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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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よーよーよーよー楽しそうですこと

 

 とりあえず目の前のチンピラさん方に対してファイティングポーズを見せつけておきます。


 見た目麗しき修道女姿では何の威嚇にもなり得ませんでしょうが、メンタル的には何もしないよりはマシですの。


 私のただならぬそぶりに気が付いたのか、スピカさんがワタワタとし始めなさいました。



「え、あ、もしかして今のマズかった?」


「いえ、さすがは生粋の勇者様ですわねぇと思っただけですの。貴女は貴女のお好きにお振る舞いなさいまし」


 垂れ落ちる冷や汗を袖口で隠しつつ、ふふっと大人の余裕を見せてさしあげます。


 今回だけは単なるお下品ネタにも走らず、そそくさとこの場から退散しようと考えておりましたのにっ。


 いつもの流れであれば私がツッコミ役に回るのなんて激レア中の激レア事態なんでしてよ!?


 巻き込まれてもしまっては仕方ありません。

 誠意ある姿を取り繕っておくしかないのです。



 ……そういえば忘れておりましたの。


 スピカさんといえば、雨にも負けず風にも負けず、喧嘩や訴訟が有れば真っ先につまらないからやめろと身を乗り出す系の熱血女さんでしたものね。


 それに見た目お子さまな乙女お一人に場を任せて、必要以上にナメられてしまってもお可哀想ですし。


 ここはお一つ、スペシャルナイスバディな私が横に並び立ってさしあげて、国宝級の美貌で相手を威圧してさしあげる他に選択肢はないってことですわよね。


 実際のところ、私だって最後まで他人のフリを貫き通せるとは思っておりませんでしたし。


 誰にも見えないほどの小さなため息を吐いたのち、顔を上げて構えていたファイティングポーズをやめて、代わりに自慢の薄金髪をひらりと靡かせつつ更に一歩前に出てさしあげました。


 改めて堂々とこの場に介入(・・)いたします。



「こっほん。さて、麗しき受付様。そして屈強なお身体をお持ちのお二方。誠に恐れ入りますが、私たちも事の経緯をお聞きしてもよろしくて?」


「アァン!? ン誰だァテメェらは」


「今代の聖女と勇者ですの。以後お見知り置きを」


「「せ、聖女と勇者だぁ!?」」


 あら、なかなかイイ反応をなさいますのね。

 とっても名乗り甲斐のある方々ですこと。


 流れに乗じて最強の営業スマイルを見せてさしあげます。こちら屈託のクの字も感じさせない純度100%の微笑みですの。


 殿方の警戒心を即座にほにゃほにゃに溶かしてさしあげる魔性のテクニックでしてよっ。


 ふっふっふっ。一瞬だけ鼻の下をお伸ばしになられたこと、もちろん見逃してはおりません。


 畳みかけるのならば今がチャンスでしょうね。


 意気揚々と続けさせていただきます。



「私たち、このトレディアの街には本日到着したばかりでして。まずはこうして冒険者ギルドに足を運ばせていただいて、身なりを整えさせていただこうかと思っていた次第でございます。何か、問題でも?」


 にこっと目を細めて微笑んだまま、お二方をこっそりと威圧いたします。


 まだ情報が足りていないようならもっともっとお喋りしてさしあげてもよろしくってよ?


 あと一時間や二時間は私とスピカさんのそれぞれの美貌について語れますけれども。


 些細な事件でも首を突っ込むのが勇者と聖女のお役目ですの。きっと、おそらく、多分ですの。



「ぅおっほん。な・に・か、問題でも?」


「お前らが……!? あ、いや……別に問題はネェが」


「ならよろしいですわよね。お話、私たちにもお聞かせ願えまして?」


 微かに眉をしかめられたように見えました。

 といいますか絶対にそうですの。


 私の脳内善悪センサーがマイナス位置に振れましたもの。


 あらあらぁ〜? おやおやぁ〜?

 もしかしてビビっていらっしゃいましてぇ〜?


 突然の聖女と勇者の出現に相応にビビっていらっしゃいましてぇえ?


 ふっふふー。一度はこういう知名度的な優越感を感じてみたかったのでございます〜っ。


 さすがは王都から近くも遠くもなく、されども毎日のように沢山の情報とモノが行き交っているトレディアの街ですわね。


 勇者と聖女が旅を始めたこと、近隣の街々や諸国に知れ渡り始めていてもおかしくはないと思います。


 ましてアルバンヌの村に数日間滞在しておりましたものね。その間に長距離伝達魔法なり速馬車(はやばしゃ)なりで伝達されていたのでございましょう。


 もう少し動きやすくなるとありがたいんですけれども。そうは問屋が卸さないのも現実なのでございます。



「で、いったい何がどうされましたの? 何かそちらのお二方に不都合なことでも起こり得まして?」


「アァン!? どーしたもこうしたもネェよボケェ」


 むむ。失礼しちゃいますわね。

 私はまだボケてませんわよ。


 今はいたって真面目のジメちゃんですのっ。



 私の問いかけに、眉間にシワを寄せた右側のチンピラさんたちが怒号混じりにお続けなさいます。


 とりあえず黙って聞いてさしあげましょうか。


 たくさんお喋りになったほうが彼らもストレスを発散できるでしょうし。


 きっと溜まっていらっしゃるんでしょうね。

 それはもう、いろいろと、ですの。



「あンなぁ。貼り出されてた魔物の討伐依頼をヨォ。俺らがやってやろォと現地に向かってみてもヨォ! そんな魔物なんてどこにもいねーじゃネェかって話ヨォ! 俺らの時間と労力はどーなるんだアァン!? ンだからソッチの誠意を見せてくれって言ってんだヨォ!!!」


「よーよーよーよー楽しそうですこと」


「「アアアァン!?」」


「おっと今の呟きはナシですの。つい本音が漏れてしまっただけですの。単なる独り言に深い意味はございませんので悪しからず」


 正直、言葉の崩れが酷すぎて半分も聞き取れませんでしたの。


 今一度落ち着いて頭の中を整理させてくださいまし。


 つまりはこんな感じでしょうか。

 

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