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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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致命的な欠点、ですの?



――――――

――――


――



 時はほんの少しだけ経ちまして、先代様の教会で寝泊まりさせていただけるようになってから早くも三日ほどが経とうとしております。


 結論から先に申し上げますの。


 先代様の教え方はとんでもなくスパルタ(・・・・)でしたの……ッ!


 しかも今まで経験したモノとは微妙に異なるタイプのキツさだったのでございます……ッ!


 血反吐やらおゲロやらを吐くまで徹底的に身体に覚え込ませるのがミントさんの肉体的指導法だとすれば。


 先代様のはとにかく理屈で攻めて言葉で責めて追い込んで、とにかくグイグイと心に折りにくるタイプの精神的指導法でして……っ。



「いやぁ、よくもまぁこの稚拙な状態で今代の聖女が名乗れましたねぇ。一度に癒せる範囲が広いのは良しとしても、とにかく一回一回の精度が低くて遅い。そんな治癒スピードでは重症の患者様には間に合わないでしょう?」


「うぅ……ぅぅ……ぅぇぇ……」


 目元に涙を浮かべても容赦なしですの。


 聖堂内の女神像の前で治癒魔法の発動を見ていただいているのですが、やることなすこと全てに小言を言われ続けておりまして……。


 もちろんのこと私は嘘泣きをしているわけではありません。ホントのホントに勝手に滲み出てきちゃうんですものぉ……っ。


 けれども全く気になさる様子はなく。



「リリアーナさん。返事は?」


「……はぃ……ですの……」


「それではもう一度、詠唱からどうぞ」


 嗚咽を漏らしながらも祝詞を呟くしかないのです。


 早く終わってくれと願えば願うほど、治癒魔法の効果は薄くなってしまいますの。


 悪循環と言われたらそれまでなのですが、どんなときでも安定して魔法を発動できるのが治癒術師としての最低条件でもありますゆえ、私のようなムラっ気があるのはあまりよろしくないのです。


 たまーにお手本的に治癒魔法を見せていただくことがあったのですが、先代様のほうが傷口の治り方や塞がり方が圧倒的に早かったですの。


 いったいどのようなお祈りを女神様に捧げれば、ここまで効果的な魔法を得られるものか、テンで分からないのでございますぅ……。


 しかも先代様は無詠唱の使い手みたいですしぃ……。


 ちょーっと手を合わせて目を閉じるだけで、すぐに全身に緑色の光を纏い始めてしまいますしぃー……!


 ふぅむ? もしかしなくともアレですの?


 先代様の女神様への敬意は、もはやほぼほぼ上限値にまで到達してしまっているのではありませんでして?


 治癒魔法は思いのチカラに大きく影響を受けますの。


 思いが明確であればあるほど、魔法の効力も高くなるのでございます。


 そしてまた女神様を崇拝していればしているほど、安定して発動することができるとも聞きますゆえに。


 少なくとも私は女神様への敬意や親しみは感じておりますが、妄信的な憧れまでは抱いておりませんからね……


 既に実物を知ってしまっておりますゆえに。

 非常に悩ましい限りですのー……っ。



 しばらく、いびられ罵られ小言を言われてを延々と繰り替えましたの。


 たまーに手放しに褒めてくださるからズルいのです。飴とムチの使い方を完全に熟知していらっしゃるようで。


 さすが亀の甲より何とやら、ですの。



「今日はここまでにしておきましょうか。リリアーナさんは莫大な魔力量を有していながら、とにかく発動までの効率が悪すぎるのです。その点さえ解消できれば、歴代でも比類なき聖女になれると思うのですが」


「ぅぅ……ご指導ご鞭撻……ありがとうございましたの……ぐすん」


 さすがに魔力が枯渇してブッ倒れるまでには至りませんが、ヘロヘロにはなっちゃいましたの。


 まさに涙も枯れ果ててしまいそうな修行だったのです。


 それに、まさか女神様から直接加護を受けているような純情乙女が、魔法の発動が遅いやら効果が弱いやら言われるとは思いもいたしませんでしょう……ッ!?


 聖女に求められているスキルや才能が高すぎるんでしてよ、まったくもう……!


 ……泣いたらスッキリしましたの。

 おまけに何だか腹まで立ってきましたのっ。



「…………あの、先代様」


「はい。なんでしょう?」


 けれども私も淑女の端くれですから、怒りに身を任せて暴れたりなどはいたしません。


 憤りを有意義に昇華(・・)させるのでございます。



「イザベラさんは私なんかよりもずっとスマートに聖魔法を使いこなしていらっしゃるんですのよね?」


 せっかくですのでライバルの情報を得ておきたいと思いましたの。


 転んでもただでは起きないのが私、リリアーナ・プラチナブロンドなのでございます。


 素直に小首を傾げてさしあげましたところ。



「ええ。間違いなくそうと言えますね」


「ふぅむぅー……」


 屈託のない頷きが返ってまいりましたの。


 こうもまっすぐに肯定されてしまっては、今代の面目が立たないといいますか、悔しい気持ちがすぽーんと抜けていってしまうといいますか。


 ……まぁでも仕方ないですわね。


 イザベラさんは見た目や素振りからも優秀さが滲み出ておりましたし。彼女自身のプライドの高さにも頷けてしまうのでございます。


 シュンと肩を落としてしまうのも仕方ないと思いますの。


 我ながらお尋ねする質問を間違えてしまいましたかしら。



「ああ、ご安心なさい。貴女がうな垂れる必要は全くありませんよ。イザベラにはイザベラなりの苦手があるのですからね。

むしろ、ある意味では致命的な欠点になりうるような危うさを抱えている……とまで思っているのです」


「ふぅむ。致命的な欠点、ですの?」


 何だか酷い言われようですけれども。


 さすがの私もまだ先代様のお口からそのような言葉までは聞いたことはありません。



「詳しくお聞かせいただいてもよろしくて?」


「構いませんよ」


 いやっほーい、ですの。有益な情報が得られれば、数日後の勝負にも活かせるかもしれませんからね。


 聞いておいて損はないと思いますのっ。

 

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