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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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さ、目的地も決まったことだし

 

 イマイチ気分の上がらないスピカさんと、相変わらずムスッとしたままのミントさんと、今後の旅の買い出し等を始めまして。


 早くも、数日が経とうとしております。

 必要なモノもだいたいは揃いましたかしら。


 何でも入る鞄の中もだいぶ充実してきましたもの。整理しないと探すのが大変ですわね。


 もちろんのこと街中での散策は警戒こそしておりましたけれども、さすがに人前では手を出しにくいのか、敵対派閥からのアプローチは特にありませんでしたの。


 何事もないのが一番ですの。


 今は三人で拠点である古ぼけた教会への帰路についている最中なのでございます。



「結局、代わりの短剣は買わず終いなのね。アンタ、どこの武具屋に寄ってもへの字口だったじゃないの」


「……一応、予備は持ってるからね。はぁ」


 あっちゃー。これは重症みたいですの。

 明らかに先日のご愛用の剣のことをひきずっていらっしゃるようです。


 未練タラタラの元彼ぴっぴみたいになっておりますわね。


 殿方とまともにお付き合いしたことありませんのでよく分かりませんけれどもっ。


 ともかく、ヒビの入ったあの剣の状態ではこれからの戦闘をこなすことなど到底無理でしょうし、かといってずっとそのままにしておくわけにもまいりませんし……。


 〝変える〟や〝捨てる〟という選択肢がないのであれば、どうにかして〝活かす〟ほうを考えなければならないとは思うのです。



「あのー、ぶっちゃけたお話。折れかけた勇者の剣って直せたりしますの? 素人目から見てもポッキリいっちゃう寸前ってな感じだと思いましたけれども」


「……そこ、なんだよねぇ……」


「少なくともこの街の鍛冶屋じゃムリでしょうね。あくまでここは神聖都市だし。職人街があるっつったって、専門家の数は限られてるわ」


 ですわよねぇ。ここは女神教で栄えた街ですゆえに、血生臭い方向性にはわりと疎い街だと思いますの。


 もちろん立ち寄る旅人用のお店はありますが、どちらかといえば修道女や神官に向けた商品のほうが圧倒的に充実しておりますし。


 そもそも修理してもらうのであれば、もうしばらく滞在しなければなりませんし……。



 ……ふぅむ?


 あれ、ちょっと待ってくださいまし。



「ミントさん、今、少なくともこの街ではっておっしゃいまして?」


 もしかしなくとも直せる術があるんですの!?



「ええ言ったわよ。餅は餅屋って言うじゃない。剣やら盾やら、ヒト族にはムリでもドワーフ族の連中ならどうでしょうね。アイツら、鍛冶が生業(なりわい)なんでしょ?」


「ドワーフ――はぶぇっ!?」


 ちょ、ちょっとスピカさん、急に立ち止まらないでくださいまし。咄嗟に回避できるほど私の運動能力は高くないのでございますっ。


 それにしても、つい先ほどまで俯きがちだったのに、今になって目をかっ開きなさいましてぇ……。


 ミントさんの正面にスタタと移動なさって、そして彼女の手をシュバッとお取りなさいます。



「直せるのっ!? 私の剣っ!!!」


「あくまで可能性の話、よ。アタシだって専門家じゃないんだし。まぁでも、見せてみる価値くらいはあるんじゃないかしら」


 いつも通りつっけんどんにお返しなさいましたが、凹んでいるスピカさんを励ますおつもりはあったのでしょう。


 安心させるようにフッと微笑みなさいます。


 さすがは私たちの姐さん役だと思いましたの。



「一応、ドワーフの里は山ルートの通り道にあるわよ。どうする?」


「行く! 行くに決まってるよミントさんッ!」


「なら決まりね」


 どうやら次の目的地が決まったようですの。


 なるほどドワーフ族の里ですか……!


 私の知識では、皆一様に背丈が低くて、けれども筋骨隆々で、お酒をこよなく愛する種族だと聞いております。


 もしかしたら私の運命の伴侶もそこにいるのかもしれませんわよね!


 男性が活躍する里だとも伺っておりますし!



「……ま、山ルートを選ぶなら、ドワーフの里に着くまでにもう一つ難所を越えなきゃいけないんだけど」


「ふぅむ? 今何かおっしゃいまして?」


「言ったわ。けど、聞き直すほどのことでもないわよ。どうせ変わるもんでもないでしょうし」


「ふぅむむむぅ?」


 一瞬、ミントさんのやれやれ顔が見えたような気がいたしましたが、そのお隣で喜ぶスピカさんのテンションに水を差すわけにもいきませんでしたゆえ、私も特に何も言わないことにいたしましたの。


 さすがにお次は大森林のような長期間の野宿にはなりませんわよね?


 ちゃんとした山登りは初めての体験ですけれども……!


 でも、なんだか幼少の頃を思い出してしまいますの。


 私、こう見えて山育ちなのでございます。



「さ、目的地も決まったことだし、さっさと教会に戻って支度するわよ」


「はいですのっ! あ、でも、明日は件の〝真夜の日〟だったかと」


「なら出発は明後日ね」


 先祖返りの前日の兆候なのか、昼過ぎくらいから頭と背中がムズムズしてまいりました。


 お次の朝に目覚めたら、いつのまにか角と翼が生えてるんですのよねぇ。


 我ながら不思議な体質ですの。


 さすがに明日は敷地の外には出られませんでしょうから、おとなしく教会内でお留守番をする予定なのでございます。


 ……先代様にも初お披露目になりますわね。

 

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