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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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ぎ、ぎっくぅぅぅっ!?

  

 ふぅむ。ここはお一つ。


 ちょっとした賭けにはなってしまいますが、適当にそれっぽい理由をでっち上げて切り抜けてしまいたいと思いますの。


 今このときさえ乗り切ってしまえば、後はどうとでもなるのです。


 それこそ次の真夜の日が近付くまでは忘れてしまっているくらいがちょうどいいんですの。


 ずっと抱え込んでいるのが毒なのです。

 鋼のメンタル維持の一番の秘訣でしてよ。


 幸いにもスピカさんは寝起きの寝ぼけ眼さんですし、ちょいと小難しい言葉を並べてさしあげればすぐにでも頭をパンクしなさって、おのずと二度寝体勢にお戻りになられるはず……!


 そこから寝て起きたら細かいことなんて覚えていられないはずですの。


 わっ、私がそうなんですもの。


 というわけですから、えっと、えぇっとっ!



「か、回復を主としている聖女()でさえ風邪を引いてしまったくらいですの。昨日のそれはもうトンデモなく深刻で重篤なモノだったんですのっ。

本来ならば一日、二日で治せるようなモノでは到底ありませんでしてよ!? 今回はメッタメタに運が良かったから何とかなったものを……!」


 特に昨日の私は引きこもり筆頭でしたからね。


 スピカさんはほぼ一日私の姿を見ていらっしゃらなかったも同然なのですから、たとえ疑いの目で見られたとしても症状の重さについては想像の域を出られないはずです。


 ……ううっ。


 そんなじとーっとした目で見ないでくださいまし。


 全部見透かしてきそうな意志の強い目なのです。


 正直、後ろめたさで直視ができません。

 吹けない口笛を無理やり吹いて誤魔化しておきます。



「でもさぁリリアちゃん」


「ふ、ふぅむ?」


「もう完治してるんだよね? 深刻で重篤なレベルの風邪が、しかもたったの一日で」


「こっ、これこそが聖女の聖女たる所以ですの! きっと女神様の加護のおかげにちがいありませんの!」


 ……私、そうではないから悩んでいるんですけれども。


 女神様の加護もそこまで万能ではないみたいですし。


 寝起き眼のままかと思いましたが、意外なほどに冴えていらっしゃるようです。


 やはり勇者様は侮れませんわね。



 気が付けば、じとーっという視線がより一層重みを増しているような気がいたします。


 私は今、いわゆるカエルさん状態になっております。


 ヘビより恐ろしいスピカさんが可愛らしいお顔で睨んできていらっしゃるのです。


 正直に申しまして好きに身動きを取れるほどの余裕がございません。


 冷や汗がたらたらりと垂れてしまいます。



「あのさリリアちゃん。こう言っちゃなんだけど、私に何か隠し事してない? してるよね? むしろしてないわけないもんね?」


「ぎ、ぎっくぅぅぅっ!?」


「……そりゃ人それぞれ秘密の一つや二つ、あるとは思うよ? 私だって全くないわけじゃないしさぁ。

でも、そーんなあからさまに誤魔化されちゃったら、私だってちょっと寂しいかなって」


「うっ……ぅぅ。仰るコトもごもっともだと思いますの。返す言葉もございませんの」


 一緒に旅を続けていくお仲間に堂々と隠し事をされてしまっては、それはもう全然面白くも快くもありませんでしょうね。


 もし私が逆の立場でも、まっすぐに同じことをお伝えしていたかと思いますの。


 勇者と聖女は常に一連托生ですもの。



 ……そう、ですわよね。


 ホントに正直なことを申し上げますと、この旅が終わるその日まで、ずーっと私の秘密を最後まで隠し通せる気はしておりません。


 きっといつかはバレてしまうはずです。


 でも、だからといって今すぐにというわけにも……。


 話してすぐにご理解いただけるものでもございませんでしょうし。


 どうせお伝えするなら実際に見てもらった(・・・・・・)ほうが早そうですし、いや、でもぉ……。



 ……ふぅむ。


 やっぱり少々お時間をいただきたいところなのです。



「おっけですの。分かりましたの。覚悟を決めましたの。……でも、打ち明けるのはもう少しだけ待っていただけませんでして? その、私にも色々と、心の準備が必要なものでして」


「うん。分かった。約束だからね」


「ええ、この胸に誓わせていただきますの。ヒトより大きいのは伊達ではありませんからっ」


「ヒトコト余計かなぁ」


 紛うことなき事実を述べさせていただいたまでです。



 ふぅむ!? だ、誰ですの!?


 胸は大きくても度胸はないなどと暴言をお吐きなさった方は。


 ……わ、分かってますの。


 その発言者は私自身に他なりません。


 弱い自分をひた隠しにしようとする、惨めでちっぽけでみみっちい私の心がそう思わせたのでございましょう。



 ……別に多くは望みません。

 もう少しだけでも強くなりたいものです。


 己を守れるだけの力は既に有しているはずですのに。


 自由に扱えないからこそ、余計にもどかしいのでございます。


 

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