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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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何を隠そう、この僕が〝都市の勇者〟だ

 

 さ、さすがの私も何事かとソファから立ち上がってしまいましたのッ。


 勢いそのままに、お二人のすぐ後ろにまで移動いたします。


 ちょうどミントさんが腕を組みながらドドンとシロンさんの目の前に立ったところでございました。


 両者睨み合ったまま動く気配がございます。


 身長差のためにミントさんが少し上を見上げる形になっておりますが、全く怯む様子を見せません。


 膠着状態を見かねられたのか、スピカさんがわたわたとしながらも口を開きなさいます。



「えーっと、出ていってくれってどういうことかなっ!? そりゃあ私たちもだいぶお世話になっちゃってるからお邪魔だってのは分かってるけどさ。でも、今すぐだなんてのはさすがに急すぎるかなって」


 スピカさんのおっしゃるとおりですの。


 いくら私たちが魔法の収納鞄に全てポイポイするだけで身支度を済ませられるご気軽乙女とはいえ、心の準備やらお財布事情やら、簡単に出発できるような状態ではないのでございますっ。


 そもそも、こんな冷淡な目をなさるシロンさんは初めてですの。


 まるで自分以外の全てを見下しているかのような……そんな冷徹さのある目付きなのです。


 いつもの優男スマイルのカケラも感じられず、言い表しようのない恐れさえ抱いてしまうのでございます……ッ!



「フン。別に今になって堪忍袋の緒が切れたってわけでもなさそうだけど。いわゆるネコ被り(・・・・)が終わっただけかしら」


 心底嫌味ったらしい顔で、ミントさんが挑発の言葉を浴びせなさいます。


 小馬鹿にする態度を取らせたら彼女の右に出る者はいないとさえ思っておりますけれども。


 しかしながら、そんな口撃(・・)をもろともせず、対するシロンさんもまた軽蔑に満ち溢れた目で返答しなさいましたの。



「ははは、僕は至って冷静だよ。むしろ今までの宿泊代を請求しないだけ、有情だと思ってほしいくらいさ」


「どーせ金なんて余り余ってんでしょ? こんなバカデカい屋敷とクソ広い庭を持っておいてよく言うわよ。案外、身内の遺産と近隣住民からの寄付金だけで生計成り立ってんじゃないの?」


「フン。卑しいのは種族だけにしてくれたまえ」


「ほーん。御多分に洩れず神聖都市の住人ってわけね。アンタも」


 湧き出でる怒りを噛み殺したのか、あくまで言葉としてはスマートに返しておりましたが、握られたその拳はわなわなと震えておりましたの。


 怒る理由も分かりますの。


 卑しいのは種族だけにって、トンデモない差別的な発言ですもの。


 そんな汚い言葉をお吐きなさるだなんて、シロンさんって……ッ!


 私は信じたくはありませんが、まさかこちらがシロンさんの本性だってことなんですの……!?



「シロンくん。ミントさんに謝って。言っていいコトと悪いコトがあるよ」


「何故だい姉さん。彼女はアナタの奴隷なはずだ。相応に卑しい身分なんだろう?」


「ミントさんは私の友達だよ。それ以外の何者でもない!」


 スピカさんはキリッとしたお顔でシロンさんに堂々と言い返しなさいました。


 迷いのない、とっても芯のあるお声でしたの。


 私もスピカさんに完全に同意いたしますの。

 ミントさんは私たちのお友達です。


 お友達を蔑まれて怒らないわけがないではありませんか。



「…………まぁいい。今日限りで出ていってもらうことに変わりはないからね。6日後の催事を楽しみにしているよ」


「6日後……? ハッ!? まさかッ!?」


「そう。何を隠そう、この僕が〝都市の勇者〟だ。僕がこの手で魔王を討伐して、世界を真の平和に導いてあげるんだ」


「「ッ!?」」


 なんとビックリ仰天の事実でしたの。


 シロンさんが都市の勇者ですってぇ!?

 まさか先代勇者の血筋だから選ばれましたの!?


 それとも志願か推薦か、はたまた街の若者を集めて一度に競わせて、最後まで勝ち残った者に勇者の称号を与えてみたとか!?


 命名の経緯はどのようなモノか想像もできませんが、彼も満更でもないドヤ顔をしているあたり、都市の勇者と呼ばれることに誇りを持っていらっしゃるご様子でしたこ。


 正直、厄介だと思ってしまいました。


 自身が正義側だと認識している方ほど、人は物事の善悪を区別できなくなってしまうといいますか、傲慢になってしまいがちだといいますか……!


 私も己を戒めるために常に意識していることがあるのでございます。


 私は聖女だから尊くて偉いのではないのです。


 人々から尊くて偉い聖女として認めていただくために、日々絶えず努力して、日々慈愛を振り撒こうとしているんですの。


 たまーにサボったりするのは愛嬌ですのっ。



政敵(ライバル)の姉さんにこれ以上手の内を晒すことはできないからね。日暮れまでに荷物をまとめて出ていってほしい。話は以上だ」


「そんなっ」


「猶予があるだけマシだろう? それじゃ」


 振り返りもせず、シロンさんは歩き去っていってしまいましたの。


 乙女三人、ポツンと取り残されてしまいます。

 これから私たち、どうすればいいんですの!?


 さすがに6日間の連続野宿は身体がバッキバキになってしまう気がしておりましてよ!?


 ただでさえ街中ではテントを張れませんのにぃ……ッ!!

 

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