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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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するつもりもありませんし


 しばらくの間、剣と剣のぶつかり合う音が広場に響き渡っておりましたの。


 やはり音だけでしか確認はできません。


 私は目で追えておりませんが、観衆の皆様はキチンと見えていらっしゃるのでしょうか。


 少なくともミントさんはスピカさんの鍛練相手になっていらっしゃいましたゆえ、このくらいは余裕のヨッチャンなのかもしれませんね。



「……でも、見守ることしかできないのは、多少なりとも歯痒さを感じてしまいますの」


 けれども自らが前線で戦える術を得たいかと問われたら、それは否と答えますし、優れた目だけを授けられたとしても、きっと身体が追いつかないでしょうし。


 出るとこはガッツリ出て、引き締まるところは適度に引き締まった私の魅力的な身体では、あまり素早い戦闘に適していないと思うのです。


 私もスピカさんやミントさんのような、小柄で可愛らしい感じでしたら独自のスタイルも築けたのでしょうか。


 聖女に腕力は必要ないですけれどもっ。



「……我々の役目は……後方支援、ですか」



 と、ここで。

 珍しいこともあるんですのね。



「ふぅむ? イザベラさん?」


 私の口から漏れ出た呟きを、隣で同じく待機していらっしゃるイザベラさんがお拾いなさったのでございます。


 チラリとこちらのほうに目線を向けなさると、睨み顔とも疑問顔ともまた微妙に異なる、奇妙な無表情で問いかけてきなさいましたの。



「……リリアーナ・プラチナブロンド。アナタは今までどのような活躍をし、名声を得てこられたのですか」


「はぇ? 活躍? 名声?」


 向けられた質問の意図が分からなかったのですが、とりあえずザックリ考えてみましたの。


 王都を出発してからというもの、各地を転々としながらずっと人助けを続けてきた私たちではありますの。


 道すがら沢山の方々に感謝をされてきたとは思うのですが、それによって大々的な名声を得られたかと問われますと。



「別に、大した活躍はしておりませんの。するつもりもありませんし」


「……していない?」


「もちろん何もしていないわけではありませんでしてよ? たっくさんの方々と仲良くなれたと思っておりますし。

ただ、私たちの目的はあくまで北の魔王城に赴いて、休戦協定を延長することにありますの。日々の善行は、お世話になった場所への恩返しと言いますか」


 喜ばれると素直に嬉しいですからね。

 見返りを求めていたらキリがありませんし。


 ギルドの依頼達成とは違うのです。


 報酬を得たいがために行うのではなく、やったほうが地域の安寧に、巡り巡って世界の平和に繋がるかなぁなんていう淡い期待の上で、のんびりと気ままにこなしておりますの。


 道中ではできる限り善行を積んでおけと、お国の王様にも言われておりますからね。

 

 私たち個人の売名というより、王都そのものを宣伝してこいと言われておりますし。


 癪ですのでそこまではしておりませんけれども。



「そりゃあ私だってチヤホヤはされたいでしてよ? 各所のイケメンたちに求婚されまくりたいですの」


 元々の目的は生涯の伴侶を見つけるため、でしたものね。


 しかしながら。こうして旅を続けて、各地を見て、お話を聞いて、文化を体験することで。


 私の背負っている〝聖女〟という存在が、どれほど多くの人々に支えられているか、知ってしまいましたゆえに。



「でも、己の自由に生きるコトよりも、まずは与えられた使命を全うするコトが淑女としての当たり前だと思っておりますの。そのためなら少しくらい我慢だってできましてよ。人生はまだまだ長いのですからね」


 この旅の最中に見つかれば万々歳、見つからなくても全然おっけー、ですの。


 王都に戻ってから、使命を全うした聖女という肩書きを引っ提げて、玉の輿を狙っちゃいますゆえにっ。


 ちなみに子供は三人くらいほしいですのっ。


 パパ似の息子が二人と、私似の娘が一人。

 家族五人で健気に暮らしたいですわね。


 最初に立ち寄ったアルバンヌの村くらい長閑な田舎町であればなお良しですの。


 そんな穏やかな未来を得るためには、戦争なんて絶対に起こさせてはならないのでございます。



「私は私が健やかに過ごせる未来のために、今の平和維持を望んでおりますの。そういった点では利己的なのかもしれませんけれども。

でも、少なくともヒト族の恒久平和などは望んでなどおりませんし」


 私たちが豊かになればなるほど、割を食う方々がいらっしゃるということでしょう?


 魔族と戦争を起こして、仮にも私たちヒト族側が勝ってしまったとして。


 ミントさんの故郷はどんな扱いを受けてしまうというんでして?


 ……今でさえこんな蔑みの目を向けられてしまっていると言いますのに。


 戦うことでしか解決できないのであれば、私たちは責任をもって戦いますの。


 でも、それ以外の解決の方法があるのなら、私は喜んでそちらを選ばせていただきますの。


 言い換えますと。


「私たちの行いに活躍が名声が付随してくるのなら、そのときは謹んで頂戴いたしますけれども。ただ活躍や名声のために行動を起こすつもりなど、微塵もありませんわね」


 堂々と言い放ってさしあげます。



「……それでは、今、中央で剣を振るっているエルスピカ・パールスターも?」


「当ッたり前のモッチのロンですの! むしろスピカさんなんて、そんなつまらないコト頭の片隅にもないと思いますの。善意の塊みたいなお人ですし」


「………………なる、ほど」


 あら、意外に素直に納得されましたの。


 先ほどみたいに嫌味ったらしく突っかかってくるかと思いましたのに。不思議なものです。


 それはそれとして、ほら。

 そろそろ第二ラウンドも終わるみたいですし。


 即効治癒魔法の準備、始めましてよ。

 私のほうが優れた聖女だと証明してみせますの!

 

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