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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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そんなのどっちも選びたくないですのッ!

 

「……この街に訪れつつある冬が明ければ、きっと彼は予定されていたとおりに討魔の旅へと出発することでしょう」


「ふぅむ……ッ!?」


「……無論、都市の聖女に任命された私もその旅に同行することになっております。彼を独りにはできませんからね」


 イザベラさんは苦笑気味に微笑みなさいました。


 その姿がまるで不出来な弟にやれやれする姉のように見えてしまいましたが、実際そうなのかもしれません。


 でも、同行することに〜などとヤレヤレ顔でおっしゃるわりに、あんまり嫌そうにも見えませんわね。


 ……ふふ。私の色恋センサーがビビビと反応しておりましてよ。


 きっと彼女には、長年一緒にいるからこそ生まれる、一種の慕情のような心があるのでございましょう。


 私も他人の恋事情に横入りするような、無粋な女ではありませんからねっ。


 そもそも、今はもう彼に対して何とも思っておりませんしっ。


 だからこそ、同じ世に生きる乙女として素直にイザベラさんを応援してさしあげるのが、慈悲深き今代の聖女の務めってモノでしてよ。


 そうに決まっておりますのッ!



「アンタらに先を越されて、魔王領をメチャクチャにされちゃたまったモンじゃないわ」


 本気の舌打ちが聞こえてきましたの。

 お顔は見えませんが、ミントさんのイラつきが態度で分かりますの。



「冬が明けたら、イザベラさんたちは海ルートで北を目指すんだよね?」


 何だかそのようなお話をしていたような、していなかったような。


 私たちもこの先をどう進むか悩んでおりましたわよね。どのような選択肢がありましたかしら。



「……ええ。ゆえにどうかあなた方は、それよりも更に先に、平和への旅路を歩み進めてください。そして私たちの到着よりも早く、新たな休戦協定を結び終えてください」


「イザベラさんたちよりも、早く……」


 はぇー。


 あ、いえ、別に他人事で聞いているわけではございませんの。


 今まではわりとのんびりとココまで来たわけですけれども、これからは先を急ぐ旅になってしまうってことですわよね。


 あんまり実感が湧かないといいますか。


 そもそも地図の読めない私ですから、魔王城までのルート構築はおろか、どう急げばいいのかさえ皆目検討もつかないといいますか……。



「公的な協定が正式に締結されてしまえば、さすがの神聖都市も簡単には反故にはできませんでしょうから。女神教の革新派閥も、王都との戦争は起こしたくないはずです」


「魔族との戦争を選ぶか、ヒト族同士の戦争を選ぶか、ね。ホント馬鹿らしい」


「そんなのどっちも選びたくないですのッ!」


 私たちは世界の平和を維持するために頑張ってココまで来たのです!


 選び取るのはあくまで最善の未来一択ですのッ!


 道のりは分かりませんが、早いモノ勝ちで済むのなら、急がない理由はありませんわよね。



「幸い本格的な冬まではまだ時間があるわ。帰って対策を練りましょ。ぶっちゃけアタシだけなら転移でパパッとだけど、さすがにお荷物抱えてちゃムリだもの」


「お荷物、ですの?」


「主にアンタのことよ」


「ふぅむぅッ!?」


 だ、だってそれはっ。


 ミントさんやスピカさんに比べたら私の身体能力は平々凡々のポンですし。


 夜通し歩くなんてムリも大ムリですし。


 そもそもか弱い女の子ですしっ。


 月に一度はほとんど動けなくなってしまう〝先祖返り〟の体質も有しておりますし……。



「ともかく、よ。このクッソくだらない勝負とやらもコレで終わり。ザコ聖女が勝ってチビ勇者が負けたってことで一勝一敗の引き分け。

その後の面倒事はイヤだから、アタシらはコレで失礼させてもらうわよ」


「んなっ!? ちょっとミントさんッ!? まだ詳しいお話が――」


 まだ観衆の皆様が見ておりますし、こういうのって、審判員的な方が最後にコールをなさるまでが勝負なのではありませんこと!?


 でも、ミントさんは私とスピカさんの腕を引っ掴んで、それで少しだけ前屈みになられて――



「今話したところで進まないわ。じゃ、アタシらはこの辺でおさらばするわね。悪いけど目立ちたくないの」


 その構えは間違いなく〝転移の異能〟を発動なさろうとしてますわよねぇッ!?


 あぅっ。さすがにいきなりすぎてっ。

 わらくひっ、舌を噛んでしまいまふぇっ。



――――――

――――


――


 

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