表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/346

忘れてはいけない大前提がございます

 

 スピカさんが既に冒険者証明書とやらをお持ちとのことであれば話は早いですの。


 これから多々お世話になりそうな依頼書掲示板ではありますが、今から書かれた内容を吟味して一つずつクリアしていったのでは日が暮れてしまいます。


 それでは今晩の寝床の確保が間に合いませんの。

 すぐにでもお金を捻出する必要があるくらいなのです。


 達成の報奨金以外にお金儲けの手段がもう一つ、この冒険者ギルドには存在しております。


 何よりも手っ取り早いお金稼ぎの方法が〝素材の換金〟ってわけなんですのよね。


 こちらは受付にてすぐに行えるかと思われますの。



 というわけで、早速ながらスラッと細身体型が大変麗しい受付さんの元へと向かわせていただきます。


 すかさず彼女の目の前でドサーッと換金用の植物素材たちをカウンターに並べてさしあげようとした――のですけれども。


 おっと。さすがに勇み足だったでしょうか。


 私たちの前に、既にお客様がいらっしゃったようなのでございます。屈強な殿方さんが、お二人並んで立っていらっしゃいます。



 けれどもこう……なんでしょう?


 何故だかほんの少しだけ、ここいら(カウンター)一帯の空気が張り詰めてはおりませんでして?


 私の穏便センサーがビビビと警笛を鳴らしているのです。


 もしかしなくとも揉め事? なのでしょうか。


 とりあえず聞き耳を立ててみるべく、そろーりそろーりと目立たないように身を縮こませて、カウンターのほうに近付いてみましたの。


 何やら威圧的なお声が聞こえてまいります。



「オウオウ受付の姉ちゃんやぁ。依頼書の通りの場所に出向いてみても、魔物なんかこれっぽっちも見当たらねぇじゃあネェか。とんだ無駄足だったぜ。アンタらどう落とし前付けてくれるんだコラァ、アァン!?」


「そ、そう仰られましても……」



 うっはー。これはびっくりですの。


 受付さんに絡んでいらっしゃるこちらの殿方、なんとまぁ絵に描いたようなチンピラ感ですこと。


 二人とも似たような背格好をしていらっしゃいます。

 何よりも目立つのが頭の部分ですの。


 頭髪をとにかく鶏のトサカのように尖らせて、自分を必要以上に大きく見せようとなさっている辺り、カッコよさよりも滑稽さが際立ってしまっております。


 この際ですから、彼らの頭の先からつま先までを舐めるように一瞥させていただきましょうか。


 ふぅむ。装備から察するにドストレートな戦士タイプかと思われますわね。お背中に大きな戦斧を担いでいらっしゃるようですし。


 おまけに筋肉質な上裸姿をお晒しなさっておりますの。

 これはもう間違いないと思われます。


 生粋の戦士さんコンビですの。


 おそらくは戦場においても、基本的に前線に張り付くようにしてフィジカル任せにお立ち回りなさっているのでございましょう。



 ……ははーん……ふぅむぅ……へぇえ。


 あ、いや、傷だらけのお身体がとてもワイルドですの〜と思ってしまった次第でございまして。


 私、ガタイがよろしいのはかなり大好物なんですの。


 その腕の筋肉を枕にして夢見を楽しみたいとまで日々願っているくらいなのです。


 それに戦士タイプ特有の、なかなかにガチガチでムッキムキな感じがダイレクトに性癖にブッ刺さってしまいますっ。


 ブ厚い胸板や腕に浮き出た血管を目に映してしまっては、ついつい私の乙女センサーがきゅんきゅん反応してしまうのです。


 ああ、是非とも撫で回してみたいですわね。

 そして叶うなら舐め回してもみたいんですの。



 ――た、だ、し。


 忘れてはいけない大前提(・・・)がございます。



 紳士的でない方は誰であってもお断りですの。


 歯牙にも網にも掛かりませんの。


 どんなに己に自信があったとしても、乙女に対する接し方は考えたほうがよろしくてよ?


 女子相手に高圧的なのはいただけませんの。

 これで性格が紳士的なら全てが完璧でしたのに。


 それこそ即刻逆ナンを仕掛けていたところでしたのにぃ。



「……ガサツな方は好きではありませんの」


 私、基本的にはどんな殿方でもウェルカムなスタイルで過ごさせていただいておりますけれども。


 普段の生活から乱暴で傲慢なだけの殿方は、さすがに守備範囲外とさせていただいているのです。


 それによく見たら清潔感に欠けるような気もいたしますのっ。


 あ、いや、それがプレイ(・・・)の最中であったり、常にオスみのあるフェロモンを漂わせているのであったり、優しげな微笑みの向こう側に隠しきれないドSっぽさを垣間見せているのであれば、そのギャップに大いに興奮してしまえるんですけれども……っ。


 ただばっちぃだけなのはイヤですの。

 聖女のセイの力で清めてしまいたくなりますの。


 と、とにかくっ。


 ふっふんっ。残念でしたわね。


 こんな美女と一夜を共にできる千載一遇のチャンスを、アナタ方は今この一瞬でお逃しになられたのでございますから。


 あと、正直後ろが詰まってますの。


 無意味に受付さんにダル絡みなんてしていないで、さっさとお話を終えてお家に帰ってご反省なさいまし。


 今ならノータッチで許してさしあげますゆえにっ。



 ……とまぁ余談はこのくらいにしておいて、実際のお話、この膠着した状況をいかがいたしましょう。


 下手に首を突っ込んで厄介事に巻き込まれても面倒ですし、また時間を改めて尋ね直させていただいたほうが賢明だとは思えております。


 ええ、ええ、普通に考えたらそうですわよね。


 こういう粗雑で乱暴そうな方々とはなるべく関わらないで生きていくほうが、結局は人生バラ色豊かで気苦労のない未来に通じていると信じておりま――




「えっとあの、何かトラブルですか?」


「す、すぴ、スピカさん!?」



――と思いきや、ふと気が付けばスピカさんが、その細身をチンピラさんと受付さんの隙間にグイと潜り込ませるようにして、会話に強制介入し始めてなさいましたの。


 え、アナタそれ本当に無意識にやってますの?

 もしかして天性の巻き込まれの才能でも持ってますの?


 いや、もしかしたら彼女に流れる〝勇者の血〟が、不穏や紛糾を是としないのかもしれませんけれども。



 ……はーぁっ。分っかりましたわよぉ。


 こうやって相手方に認知されてしまっては今から一歩引いたところであまり意味は成しません。


 むしろ存分に巻き込まれてさしあげたほうが、後で逆にこっちのターンに持ち込めるまでありましょう。


 で、ですからチンピラさん方、カモンですのっ。

 斧でも槍でも何でもドドンと来なさいましっ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