多少の願望は混じっておりますけれどもっ!


 やっぱり私、絶世の美女たる存在が汗かきべそかき地道に働くのはもったいないと思うのですっ。


 それこそ何の気なしに周囲に笑顔を振りまいておけば、聖女宛のお布施の一つや二つ、簡単に恵んでいただけるのでは、と。


 浅はかながらに己の可能性を信じますのっ!


 こっほん。とりあえず奥の手は後でコッソリとお試ししてみるとして。


 今は素材の査定結果を拝聴することにいたしましょうか。


 期待に満ちた目で受付様を見つめさせていただきます。



「ご掲示いただいた魔物素材と、先の討伐報奨金とを合計いたしますと……このくらいでいかがでしょうか。どうぞお目通しくださいませ」


 一枚の小さな書類を手渡されました。


 私が物思いに耽っている間に描き(したた)められたであろう今回の明細書なのでございましょう。


 確かに提示した素材はそこそこに数がございますし、一つ一つ買取価格をご説明されてしまっては日が暮れてしまいますからね。


 背の足りないスピカさんに代わって私が用紙を受け取って、彼女の目線に合わせてさしあげます。


 二人一緒にまじまじと眺めてみますの。


 えっと、どれどれ……?



「「こ、これはッ!」」



 つい〝ですのッ!?〟を付け忘れてしまうくらいにはその額に驚愕してしまいました。


 スピカさんともシンクロしてしまいます。

 旅立ちのあの日を思い出しますわね。


 とにかくイチの桁から順々に数え直します。


 ふぅむ、やっぱり間違いありませんの。


 目の錯覚か合計値の書き間違いかとも疑いましたが、全て合っているようです。


 スピカさんとも目を合わせ直します。


 ……そして。



「こんなにもらってもいいのかなぁ!?」


「これっぽっちしかいただけませんの?」


「「……うん?」」


 もう一度声が重なってしまいました。


 二人して顔を見合わせて、お互いに首を傾げている姿がおかしくって、クスクスと微笑みを零してしまいます。


 一通り笑ったのち、改めて彼女に確認してみます。


 スピカさんがこの額でヨシと仰るのであれば私は気にいたしませんが、一応、ね。


 もちろん到底贅沢三昧できるレベルではありませんので、ちょっとだけ残念ではありますけれども、納得次第はするつもりですの。



「お金をいただけるのはありがたいのですが、これでは貴女が無駄に傷だらけになられたみたいで、割に合わなくありませんでして?」


「そうかなぁ。充分すぎるくらいだと思うけど。パッと行ってチャッと狩ってスッて戻ってくるだけでこんなにお金もらえるんだよ? かなりお得じゃん?」


「そんなモノなんですかねぇ……ふぅむぅ……」


 生まれてこの方、重労働というものを経験したことはございませんが、多少なりとも生命の危機に晒される以上、魔物の討伐依頼にももう少し色をつけて欲しいと思ってしまったのも事実なのでございます。


 それともアレでしょうか。


 戦いを生業にしている方々にとってはあの程度の生傷など数えるほどのモノでもなくて、そういうあくまで私生活の延長上にあるモノは苦とはカウントしていない……とか……?


 もしや歴代の勇者様って戦闘民族の家系なんですの?


 戦いの中でしか己を表現することが出来ない的なストイックな生き方が主なんですの?


 もう少し深く知っていく必要があるかもしれませんわね。


 私はまだ、スピカさんのことをほとんど知らないんですもの。彼女の思いも、金銭感覚も、好みの殿方も。



 まだ私たちの後ろに他のお客様は見えておりませんが、痺れを切らされたのか、受付様が再度促しのお声がけをしてくださいました。


「いかがなさいますか? 報奨金は変えられませんが、素材の買取額につきましては、専門店に出向いていただいて、自ら交渉していただくのも手としてはございますが」


「いえ、ご査定ありがとうございましたの。何の文句もございませんの。買取のほど、よろしくお願いいたしますの」


 ぺこりと一礼をお見せしつつ、大人の微笑みもお返しいたします。


 トレディアの街の冒険者ギルド様にはこれから何度もお世話になるんですもの。


 なるべくよき関係を築いておいたほうが何かと便利になるって寸法ですものね。


 世間知らずの私でもそれくらいは分かりますの。



 銀貨が1枚に、銅貨が2枚。


 これが私たちの、最初のお金稼ぎの結果でございました。


 多少はお財布の中身も潤いましたので、この後は美味しいご飯屋さん巡りと洒落込みたいところでしたが……その前にまずは今晩のお宿探しですの。


 街中で野宿はカッコ悪いですものね。

 久しぶりに湯浴みもしておきたいですし。


 もうしばらくの辛抱なのでございます……っ!

 

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