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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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どうぞご堪能あそばしなさいまし

 

 スタスタと歩み寄って、営業スマイル気味に微笑みかけてさしあげます。



「ごきげんよう、イザベラさん。今日はお手柔らかにお願いいたしますわね」


「…………ええ。アナタ方も民々の期待に応えられるといいですね。皆様、待ち侘びているようですから」


 目線を促された先には、身なりの良い方々が日陰に設けられた来賓席に座っておりましたの。


 結構位の高い方々なのでしょうか。


 見たところ修道服は召されておりませんから、地主や商人の類いとお見受けいたしますけれども。



「うふふふ。こんなに沢山の方々に見られていると、緊張してしまいますの」


「……せいぜい実力を出し切ってください」


「ええ。イザベラさんのほうこそ」


 お互いに顔に笑みを貼り付けてこそおりますが、目元には絶えずバチバチと火花が舞っているのでございます。


 イザベラさんも、普段に比べたらどこか猫を被っていらっしゃるご様子でしたが、私に向けてくる言葉の棘はいつも通りのようですし。


 冷徹な内面は隠して、したたかに立ち回っているようですの。


 ふふんっと鼻を鳴らしつつ、ついでに周囲も確認しておきます。


 どうやら私たちの待機スペースは、目の前の来賓席とは反対の、広場を挟んで西側に用意されているようですわね。


 こちらのほうはわりと一般市民の方々も多いような気がいたしますの。ちらほらと修道服姿の方も見えますし。


 一般の観客席側なのでしょうか。

 わりと距離も近い気がいたします。


 今のうちにどうか下がっておいてくださいまし。剣と剣がぶつかり合い始めたら、多分、危ないですわよ。



 と、ほんのりとした悩みに眉間にシワを寄せつつおりましたところ。



「ねぇザコ聖女。分かってるとは思うけど、あのいけ好かない来賓席の連中がイザベラとかいう女をけしかけさせたはずよ。見るからに成金主義の革新派っぽい身なりだもの」


 ミントさんがこっそり耳打ちしてきてくださいましたの。



「革新派の思想がお金儲けになんて繋がるんでして?」


「奴らは戦争を起こしたいのよ。ブン獲った土地を転がすもよし、その土地の特産を根こそぎ奪うもよしってね。世界の均衡が崩れたときが平和の終わりの合図。いつの時代だって戦争が金を動かすのよ」


「末恐ろしい限りですの……っ」


 コクコクと頷きを返しつつ、目の前のイザベラさんと相対し直しておきます。



 イザベラさんは〝皆様、待ち侘びている〟とおっしゃっておりました。


 それは勝負が始まることに対してなのでしょうか。


 それとも、自分たちの願っている展開になることなのでしょうか……!?


 極端に言ってしまえば、数多の野心を持つような方々が各々の好きに動けてしまうような、そんな混沌な世界が訪れてしまうことなのかもしれませんの。


 私たちが最後の砦になってさしあげましょう。


 あちらの観客の期待に応えられないような状況を作り出すのでございます。


 例えば私たちが一気に優勢な状況を築いてしまったり。もしくは勝負のカタがすぐについてしまったり、と。


 今回はまっすぐに勝ちに行くつもりですゆえ、観客の皆様をドキドキハラハラな気分にさしあげることよりも、安心安全に、世界の平和をつつがなく維持できるほうを優先して選ばせていただきますの。


 ……ええ、きっと大丈夫ですの。


 いつも通りやれば負けるはずはありません。


 

「ふっふっふっ。せいぜい私たちは慎ましくお淑やかに頑張らせていただきますわね。魔力の限界のその先まで治癒魔法を行使してさしあげますので、どうぞご堪能あそばしなさいまし」


 アナタがどんなに優れた修道女であっても、私にはこの人生をかけて培ってきたド根性精神がありますゆえに。


 サポート役、お任せあれですの。


 己の肉体を酷使して戦ってくださるスピカさんを、私も全身全霊を尽くして後方支援してさしあげるのでございますッ。



「して、相方のシロンさんはどちらに?」


 そういえばスピカさんの対戦相手であるシロンさんのお姿が見当たりませんけれども。



「……今は席を外しています。正装に着替えてくると言っていましたから」


「はぇー、正装……っ!」


 ふっふんっ。まさかこの期に及んで社交ダンスでも踊るおつもりなのでしょうか。


 どうしましょ、私、特に何も考えずにいつもの旅装で来ちゃいましたけれども。


 今着ている修道服には歩きやすいようにスリットが入っておりますし、スピカさんのお召し物は革を繋いだ形の簡易的な防具になっているのでございます。


 結構ラフなスタイルですわよね。

 少なくとも高級感はないですの。


 もちろん着慣れているので動きやすくはなっているのですが、華やかさや見映えの良さについては正直に言って皆無なのです。


 代わりに庶民的で実用的で、親しみはもたれやすいかもしれませんけれども。


 余談と冗談はさておきつつ。



「……もうしばらく経てば会場アナウンスが始まります。アナタ方はあちらで待機していてください。特別に、そこの奴隷の席も用意しておいてさしあげましたので」


「ふんっ。お気遣い、どうもですのッ。お二人ともっ! いきましょっ!」


 ミントさんへのお気遣いなのか余裕の表れなのかは知りませんけれども、真っ向から奴隷扱いするのはやめていただきたいですわね。


 ……今に見てなさいまし。


 その奴隷さんと鍛練をして、スピカさんは更にお強くなられたのですからね。


 返り討ちにしてさしあげますわよぉッ!

 

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