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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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アンタら二人で、コイツらに太刀打ちできんの?

 

 奇妙な焦り顔を始めたシロンさんでしたが、その後ろで震えながら佇むイザベラさんを庇うかのように、グッとお立ちなさいましたの。


 余裕のなさが態度にも出ていらっしゃるのか、宝剣の切先をこちらに向けて牽制してきております。


 ……ふぅむ。まさかこの私に向けてくるとは。



「こっほん。少なくとも今回の決闘相手は私ではございませんでしょう? どうか剣を下ろしてくださいまし」


 非暴力非服従が私にとっての基本のキではありますが、こうして実際に突きつけられてしまうと背筋がピクリと強張ってしまいますわね。


 こんな凍るような恐ろしさと対等に渡り合っていたとは、私の相棒(スピカ)さんはやっぱりスゴいお人だと思えましたの。


 一方のシロンさんは一撃を受けて即座に気を失ってしまったわけですから、なんとも引き締まらない感じですわよね。


 ある意味、その必死さが滑稽にも見えてしまいますの。



「……剣を下ろして。リリアちゃんは関係ないよ」

 

 スピカさんもまた、私の説得に対して追撃をしてくださいましたの。


 いつでも打ち返せる、と言わんばかりにシロンさんを睨み付けてから、すぐにいつもの優しげな表情に戻られて、そのまま柔らかい声でイザベラさんに話しかけなさいます。



「……実際に旅に出たら、もっとずっと過酷な状況が待ち受けてるんだよ。そりゃ私たちだっていつでも最良の判断ができるわけがないけどさ。

それでも考えるよりも先に行動しなきゃいけない局面ってのは必ずやってきちゃうんだ」


「そんなときに大事になってくるのは、何より心からの善意なのだと私は思いましてよっ」


 すかさず便乗させていただきましたのっ。


 言い換えればそれも依怗(エゴ)でしかないのですが、自分のために行う自己満足と、他人のために行う自己満足とでは得られるモノがちがうと思いますの。


 私も頑張るスピカさんを応援したいから頑張るのですし、私が頑張るから、スピカさんも応えてくださるのだと思いますし。


 相棒とは常に持ちつ持たれつ、なんですのよね。

 決して義務や義理の間柄などではありません。



「リリアちゃんの口からその言葉が出てくるの、わりとビックリしちゃうと思うんだけどね」


「なーにおうッ!?」


 私、別に何も間違ったことは言っていないと思いますのにッ!


 そりゃあ私の旅の真の目的は素敵な旦那様を見つけることですし、あわよくば玉の輿に預かりたいという私利私欲は少しも忘れてはおりませんけれども……!


 それはそれ、コレはコレ、でしてよ。


 まずは聖女としての責務を果たしてから、と優先順位はキチンと付けているのでございます。


 その上で今代の聖女リリアーナ・プラチナブロンドは誰からも愛されて、誰もを愛する慈悲深き存在として認知されてみせますのッ!


 己の善意を信じて突き進みますのッ!



「ぅおっほんっ。とにもかくにも。イザベラさんが優れた修道女であるとは私も重々に認知しております。けれども、より優れている方が聖女になる必要もありませんの。

ある意味では私も、王様や世界や女神様から厄介事を押し付けられているだけかもしれませんゆえに。おっほっほ」


 己の胸をぽむんッと叩きつつ、にこやかに微笑みかけてさしあげます。



「ご安心くださいまし。この世界の平和は私が責任をもって維持してみせますの。だからアナタは、この神聖都市セイクリットをより良き方向に導いてくださいまし。命の危険などに晒されずとも、人は前にも先にも進めましてよ」


「……リリアーナ…………さん」


「むっふっふっ。初めて敬称を付けてくださいましたわねぇ。別に気にしておりませんでしたけれども」


 コレは真っ赤な嘘ですの。毎回毎回呼び捨てにされつつ睨まれていたのはわりと直球でメンタルに響いておりましたの。


 思わずふにゃっとしてしまいそうな顔面を気合いで隠しつつ、余裕のほどを見せつけてさしあげましたところ。


 ふと、背後に別の方の気配を感じたのでございますッ!!!



「ふぅむッ!?」


「――フン。やっと決着がついたようね。長かったじゃないの」


「「ミントさんっ!」」


 どうやら私のすぐ後ろにミントさんが出現しなさったようなのです。


 また転移の異能を使われたのでございましょう。


 現れるまで気配のケの字も感じられなかったのはさすがと言わせていただく他にございません。


 とはいえ観客の方々も周りにいらっしゃいますゆえ、必要以上に目立たないように、いつもより更に深くフードを被っていらっしゃるようです。


 静かにミントさんがお続けなさいます。



「時間がもったいないから端的に訊くわよ。この勝負、まだ続ける必要あるわけ?

為す術もなくすっ転がされたヘッポコ金髪と、いざというときに震えて何もできなかった修道女さんと。アンタら二人で、コイツらに太刀打ちできんの?」


 ……ふぅむ。


 かなり直球にお尋ねなさいましたわね。


 しかも、シロンさんに対しては一瞥もせずに、イザベラさんにのみ真剣に視線を向けている辺りがスマートですの。


 絶対に回答せざるをえない空気を一瞬で作り上げなさいましたの……!


 まるで女帝の圧とも言わんばかりの……ッ!!

 

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