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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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貴女も負けてはおりませんでしょう?


 ゴクリと息を呑み込みますと、私の真剣さを汲み取っていただけたのか、先代様もまた真面目なお顔で続けてくださいましたの。

 


「イザベラの有する欠点とは、治癒魔法を施してあげているという、無益な優越感(・・・)を抱いてしまっていることに他なりません」


「……それは、正直に悩ましいところですわね」


「ええ。分からないでもありませんから」


 私は清廉な修道女ですが、基本的に周りの方々にチヤホヤとされたいですし、自らドヤドヤともしていたい、いわゆる承認欲求高めな乙女だとも自覚しているつもりですの。


 けれども上から目線にまではならないのは、自分自身に自信がないからに他なりません。


 己の美貌は誇っておりますが、聖職者としての能力や精神性も十二分に優れているかと問われますと……素直には頷けないんですのよね。


 女神様からのご加護があるからようやく、というふうに思っているのです。


 まして月に一度は先祖返りしてしまう体質ですから、人並み以下の実力しか発揮できない日が定期的に来くることも驕り高ぶれない要因の一つと言えましょう。


 これが幸なのか不幸なのかはイマイチ自分でもよく分かっておりませんけれども。


 プラスがあっても、マイナスもあるから、私は普通でいられるのでございます。


 先代様が目を伏せながらお続けなさいます。



「イザベラを完全に否定することはできません。今までに一度も考えたことがないかと問われたら、全くとは言い切れませんから」


「先代様もなんですの?」


「ええ。由緒正しき聖女(・・)ですからね」


 先代のアナスタシア様がそう思われるのであれば、私なんて三日に一回は褒められたいですの。


 意味もなくヨイショされたいですの。


 なぁんてコトを胸の内に秘めていたりします。



「聖女はとっても誉れ高い肩書きだと思いますの。50年に一度の大役を与えられて……常に人々から愛敬の意を向けられて」


「それゆえに大きな責任も伴うのです」


「だからっ。浮かれてなんていられませんの。先代様も、その前の先々代様も、もっと前の方も。皆キチンと務めを果たされているのですから、私もその後に続かねばなりませんのっ!」


 心に奉仕(・・)の二文字を掲げて、日々慎ましく。


 人々を導くと共に、常に人々と共に歩む存在だということを忘れてはなりません。


 歴代の聖女様方はそうして今の平和と歴史を紡いで来られたのでございます。


 聖女となったからには私も同じく、キチンと未来に繋ぎたく思っておりますの。


 自由奔放に生きるのは、任を果たしてからでも遅くはないとそう信じておりますゆえに。


 先代様がほんの少しだけ表情を和らげなさいます。



「大事なのは清き心と、善悪を正しく察知する嗅覚なのです。……その点、リリアーナさんは大丈夫そうですね。貴女が私の後に選ばれた理由も分かった気がいたします」


「えっへへ、そんなそんなっ。選定理由なんてただの見た目が大半でしてよっ」


「見た目?」


「えっ、あっ……いや、お国のマスコットキャラとしてはちょうどよかったんだと思いますのっ。ほらこのとおり、愛嬌たっぷりですもの」


 にっこにっこな笑顔で誤魔化しておきますっ。


 はぇー、あっぶねーですのー。

 私はちょっと特殊な選定理由ですものね。


 最も女神様に容姿が似ているという理由から選ばれているのでございます。


 体裁としては正しく神託を経てはおりますが、その後に私はご本人から直接そう告げておりますの。


 おまけに実際に定期的に監視に降りてくるだなんて、歴代でも私だけだと思いますの。


 間違いなく。


 ……私が圧倒的に頼りなくて手が掛かるから、毎回降臨せざるを得ないのかもしれませんけれども。


 少なくとも火遊びするつもりはありませんでしてよっ。旅の当初ならともかく、今はもうっ。


 旅の最中に〝反・魔王派〟思想の方々に邪魔をされたり、助けを求めている人々に救いの手を差し伸べたりしているうちに、自分だけの人生ではないのだと、理解できたのですからねっ。



「イザベラはあくまで自分の誉れのために、聖女になろうと画策しているのでしょう。その幼稚さが無くならない限り、先代の私が彼女を後押しすることはありません」


「でも、実力は折り紙付きなんですのよね?」


「貴女も負けてはおりませんでしょう?」


「はぇっ」


 不敵な笑みを向けられてしまいました。


 もしかして、ここ最近の超が付くほどの精神的スパルタ修行は、私がデキる女だと確信していらっしゃるからなんですの……ッ!?


 私の心を折りに来ているのではなく、無理矢理にでも鼓舞して底上げしようとしてくれていたんでして……ッ!?


 なんだか急にやる気が出てまいりましたの。



「自信を持ちなさい、リリアーナさん。貴女の治癒魔法は既に一流のモノですよ。ただしここで満足して終わってはなりません。何故なら貴女は、今代の聖女なのですから」


「は、はいですのっ!」


 まっすぐな眼差しがとても心強く感じられました。


 勝負の日まであと三日……ッ!


 キッチリ仕上げてさしあげますの。

 決意を固めた私は強いのでございますッ!

 

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