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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第1章 王都周辺編】

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聖女様のチカラでは治せないモノなの?

 


 そうして迎えた数日後。


 宣言通りに、私は風邪を引きました(・・・・・・・・)の。


 正直、身体が火照って仕方がありません。


 それこそ当日は朝から晩までテントの奥のほうで、頭のテッペンからつま先までをすっぽりと寝袋に納めて、決して外には出ないように努めさせていただいたくらいなのです。


 お昼頃に一度だけスピカさんが様子を見にテントの中を覗き込みなさいましたが、今はご心配なさらずと精一杯の笑顔を取り繕って、即刻に出入り口の扉をシャットアウトさせていただきましたの。


 さすがにダイレクトに隠そうとしすぎましたかしら。

 今の態度はさすがに訝しまれてしまってもおかしくなかったとは思います。


 けれどもこうでもしないと、無垢な彼女に私の秘密を知られてしまいますもの……!


 サンサンと明るい日中はおろか、辺りが薄暗くなり始めた夕方であっても、誰かにこの姿の私(・・・・・)を見られてしまってはマズいと思うのです。


 とはいえスピカさんをお外で眠らせるわけにもまいりませんものね……。


 完全に真っ暗となった夜にだけ、申し訳なさ80%くらいでテントの中に招き入れてさしあげました。


 もちろん何も対策しないわけではないのです。


 事前にテント内部に布の仕切りを張っておいて、簡易的に空間を分割させていただきましたの。


 今夜だけはスピカさんはこちら側には入ってきてはダメなのです。隙間から覗き見ることだって頑なにNGとさせていただきますの。


 風邪を移してしまってからでは遅いのです。

 再三に言葉で釘を刺させていただきましたの。

 

 好奇心は猫をもバーストさせてしまいますからね。

 無論、スピカさんだって例外ではございません。


 念には念を入れて損はありませんの。



「……うーん……何だかへーんなリリアちゃん。ま。いっか。おやすみ。お大事にね」


「ええ、おやすみなさいまし。きっと明日には完全回復しておりますゆえ、どうか真夜の今日だけはご勘弁をば、と。ご配慮誠に痛み入りますの」


 あとほんの数時間隠し通すことができれば、またいつも通りの日常に舞い戻れるのでございます……っ。


 だからもう少しの辛抱でしてよリリアーナ……!



 様々な気苦労に悩まされつつも、長旅の最初の真夜の日(・・・・)を無事に過ごすことが叶えば、おそらくまた次のこの日(真夜)までは、平穏かつ安寧な日々を過ごすことができるのですから……ッ!



 ああ、ストンと眠りに堕ちてしまえたら簡単ですのに。


 二度寝、三度寝はさすがに厳しいところがあるんですのよね。


 とにかく今はじっとしておきましょう。

 時間が解決してくださるところでもあるのですし……!


 そのうちに起き続けることに疲れて、勝手に瞼が重たくなってくださるはずですの……っ。


 ふぅむぅ……夜は長いですわねぇ……。




――――――

――――


――



 というわけで迎えた、翌日。時は早朝ですの。



 予想のとおりいつの間にか眠ってしまっていた私は、朝日の昇りと共にひっそりと目を覚ましました。


 すぐにハッと我に返って、更には自らの身体をぺたぺたと触診して、そうしてふぅと安堵の溜め息をこぼします。


 どうやら無事に、夜を超えられたようですわね。


 すぐにテントから這い出まして、纏っていた寝袋からも脱出いたしまして、大の字よろしく大地に立って、全身に朝日を受け入れさせていただきます。


 死ぬほど眩しい、だがそれがいい、ですのッ!


 己の内から湧き出ずる笑みを隠すこともいたしませんッ!



「むっふっふっ。いゃっほぉーうっ!」


 この胸の昂ぶりだけは抑え込めませんの。


 だってだって!


 私の〝唯一〟と言っても過言ではない憂いの象徴――真夜の日が何事もなく終わってくださったのですから。


 誰か見られることもなく、そして悟られることもなく、いつも通りにただ隠し通すことが叶ったのでございますッ!


