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私たち、ちゃんとお風呂に入れまして?

 


 広げた地図ですが、おそらくこのおっきな茶色が大陸で、青いところが海かもしくは広めの湖で……?



「えっと……私たちの国が右側? いや左側? に位置しておりますゆえに、目的地の魔王城はずっと下の……」


「リリアちゃんそれ上下逆。あと地図には上も下もないよ。西か東か南か北か」


「おうふ。おほ、ほほほほほ」


 教養がないのがバレてしまいますわね。


 だって仕方がないでしょう。

 私の勤めていた修道院の書庫、やたらと内容が偏っていたのでございます。

 もちろん主にオトナな方面に、ですの。


 背表紙と内容が異なるなんてこともザラにございました。

 きっと物好きな誰かが中身をすり替えていたに違いありません。


 そのせいで私の(へき)もこんなに(イビツ)にぃ……くぅぅ……っ。


 毎夜毎晩ページをめくる手が止まりませんでしたの。


 いつまで起きているんだと修道院長に頭を叩かれることもしばしばでしたの。


 でも、これからは毎日夜更かしできますわね。

 肝心な書物が手元にございませんけれども。



「ぅおっほん。私こう見えてスプーンよりも重たいモノは持てないか弱い乙女ですゆえに。こちらは貴女に託してさしあげましてよ」


「さっき銅貨銀貨の皮袋握り締めてたじゃん」


「お、お金は別モノですのっ」


 とにかく問答無用に手渡してさしあげます。


 苦笑いを浮かべつつも受け取ってくださいました。


 パッパと手際よく上下をひっくり返して、そのまましゃがみ込んで地面にお広げなさいます。


 私も彼女に倣って地図を覗き込ませていただきます。



「いい? リリアちゃん。今私たちがいるのはだいたいこの辺」


 そう言って地図の左下側を指差しなさいました。

 えっと……南西? で合ってまして?


 スピカさんが指をぐいーっと移動なさいます。

 対角線を描くように右上のキワのほうへ、ですの。



「それでもって、これから向かわなきゃいけないのがココ。ほら、どう見ても遠いよね?」


 ええ。仰る通りですわね。

 目指す魔王城の土地は北東の……本当に端っこギリギリにございます。


 もはや地図に辛うじて載っているレベルの扱いですの。

 こちら、一見では世界地図かと思ったのですけれども。


 地名やら縮尺やらから察するに、あくまで王都を基準にした〝大陸周辺の地図〟らしいのです。


 遠く離れた地にポツンな感じで、特に殺風景な描かれ方をされておりましたの。


 他の土地は赤やら青やら緑やらでカラフルに彩られておりますのに、その部分だけは茶色と灰色の寂しげな感じにまとめられておりまして……!


 明らかに人の住むべき場所ではないような印象です。


 私たち、ホントにこんな辺鄙なところに行かなきゃなりませんの?


 幸い地続きになっているみたいですから、最短となりそうなルートを辿ればよろしいんでしょうけれども……っ。


 それでもだだっ広い森林に真っ赤な火山に大きな山に、道中が見るからに大変そうに思えてなりません。


 私たち、ちゃんとお風呂に入れまして?


 せめて三日に一回は沐浴できないとストレスで寝込んでしまいましてよ?


 いくら身清めの魔法を習得しているとはいえ、汚れはキチンと直に洗い流したいんですの。最低限の乙女の嗜みというモノでございます。



 何やらスピカさんが、南西と北東とを結ぶ線上のとある一点を指差しなさいました。


 ゴツゴツしてそうな風景がずらーっと横長に伸びております。こちらは山でしょうか。



「ほら見てこのおっきな山脈。ここをまっすぐ超えられたら早いんだけど、竜が飛んでたり道がちゃんと整備されてなかったりとかで、現実問題無理そうなんだよね。

迂回路を通ったほうがずっと確実なはず」


「迂回路?」


「海の上を使うってこと。それなら障害物もないし。ただ歩くよりもずっと早いし」


「なるほどそれは確かに名案ですの」


 地図上で見た感じでは山脈の手前で曲がって進めば海に到着できそうですわね。


 山々を避けるようにぐるっと回り込めば大幅にショートカットが見込めそうですの。


 となりますと。


 私たちが進むべきルートとしては、近隣諸国をなるべくまっすぐめに進みつつ、大森林を抜けた後に山脈の手前辺りで海のほうへ曲がる、と。


 おっけですの。

 何となくはイメージすることが出来ましたの。


 到着までに費やす時間についてはこれから体感で覚えてまいりましょう。


 あまりに時間が掛かそうなものなら、それこそ馬車などの移動手段を確保して短縮を計りましょうよ。


 これからは効率化の時代なのです!


 魔法だってもっと普及していけばよろしいのです。


 各々の才覚に紐付かない、誰でも気軽に扱えるようなモノになれば、ずっと便利な世の中になるのではありませんこと?



「それで直近に寄れそうなのはこのアルバンヌの村になるのかな。麦の産地として有名なんだって。出来立ての美味しいパンが食べられるかも」


「ほーう! それは実にナイスなご情報ですのっ。私、美味しいモノには目がありませんの。清貧なんて知ったこっちゃないですのっ! お得に沢山買い占めちゃいますのっ!」


「あっはは、女神様が聞いて呆れちゃう発言だね……」


 いえいえその辺は別に大丈夫かと思われます。


 お国の食文化を知る活動の一環だとご説明してさしあげれば、きっと女神様も納得してくださるはずです。


 むしろ上の口の話題よりも下の口関係のほうがずっと厳粛で監視が厳しくて……こっほん。


 今この場で裁きの雷を落とされたくはありません。

 沈黙は金ってヤツですわね。

 手元には銀貨と銅貨しかありませんけれども。



「それでは! ぼちぼち出発いたしましょうか!」


「そうだね。旅に足りないものとか出てきたら(そこ)で買わせてもらおっか。途中で行商人さんに会えるともっとスムーズなんだけど……」


 その辺は運に任せるしかありませんわね。


 ですがご安心くださいまし。持ちうる強運だけでこの地位にまで昇り詰めた私がパーティメンバーにいるのですから。


 きっとイイことが待っておりますのっ。


 地図を丁寧にたたみ始めたスピカさんを眺めながら、ぐっと拳を握り締めます。



 リリアとスピカさんの女二人旅、これより本格的にスタートいたしましてよっ!


 

おそらく75万字を

超える物語になるかと思います!

のんびりごゆるりと

お付き合いいただけますと幸いです!

(*´v`*)ブクマ挟んでいってね!

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