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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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……あのさ。次のラウンドのことなんだけど


 そんなこんなでしばらく待っておりますと、第三ラウンドも終わりを迎えたようですの。


 見るからに満身創痍のスピカさんが、よろめきながらも私の前に戻ってきては、痩せ我慢的な微笑みを向けてくださるのです。


 私もまた、できる限りの平然さを装って、にこやかに治癒魔法を施してさしあげます。


 開始時に比べれば言葉数もだいぶ減っておりますし、気紛らわしのお声掛けをするのも憚れるような空気感ですけれども。


 こういうときこそ、前を向くべきですの。


 もちろんこの疲弊感は私たちだけの間ではなく、シロンさんとイザベラさん側も同じかと思われます。


 ある意味では終わりの見えない勝負に対して疲れ始めているとも言えましょう。


 そろそろ夕暮れ時にもなりますし、いつまでも緊張状態を保つことも難しいでしょうし。



 だからこそ、ミントさんからの指示なのかもしれませんわね。



「あの、スピカさん」


「…………あ、うん。どうしたの?」


 お返事までにだいぶ時間差がありましたが、ラウンド間にもそこまでの余裕があるわけでもございません。


 なる早にお伝えさせていただければと思います。



「先ほど、ミントさんから言伝(ことづ)てを承りましたの。〝次のラウンドが狙い目よ〟とのことです」


「…………おっけ。ありがと」


 やはり肩で息をしていらっしゃいましたが、伝言を聞き届けるや否や、今までにないほど覚悟を決めたようなご表情になられました。


 そのまま真剣な眼差しで、一言。



「治癒魔法のほう、よろしく頼むね」


「もちろんですの」


 今も変わらず施してさしあげておりますけれども。


 今回は趣向を変えて優しくじんわりと温めるようなタイプにしてみましたの。


 湯に浸かっているときのような淡い心地よさを感じていただけていると嬉しいですの。


 そろそろ小休憩も終わりになりますからね。

 この短い間で私も何ができるのか、色々と模索しているのでございます。



 と、そのときでございましたの。



「……あのさ。次のラウンドのことなんだけど」


「ふぅむ?」


 背中を向けていざ中央のほうに戻られるかと思ったのですが、その直前にふと立ち止まりなさったのでございます。


 つい小首を傾げてしまいましたけれども。


 スピカさんが静かにお続けなさいます。



「即効系の治癒魔法を、いつでも発動できるようにスタンバっておいてもらえると嬉しいかな。必要になったらすぐに呼ぶからさ」


「おっけですの。任せてくださいまし。終始目を凝らして見守っておりますゆえに」


「うん。ありがと」


 私の返答に満足してくださったのか、こっくりと頷いてくださいましたの。



「すぅー……ふぅ……大丈夫。私はやれる。決めてくるからね」


「え、ええ。期待しておりますの」


 何をどう決めてくるのかは教えてくださいませんでしたが、固く握った拳をより引き締めてから、スタッという音と共に中央へお戻りなさいました。


 尋常ではない覚悟って感じがいたしましたの。


 やはりこの勝負が始まる前に、何らかのやりとりがミントさんとスピカさんの間で交わされていたのでしょうか。


 私とはちがって自らの手で戦えるお二人だからこそ、入念に丹念に作戦を練られていたのかもしれません。


 ……次に迎える第4ラウンドで、何かが起こるのは間違いなさそうです。


 私ももう少しばかり中央に近付いておいたほうがよいかもしれませんわね。始まったらじわりじわりと距離を詰めておきましょうか。


 わざわざすぐに呼ぶと念押しなさったのです。


 きっと、どデカい展開になるに違いありませんの……ッ!





――――――

――――


――




 第4ラウンドの開始は、意外なほどに静かなものでしたの。


 もはやスピカさんとシロンさんの間で交わす言葉はないのか、どちらからともなく、自然と攻撃のし合いが始まったようにも思います。


 最初の頃に比べれば少しだけスピードが落ちているようで、私も辛うじて目で追えるか追えないかといった具合です。


 変わらずシロンさんは銀に輝く長剣を振り回し、スピカさんはギリギリのところで交わしつつ、拳を当てるために肉薄を試みようとしております。


 見てのとおりの一進一退の攻防……!

 まさに手に汗握るとはこのことでございましょう。


 次に大きな動きがあるとしたら、いったいどのタイミングなんでしてぇ……ッ!?

 

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