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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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正直、吐き気がするのですが

 

 あえて自ら立ち上がって、入り口からすぐに見えるところ……つまりは身廊まで移動しておきました。


 身廊とは女神像が見下ろしている祭壇へと続く、長椅子と長椅子の間の通路スペースのことですのっ。


 ここでドドンッと腕を組んで仁王立ちしておいてさしあげれば、どんなにお目を悪くされた方であっても視界に映り込めますわよね。


 気が付かなかったとは言わせません。


 ふぅーっと長い息を吐いて呼吸を整えておりますと、教会正面の大扉がゆっくりと開かれていきましたの。


 向こう側に一人の人影が見えてまいります。


 紛れもないイザベラさんご本人でしたの。


 黒藍色の標準的な修道服をピチッと着こなして、今日も今日とてお堅い雰囲気を身に纏っていらっしゃいます。



「……ほう。しばらく姿を見ないと思っていたら、本当にこんなところにいらしたとは」


 早速ながら私の姿を目に映して、少しだけ驚かれているご様子です。


 ただ、そのご発言から察するに、やはり私たちの滞在は伝わっていたようですわね。


 今回は偵察も兼ねてのご訪問なのでございましょうか。



「はいどうもご機嫌麗しゅう。イザベラさん」


 できる限りの礼節をもって応対してさしあげます。



「……尻尾を巻いて逃げ出していないだけ、褒めておいてさしあげましょうか、リリアーナ・プラチナブロンド」


 吐き捨てるように名前を呼ばれちゃいましたの。

 ふっふん。お褒めに預かり光栄ですわね。


 残念ながら私、歓喜のためについフリフリと振ってしまう尻尾はあっても、巻いて隠すような尻尾は生まれてこの方持ち合わせてはおりませんゆえに。


 ……この人、どれだけ私のことを過小評価なさっているのでしょうね。やっぱり腹が立ちますの。



「今日は何のご用事ですの? 先代様? それとも私たちに向けての内容でして?」


「……二日後の勝負場所を伝えていなかったかと思いまして。別に共有する義務などもないのですが、後から不平不満を言われても不愉快ですからね」


「ふぅむ。律儀な方ですこと。別に当日に唐突に告げられたところで、逃げも隠れもいたしませんのに」


 ……ふ、ふっふんっ。嘘ですのっ。


 内心ビビりまくりでしたゆえ、ホントは煽るのも恐ろしいくらいなんですのっ。


 下手に彼女にヘソを曲げられてやっぱりやめました、なぁんてことにはならないよう、細心の注意を払っておきましょう。


 でも、あくまで私とイザベラさんは対等ですの。

 それだけは忘れてはなりません。


 堂々と、綽々と構えておくのでございます。

 


「……当日は街の中央広場をおさえてあります。真昼が勝負の開始タイミングです。お忘れなきよう」


「その勝負の内容とやらは?」


「勇者と聖女に求められているモノなど、とうにご存知のはずでしょう。

目の前の敵を退ける絶対的なチカラと、世の民々に聖光をもたらす清浄なるチカラ。私たちとアナタ方と、どちらのチカラが優れているのかを比べ合うだけのこと」


「はぇ……ちから比べ……です、か」


 小難しい言葉を連続で並べられてしまうと、私、ポカンとしてしまいますの。実はイマイチ伝わってきておりませんけれども……。


 つまりはアレでしょうか。腕相撲的な?

 そうなると私に勝ち目はありませんわねぇ。


 ふぅむ、コレは困りましたの――



「――要するに、勇者は腕っぷしの強さを、聖女は治癒能力の高さと正確さを比べ合うって認識で合ってるかしら?」


「ミントさんっ!」


 こっそり困惑する背中をお察しして、助け舟を出してくださったのでございましょうか。


 スッとミントさんが後ろから現れて、私と並んで補足をしてくださったのですっ。


 なるほど、確かに勇者たるモノ剣を振れて当然ですし、聖女たるもの聖魔法を自由自在に行使できてこそ、ですわよね。


 特別な対策はしないでも済みそうですの。

 

 勇者と聖女に求められているチカラなのであれば、今の私たちが全力を出しきれたら、それだけで充分ってことですものねっ!


 ふっふっふっ。小難しい言葉で私を翻弄しようったってそうはいきませんの。


 私には頼れるお仲間のスピカさんとミントさんがいてくださるんですからねっ!


 ニヤりドヤりと睨み返してさしあげます。



 少しは怯んでくださるかと思ったのですけれども。

 


「……魔族の奴隷風情が気安く話しかけないでくださいますか? 正直、吐き気がするのですが」


「んなぁッ!?」


「あらぁ〜。これはこれは失礼したわね。アタシらも相当嫌われちゃってるようで」


 予想だにしない返答をされてしまったのでございますッ!


 今のは明らかな魔族差別ですの。

 場所が場所なら国際問題にも発展しかねません。


 知ってはおりましたが、イザベラさんのものは度を超していると思います。


 蔑視どころか敵視と呼んでも遜色ないくらいの冷たい視線が、ミントさんに向けられているのです。



 しかしながらミントさんも大人(・・)でしたの。


 少しのも気に留めていない様子を続けたまま、とにかく明るくて軽い口調で。



「まぁいいわ。今回のアタシは完ッ全ッな部外者だからね。遠目からじっくり見物させてもらうだけのことよ」


 そして――とにかく真剣そうな瞳で。



「あ、でも一つだけ忠告。あんまりコイツらを見くびらないほうがいいわ。アンタのちっぽけなプライドより数倍デカくて重たいモノ、背負ってんだから」


 伊達に勇者と聖女を名乗ってないからね、と。


 私たちを全面的に擁護してくださるかのように、堂々と言い放ってくださったのでございます……ッ!

 

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