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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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さぁさぁご観念なさいましッ!

 

 私がハッと声を漏らすその前にっ。

 スピカさんがスッと動かれましたのっ。


 チンピラさんの間をすり抜けて、カウンターにグイと身を乗り出すようにしてお問い合わせなさいます。



「あ、あのっ! ヒュージプラントの目撃区域って、場所はどこだったんですか!?」


 身長がほんの少し足りていないのか、背伸びするようにして寄りかかっていらっしゃいますの。


 必死さがこちらにまで伝わってきますわね。

 


 顔色一つ変えずに、淡々と受付様がお答えなさいます。



「討伐個体は王都とこの街を繋ぐ街道沿い、だったかと思います。大森林側であればそう珍しくもない報告なのですが、今回は反対方向でしたからね。よく覚えていますよ」


「ふぅむ。となりますとやっぱり……」


 この手配書の個体って、先日に美味しくごちそうさまさせていただいたあの個体で間違いないですわよね?


 スピカさんも珍しいねと仰っていたかと思います。

 同じ場所に二体も現れてはたまったものではありません。


 恐る恐る挙手をさせていただきます。



「えっと多分、それを討伐したの、私たちですの」


「「ハァッ!?」」


「お疑いになる前にこちらをご覧くださいまし。ちょうど換金に回そうかと思っていた魔物素材ですの」


 私もまたチンピラさん方の間を割って入って、そのままカウンター上に手元の袋をドサっと置いてさしあげます。


 中にはたくさんの植物型魔物の剥ぎ取り素材が入っております。


 中身を取り出して、一つずつ並べてさしあげます。


 綺麗に巻き取った鞭ツルに、カラカラに干した茎根部分に、興味本位に採集してみた根っこの一端まで……!


 既に食べてしまった分もありますので個体の全てとはまいりませんが、各部位が揃っていれば討伐した証拠にもなるかと思いますの。


 いかがでしょうか。



 受付様が何やらカウンターの下をごそごそとまさぐり始めなさいました。


 取り出されたのは片側だけの丸メガネのようです。

 手渡した素材をマジマジと観察なさっていらっしゃいます。


 やがて、一度の大きな頷きと共に、確かなお言葉をお発しなさいました。



「間違いなく、これらはヒュージプラントのモノですね。ツルの直径から推測するに三齢もしくは四齢くらいの個体でしょうか。依頼書の内容とも一致しております」


「ええ。食糧調達の最中、この街に来るついでに狩りましたの。街道を利用する方々に害を成す可能性も考えられましたゆえ。討伐対象とはつゆも知らず」


「なるほど……」


 物的証拠は揃っているのです。


 チンピラさん方の言葉だけの訴えよりは何倍も現実味を帯びているはずではございませんでして?


 スピカさんも横でウンウンと頷いてくださいます。


 私、雑談の中では冗談を混ぜたりはいたしますけれども、こういった大事な局面で嘘を吐いたりはしないつもりですの。


 私のこの汚れも穢れもない瞳を見てくださいまし。

 真実を映す鏡と化しておりますでしょう?



 たしかに、と。


 もう一度受付様が頷いてくださいました。


 私たちが討伐したものとご判断いただけたのでございましょう。



 しかしながら、ですの。


 ここでお一つ、私の中には新たな疑問(・・・・・)が湧き上がってきているのでございます。


 このチンピラさん方、もしかして嘘をついてはおりませんでして?


 仰っていらしたことに、ちょっとした無理があるというか、矛盾点があるような気がするんですけれども。


 私の中では既に確信に近くなっておりますゆえ、あえてはぐらかすようにして続けさせていただきます。


 ここからはリリアーナ・プラチナブロンドの独壇場ですのっ!



「私ぃ、ちょーっとだけ疑問に思っていることがあるんですけれどもぉ。お二方にお尋ねしてみてもよろしくてっ?」


「な、何だヨ」


 あえて媚びるような声色でお伝えいたします。


 あっらぁ? どうしてそんな引き気味のお顔になっていらっしゃるんですの?


 何か後ろめたいコトでもございまして?


 とにもかくにも続けさせていただきます。


 物的証拠と時系列的な証拠の二点で多角的に攻めさせていただきましょうか。



「こっほん。私たちはこの街までほぼノンストップで歩んできましたの。そしてまた、最短距離を進んできたとはっきり宣言できますの」


 街に着けばお風呂にも入れますし、お肉も食べられますし、安全かつ温かな布団で寝られるはずと必死に足を進めていたんですもの。


 それに、二人きりで進む何もない街道に飽き始めてきていたのも事実なのです。


 基本引きこもりの私ではございますが、他に人の気配を感じられない空間にずっといるというのもそれはそれで寂しいのでございますっ。



 ……そう。


 街道にあまり人が見当たらなかったというのが一番の大きなポイントですの。



「おかしいんですのよね。私、街道でチンピラさん(アナタ方)とすれ違った記憶が一切ございませんの。

実際に討伐に向かって、その場に魔物がいないことを確認して、もう一度帰ってきているのであれば、必ずどこかで顔をお見かけしているはずですのに」


「「グッ……」」


「本当に討伐にお向かいなさいましたの? それとも確認に向かったのはずっと以前のお話で、今更になって話をお掘り返しなさいましたの? おっかしいですわよねぇ。そのときはまだヒュージプラントは生きている(・・・・・)はずですのに。ふーぅむーぅ?」


「「ンックゥ……ッ!」」



 まさにぐぅの音も出ないってお顔ですわね。


 いえ、今まさにギリギリと歯ぎしりなさっていらっしゃいますゆえ、音は出ているんですけれども。


 渾身のドヤ顔を見せつけてさしあげます。


 この豊満な胸を強調するかのように、腕を組んでポーズを決めてさしあげますの!



 ひくついたお顔が、ほんのり青ざめていらっしゃるのを、私は見逃しません。


 さぁさぁご観念なさいましッ!

 アナタ方。十中八九、クロですわよね!?


 本当は討伐にも向かっていない口だけ男(・・・・)さんなんですのよね!?


 あわよくば補填金だけを毟り取ろうとしたセコいだけの横着屋さんだったってコトですわよねッ!?



 ビシィッと指差してさしあげます。


 一瞬、彼らがみじろぎなさいましたの。


 ……そしてまた、次の瞬間には。



「「お、お前ら覚えてろヨォーッ!?」」


「ふっふんっ。んっべーですのー! 残念ながら私は一晩寝たら忘れてしまうタチですのー!おとといお越しなさいまし〜っ!」


 背を向けて一目散に駆け出して、ギルドの入り口から出ていってしまったのでございます。


 この場から必死に逃げようとするお姿、何と滑稽の極みでしょうか。


 ふふふと自然に微笑みが溢れてきてしまいます。


 よろしくて? 正義は必ず勝ちますの。


 悪法も法、ズル賢さも賢さの一つなんですのっ。


 細かいことを気にしていても仕方ありませんわよね。

 早いところ私たちは私たちのすべきことを済ませてしまいましょう。


 ……世の中、善より金ですの。ふふふふふ。

 

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