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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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先代様ー? いらっしゃいましてー?

 

 ……なんとビックリ。


 切羽詰まると人って物凄いチカラを発揮できるみたいですの。


 運を手繰り寄せるスキルといいますか、ここぞとばかりに願望を実現させられるスキルといいますか。


 結論から先に申し上げましょう。



「あの、到着できちゃいましたの。何事もなく」


「「まさかそんなコトって……!」


 ぬっふっふっふ。自分自身が一番驚いているのですから、スピカさんやミントさんが驚きを隠せないのも無理はないことと思われます。


 というわけで目的地に到着いたしましたの。


 先代聖女様が修道長を務めていらっしゃる、あの郊外の寂れた教会にっ!


 考えてみればある意味(・・・・)では一本道みたいなモノでしたの。


 といいますのも、私が初めて迷子になったときは、私の足の赴くまま気のゆくままに適当に進んでいたら辿り着けたわけですから、今回もまた、同じように好き勝手に歩いてみればよかっただけなんですのよね。


 自分の無意識行動が単純すぎて、ちょーっとだけ虚しくなってしまいましたけれども……。


 それでも今日は路頭に迷うかどうかという瀬戸際でしたゆえ、こうして日暮れ前に到着できたのは、もはや奇跡と呼んでもよろしいかと思うのです。


 この機会を大事にいたしましょうッ!



 それはさておき、お二人も少しは私のことを見直してくださったのではございませ――



「ミントさんっ。ここって……」


「ええ。ホントに奇縁も腐れ縁もイイとこだわ」



 ふぅむ? あら、おかしいですの。

 私のことなど最初から眼中にもないらしく。


 スピカさんもミントさんも、教会の外観を眺めては目をパチクリとしていらっしゃいます。


 それに、お二人の空気感から察するに。



「もしかして、この教会のことを既にご存知であったり?」


「うん。特にミントさんのほうがね」


「ホント、世間ってのは狭くて困るわけよ」


「ふぅむむむっ?」


 やけに勿体ぶった喋り方をなさっていらっしゃいますが、そのお顔はどこか自嘲にも似た微笑みが浮かんでいるようです。


 言ってしまえば、ここでよかった、と安心しているかのような?


 うまく言葉にはできませんけれども。



「ともかく。中に入らせていただきましょうか」


 先代様は足を悪くされていらっしゃいますから、外に来客の気配を感じられても出迎えまではなさらないはずです。


 むしろ今回の場合は私のほうからお尋ねして、キチンとご説明さしあげる必要までありますからね。


 なおのこと責任重大ですのっ。


 とりあえず小走りで入り口まで駆け寄って、古びた両開きの木扉をノックいたします。


 案の定反応はありません。


 ゆっくりと扉を押してみると、幸いにも鍵は掛かっていないようでした。



「こっほん。お邪魔いたしますのー。先代様ー? いらっしゃいましてー? 私、リリアーナ・プラチナブロンドが参上いたしましたけれどもー」


 キョロキョロと辺りを伺いながらも、聖堂の奥へと進ませていただきます。


 ふぅむ。相変わらず静かな場所ですこと。

 自分の声が高い天井に反響しております。


 おそらくここは先代様お一人で切り盛りをされていらっしゃるはずですので、人の気配をほとんど感じられないのは至極当然のことなのですが……それでもやっぱり静かすぎると思うのです。


 今はご不在なのでしょうか。

 何度か呼んでみても反応はありません。


 まるでここには何もないのだと、無理矢理に無の気配を押し付けられているかのような。


 そんなむず痒い違和感まで覚えてしまいます。



 と、そんなときでしたの。


 後ろを歩いていたミントさんがボソリとお呟きなさいました。



「ザコ聖女。とりあえず人払い結界の解除魔法を使ってみなさい。ほら、なんつったっけ。真実化の魔法とか何とかいうヤツ」


「ふぅむ? アレを今ですの?」


「そそ。理由はやってみたら分かるわ」


「よく分かりませんけど分かりましたのっ」


 確かに言われてみれば、この肌に感じる違和感は結界魔法のソレに近しいような気もいたします。


 案ずるより産むが易しという言葉もありますし、待っていたところで状況が変わるはずもありませんし。


 ミントさんのおっしゃる通りにしてみましょうか。


 胸に手をあてて、女神様に向けて一心に祈りをお届けいたします。


 ちなむと私の魔法発動は声に出したほうがより堅実なモノになりますの。


 ゆえに今回は出し惜しみせず、実際に祝詞を呟かせていただきますっ。



「……お空の上におわします女神様。貴女の敬虔なる信徒が乞い願いますの。どうかこの私めに、炯眼(けいがん)の益をお授けくださいまし。願わくば、隠蔽されたモノを白日の元に晒す、清く尊きチカラをお与えくださいまし……ッ!」


 唱え終わると同時にカッと目を見開きますっ!


 早速ながら私の祈りが受理されたのか、身体の周りを真っ白い光が包み込み始めましたの!


 私の得意な治癒魔法は緑色の光を放つことが多いのですが、今回の聖魔法は白や金色の光を纏います。


 白は文字通りに清廉潔白さを示す色ですの。


 結界解除の魔法は〝浄化〟に分類されるモノですゆえにっ!


 手を頭上に掲げますと、私を中心にぶわぁっと光の粒子が広がっていって、少しずつこの聖堂内に満ちていきます。


 すると、どうでしょう!?


 今までずっと静かだったはずですのに、何故か子どもたち(・・・・・)のヒソヒソ声が聞こえ始めたではございませんか!?

 

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