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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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もっとシャキッとなさい! ほら!

 

 ミントさんの毅然とした態度に、イザベラさんもさすがに動揺なされたのでございましょうか。


 眉間のシワを更に一つ二つ増やしながら、明らかに私たちに聞こえるように舌打ちをして、そそくさと踵を返されましたの。


 その歩様には確かな怒りが見て取れました。


 入り口の大扉を開ける直前、彼女はこちら側を睨みながら捨て台詞をお吐きなさいましたの。



「……私こそが聖女に相応しいのです。そして彼もまた、今代の勇者に選ばれるべきお人なのです……! 必ず、必ず証明してみせますから」


「はいはい、せいぜいほざいてなさーい」


 ミントさんがヒラヒラと手を振ります。


 深いフードの隙間から、あえてニマニマとしたイヤらしい顔を見せつけておりましたの。


 さすが、挑発行為については私たちの誰よりも秀でていらっしゃいますわね。


 まぁでもそれもそのはずですの。


 年齢さえ知らなければ、私たちの中では一番にコ生意気なガキんちょ感が強いんですもの。


 再三の挑発にさすがに怒髪が天を衝いたのか、イザベラさんは玄関の大扉をバシンと音を立てて、それはもう肩を怒らせて去っていかれましたの。


 えっと……あの、私たちに日程を教えてくださったことには感謝いたしますが、せめてこの教会の主である先代様くらいにはご挨拶をされてから出ていったほうがよろしかったのではありませんでして?


 仮にも貴女が先代様のお弟子様なのであれば、先に道理を通しておくのが修道女の務めだと思うのですけれども……。


 わざわざ呼び止めるのも変な話ですし。

 ……私の知ったこっちゃありませんし。


 ようやく教会内部も静寂さを取り戻し、この場にピンピンに張っていた緊張の糸も今はいくらか緩み始めました。


 私もふぅっと大きな溜め息を吐かせていただきましたの。


 丸まる私の背中をミントさんがパシィンと叩きなさいます。


 ……ちょっと、地味に痛いんですけれども。



「あの女、律儀なのか失礼なのか、本当分かったモンじゃないわね。自信家なのは間違いないんだろうけどさァ」


「さすがに挑発しすぎでしてよ……。いえ、正直かなり助かりましたけれども……」


「フン。アンタもアレくらい言ってやんないとダメよ。つーか、あそこまでヒッドい差別主義を持ってるようなヤツ、アタシも久しぶりに会っちゃったわ」


「ふぅむぅ。私たちのことが根本的に許せないんでしょうね……」


 私のようなちゃらんぽらんが今代の聖女で、スピカさんのような小柄で愛らしい乙女が今代の勇者で、おまけにミントさんのような魔族と仲良く旅をしていて……。


 可哀想なお人、とまでは口には出しませんでしたの。


 実力自体は間違いなくあるお人なのです。


 対して私は〝運〟で選抜された聖女ですの。


 その嫉妬心が分からないでもありません。



「何にせよ、明後日の勝負内容は分かりましたの。私は私のできることをやるだけですの」


「そうね。そんでそれは勇者のほうも同じ」


「……うん。分かってるよ」


 後は妙に自信を喪失してしまっているスピカさんが、いわゆるへこへこ(・・・・)モードから回復してくださることを祈るばかりですの。


 長椅子に腰掛ける姿がいつもよりも更に小さく見えてしまいます。


 ……まったく、もう!


 従兄弟のシロンさんが何だとおっしゃるのですっ。


 映えある勇者様の血筋として貴女が誰よりも真面目に鍛練に励んでいらしたこと。


 それこそ私は修道院にいた頃から何度も何度も目にしておりましてよ!?


 幼き頃からその使命を背中に背負って、周囲からの期待に報いようと努力なさってきたのでございましょう!?


 今こそ証明してさしあげられる、絶好の機会ではございませんかッ!


 私の励ましの熱意を、お隣のミントさんも汲み取ってくださったのでしょうか。



「ほーらザコ勇者。剣の稽古、付き合ってあげるわ。だからさっと表出なさい。言っとくけど今日からは手加減無しでいくわよ」


「うん……ありがと、ミントさん」


「たっはーッ。アンタがそんな感じだと調子狂うのよ。もっとシャキッとなさい! ほら!」


 瞬時にスピカさんの背後まで転移して、先ほどの私に食らわせたものよりも100倍は強い力で、ズバッシィィンと背中を叩きなさいます。


 勢いでスピカさんが宙に浮いてましたの。


 アィタァー!? という拍子抜けするような声も聞こえてくる始末。


 自然と微笑みが込み上げてきてしまいましたが、下手に注目を集めて次の標的にされてしまってはたまったものではありません。


 あくまで澄まし顔で、平常を装いつつ。



「こっほん。どんなに傷だらけになっても私が責任をもって治してさしあげますゆえに。どうぞお気の済むまで稽古してきてくださいまし」


 ぺっぺっとお二人をお外に誘導いたします。


 勇者様を側でお支えするのが聖女の務めなのですからね。とりあえず何でもドンと来いですの。




――そうして。


 スピカさんのお顔にどこか影が残ったままなのは、やっぱり気掛かりではありましたけれども……!


 それでも私たちは私たちなりに、各々のできる限りを尽くしてコンディションを高めていったのでございます……ッ!!

 

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