 様々な制約と気苦労から解放されて、少しも喜ばない乙女がどこにおりましょうか。


 いや、おりませんわね。断言できますの。



「というわけで世界の皆様、既に拍手喝采のご準備はお済みですわよねッ!? 今ここにリリアーナ・プラチナブロンドが完全復活いたしましたのーッ!

いやはや朝日がとっても眩しいですことッ!

澄んだ空気も最高に美味しいですわねぇッ!」


 腕を振り上げてガッツポーズいたします。


 そしてまたヒラリと翻る修道服の裾を気にせず、全身で喜びを表現するかのように、おーっほっほと高笑いを世界に向けて解き放ってさしあげましたの。


 朝から大声を出すのって気持ちがよいですわね。

 かなり癖になってしまいそうです。


 

「うーっふふぅーッ! いやぁーとんでもなく心地のよい朝ですのーッ! 五臓六腑がそれぞれ器械体操を始めてしまいそうなくらいに素晴らしきお目覚めでしてよーッ!」


 生きているって最高ですわねッ!


 こんなに晴れ晴れとした心地になれているんですから、私はきっと今日も変わらず美しいはずですのッ!


 美しい私がいれば世界は平和ですのッ!

 この私めが保証してさしあげますのッ!



「……ふぁぁ……おふぁよう。風邪、治ったの?」


「あらスピカさんごきげんよう。見ての通りもう大丈夫ですの。むしろ元気が有り余ってしまっているくらいには劇的復活できておりましてよっ!」


 私の快活明朗な声にお目を覚まされたのか、スピカさんがテントの入り口からお顔だけを出して、かなり眠そうに目を擦っていらっしゃいます。


 目は未だ横一線ですし、数秒に一回ふわぁぁと大きなあくびを浮かべているあたり、本来の彼女の起床時間はもう少しだけ後なのでございましょう。


 ちなみに私も同じくでございます!

 基本的には昼まで寝ていたいタチなんですの。


 真夜明けの今日だけが特例デーなのですぅ!



「えっと、すみませんわね。どうやら起こしてしまったようで。昨日にご心配をお掛けした分、今日は私が朝ご飯を準備させていただきますの。貴女はまだ寝ていらしても大丈夫でしてよ」


「ううん……もう起きるよ……ふぇぁぁ」


 あらまぁ。確かに早起きは健康によろしいですし、お金儲けのきっかけにもなると聞いたことがありますけれども。


 別に私に気を遣わなくてもよろしくてよ?


 急に引きこもりと化してご迷惑をお掛けしたのは私のほうなのですし。


 今日はまだ休んでいてくださいまし。


 と、思っていたのですけれども。



「ふわぁぁぁ……ふぃ……あ、そういえばなんだけどさ……別に大したことでもないんだけども……んぁふぁぁ……んむ」


「ふぅむ? 何ですの?」


 彼女が、純粋無垢な瞳で私に質問を投げかけてきたのでございます。


 未だ目を擦りながらお続けなさいます。



「あのさあのさ……リリアちゃんの風邪ってさ……聖女様のチカラでは治せないモノなの?」


「ぎくっ」


 け、結構な核心をついてきますわね、早速ながら。

 正直回答に困ってしまうお問い合わせですの。


 端的に言って、昨晩の私は別に実際に風邪を引いていたわけではないのです。


 風邪という適当な理由を見繕って、ただテントの奥に引きこもっていただけなのですから。


 下手な言い訳は話を余計に拗らせるだけでしょうし。



 私、早速のピンチなのでございます。


 

 


リリアちゃんのヒミツを

少しずつ紐解いていくのが

今後のお話の展開方針ですの。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] リリアちゃんとスピカちゃん、仲良くてほっこりします(*˘︶˘*).。.:*♡ [気になる点] リリアちゃんの秘密にドキドキします(,,•﹏•,,) バレちゃうのかなー、明らかになるのかなー…
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