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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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言い換えれば世はまさに省エネ時代……っ

 

 ようやく落ち着いた空気感に、私を含めたこの場に残っている三人とも、ついつい安堵の溜め息を吐いてしまいました。



「それにしてもとんだご災難でしたわね。結局は彼らのただの言いがかりだったわけですから」


 ポロッと(こぼ)れてしまった私の言葉に、受付様がクスりと苦笑をお浮かべなさいましたの。



「いえいえ、仕事柄よくあることですので。こちらこそ、仲裁していただいてありがとうございました」


 ぺこりと綺麗に礼をしてくださいます。


 そういえば今になって初めて微笑みのご表情を見れたかもしれませんの。


 つい先ほど見知ったばかりの間柄ではありますが、本当に今の今に至るまで、鉄面皮かと疑うほどに表情筋の乏しいそぶりをお見せなさっていらしたんですもの。


 きっと緊張の糸が解けたせいもあるかもしれませんわね。


 何にせよ、早めにカタがついてよかったのでございます。


 安心して次に進むこともできましょう。



「というわけですので、厄介な先客もいなくなったことですし、お次は私たちのお相手をしていただいてもよろしくて?」


「はい、何なりと。それが私どもの業務内容ですから」


「それではお言葉に甘えて遠慮なく、ですの」


 直前を陣取っていたチンピラさん方がいなくなったということは、晴れて正式に私たちのターンに持ち込めたということですし。


 このままお手持ちのアイテムたちをスムーズに換金できるはずですの。


 ついでに欲を言えば、偶然にも依頼書に載っていた魔物を討伐していたのですし、単なる素材の換金料だけでなく依頼達成の報奨金もゲットできるってことなんですわよね!?


 うっふふふ〜ん。間違いなく濡れ手でアワワな大儲け違いなしですの〜。


 ようやく私たちの時代が訪れてくださいましたの〜。


 上手くいけばお財布事情にもちょっとは余裕が生まれるはずでしょうし、この後は休憩がてらに市場で食べ歩きを試みたり、新たな美容グッズに手を出したりしても許されるかもしれませんわねぇ〜っ。


 ついつい心がウキウキ弾んでしまいます。


 取らぬアニマル何とやら、という言葉もございますが気にしていては始まりませんの。


 鼻歌まじりにカウンターに袋の中に残っていた素材を並べさせていただきます。



「というわけで先ほどお話に挙げさせていただいたヒュージプラントの素材を買い取ってくださいまし。私たちには扱いきれませんゆえ」


 確かに茎皮やツルなどは相応に丈夫そうでしたが、私たちの旅道具として使うには少々使い勝手がよろしくありません。


 しっかりと乾かした今でも微量ながらヌメヌメが染み出してくることがありますし。硬く縛るその度にイラッとしてしまうのでございます。


 ほどよく(なめ)された革や固く編まれた縄のほうがよっぽど使いやすいんですの。


 自ら無理して使いきるよりも、質の良い出来合い品を仕入れたほうが何だかんだで手間暇を無駄にすることもなく済むのです。


 素材の加工はプロにお任せしたく思います。


 熱湯に浸したり火で炙ったり油を塗ったり……ほ、ほら、私がやると手やお肌が荒れちゃいますし。


 絶世とまで謳われた美貌に傷が付いてしまいますでしょう?


 決して私が怠惰かつ傲慢な性格な聖女だからではないですの。合理的かつ最適な思考ができる有能さんだからですの。ふ、ふっふんっ。



「……それでは物品を拝見いたします。しばらくお待ちいただければ、と」


「ええ。よろしくお願いいたしますの」


 のほほんとしかけていたこの場ではございましたが、受付様が片側だけの丸眼鏡を装置し直しなさったその瞬間に、辺りの空気がピリッと引き締まったような気がいたします。


 一つ一つ手に取っては質感や細部に至るまでを確認なさっていらっしゃいます。


 刺すような鋭い目つきに乙女の内心がゾクりと反応してしまいましたの。これはお仕事人の真骨頂を見てしまったかもしれません。


 きっとこの人、冒険者ギルドの受付はあくまで仮の姿であって、その実はもっとずっとお上の地位に就いていらっしゃる超重役様なのでは……!?


 街の状況を知るために、あえてこの建物内で働いていらっしゃるのでは……!?


 などと意味もなく勘繰ってしまったり。


 もちろんのこと冗談ですの。


 後まで覚えておくだけ無駄という、いわゆる乙女の気晴らしな戯言の一部なのです。


 ふっと自虐的な微笑みを口元から逃したのちらチラリと横目にスピカさんを一瞥いたします。


 彼女もまた時間を持て余していらしたのか、私と目を合わせたのちに何やらモジモジとし始めなさいましたの。



「……えっへへ。なんだかドキドキしちゃうね。もっと丁寧に狩っておいたほうがよかったのかな」


「そんな器用な戦い方が出来るのであれば、貴女も傷だらけになんてなっていないと思うんですけれども」


「あっははその通りだね。もっと精進しますっ」


 言葉に合わせてスピカさんがビシッと敬礼なさいました。その意気やヨシですの。


 ただし、口を酸っぱくして再三に言わせていただきますけれども。どうか無理だけはなさらないでくださいまし。


 もちろんお金が有るに越したことはございませんが、一応は二の次でよろしいのです。


 まずは安全と健康とが最優先事項なんですもの。


 私たちはこのまま無事に旅を続けて、生命の危機に晒されることもなく使命を成し遂げて、それから王都に返り咲いた後はもうバラ色・夢色・黄金色な素敵余生を過ごすだけなんですの……!


 言い換えれば世はまさに省エネ時代……っ。


 無駄を無駄に消費するコトこそが最高級の贅沢というもの……っ。


 となればその逆もまた然り、楽してお金を得ようとするのは、やっぱり人の(つね)であり(ことわり)であり、チンピラさん方をただの悪者で終わらせてしまうのも可哀想な気がしなくもなく……っ。


 あ、たった今天啓がおりてきましたわね。



「もしくは、討伐した魔物の表皮だけに回復魔法(ヒール)をかけてみて、あたかも綺麗な個体を狩ったように取り繕ってみるとか、そんな作戦はいかがでしょう?」


「……リリアちゃんってさ、結構セコいよね」


「世渡り上手と褒めてくださいまし。貴女が素直で健気すぎるんですのよ。バレなきゃ咎められることだってありませんの。むしろバレるから色々と面倒事になってしまうんですのー……」


「火のないところに煙は立たずだよ、リリアちゃん」


 確かにそうとも言いますわね。


 勇者と聖女という身分ゆえに下手な行動はできませんが、綺麗事を成すだけで魔王城に辿り着けるほど、道のりも容易ではないと思いますの。


 このトレディアの街を滞在拠点にして、パパパッとまとまったお金を稼ぐことができればそれが一番なんですけれども……!


 そんな簡単に上手くいかないような気もして、ちょっとだけ不安になってきてしまいます。


 あ、あのー……受付様?


 鑑定のほど、もう少し時間がかかりそうな感じなのでしょうか……? 集中なさっているところ、邪魔だけはしたくないんですけれども……っ。


 

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