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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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言いたいことがあんならハッキリ言いなさいよ

 

 それから私たちはタリアスター邸に戻って、三人で思い付く限りの作戦を練り練りいたしました。


 もちろん分からないことも多い状況ですゆえ、聖女vs聖女の勝負となるならきっとこんなふう、勇者vs勇者の勝負をするならきっとアレ、というような感じで、ホントに各々が考え得る内容を片っ端から挙げ合ったのでございます。


 さすがに擦り合わせバッチリとまでは言えませんが、何もせずにいるというのもソワソワしてしまいますからね。


 思考すること以外に私にできることといえば、当日までに体調を崩さないように、よく食べてよく寝てよく遊んで、精神と健康を維持することくらいでしょうか。


 同じく勝負に参加されるスピカさんのほうも身体が鈍らないように、筋トレをしたりミントさんと剣技のお稽古をしたりして、そうして……少しずつ時は流れていきましたの。



 ずっと気を張っていても疲れてしまいます。


 三日も経てば少しは落ち着きましたけれども。


 事件が起こったのは、イザベラさんの教会に乗り込んでから数えて四日ほどが経った日のことでございました……!



 今朝はミントさんも街の見回りには赴かなかったのか、私たちの拠点である客間にて、珍しく三人でごろごろとくつろいでおりましたの。


 すると、何の脈絡もなくコンコン、と。


 出入り口の扉がノックされたのでございます。



「はーい、今出まーす」


 私とミントさんはソファベッドにだらしなくぐで〜んと寝そべっておりましたゆえ、応対はスピカさんがしてくださるようです。


 立ち上がりざまにまるで不出来な嫁に悩む姑さんのような目で私たちのことを見ては、わりと大きめな溜め息をお吐きになられましたが、てへぺろりと茶目っ気を見せて誤魔化しておきましたの。


 せめてもと私も身体だけは起こしておきます。


 こんな引き締まりのない姿を他の方に見られては聖女の面目が立ちませんからね。

 

 けれども……ふぅむ。

 ノックしたのはどなたなのでしょうか。


 朝ご飯はつい先ほどに眠い目を擦りながらもいただきましたから、その件でお呼ばれすることはありませんし、もちろんのことお昼ご飯の時間にはまだだいぶ早いタイミングでしょうし……。


 そもそも私たちのお部屋を直接訪ねてくる方など、お世話になっているタリアスター邸の奥様か、はたまたそのご子息であるシロンさんか……。


 答えを言いますと、後者のほうでしたの。



「あれ、どうしたの? シロンくん」


「……やぁ、スピカ姉さん」


 自ら出向いて扉を開いたスピカさんに対して、どこか後ろめたいような雰囲気を醸したシロンさんが、ドアの向こう側から恐る恐るこんにちはなさったのでございます。


 どことなく彼の目が泳いでいる……とまでは言いませんが、どうしてか最低限の挨拶はしてくれても、私たち三人の誰とも目を合わせようとはなさいません。


 何やら怪しげな雰囲気ですけれどもッ。

 私のアホ毛センサーがビリリと反応しております。


 お二人のやりとりにしかと耳を傾けておきます。



「……えっと、さ。すっごい言いにくいことなんだけど」


「だからどしたのってば。言い淀むなんてシロンくんらしくないじゃん」


 どうやらシロンさんはトンデモなく歯切れが悪そうな喋り方をしていらっしゃるのです。


 いったいぜんたいどうなさいましたの?


 遠目から見ている私だけでなく、終いには目の前で応対なさっているスピカさんまでもが小首を傾げてしまう始末。


 どこか淀んだ空気の流れ始めた客間に……。


 一閃の切り込みを入れたのは、なななんとっ。



「ッたく男らしくないわね。言いたいことがあんならハッキリ言いなさいよ。そんでもって猫被るのもお互い終わりにしましょ。少なくとも、アタシは気付いてるから」


「「ミントさんっ!?」」


 ソファに座っていたミントさんでございましたの。


 腕を組んで見るからに眉を顰めていらっしゃいます。


 何やらやっぱり穏やかな空気ではありません。


 シロンさんや奥様の前ではほとんど口を開かない謙虚かつ無口なキャラを演じていらっしゃったはずですのに、今日はやたらと鋭い口調で即座に割り込んできたのでございます。


 彼女の魔族の第六感がビビビと反応しなさったのかもしれません。初っ端からピリピリとした空気を纏っていらっしゃるんですもの……!


 スタッと立ち上がっては、ゆっくりと出入り口のほうに向かわれます。


 小柄な彼女がとっても大きく見えるほど、それはそれは勇ましげなお背中でしたの。



「あの、ミントさん? 猫を被るってどういうことですの?」


「アンタもこんなヤツに騙されてるようじゃまだまだってコトよ。最初からどー見たって胡散臭さの塊みたいなヤツだったじゃないの。今になって本性を表す気になったってことは、さては聖女対決のコトと関係があるってコトでしょ」


「…………へぇ。ただの奴隷ではないらしい」


「ええ。おあいにくさま」


 お二人の間にバチバチと火花が燃えているように錯覚してしまいましたの。


 ミントさんの目には明確な敵視の色が、シロンさんのほうは……ふぅむッ!?


 侮蔑を含んだ、何ともイヤぁな淀み色!?

 大きく深呼吸をなさいます。そして。



「であれば姉さん。担当直入に言わせてもらうよ。姉さんたちには今日限りでこの屋敷から出ていって(・・・・・)もらいたい(・・・・・)


「えっ。出ていって――って、へェっ!?」


「ふぅむぅッ!?」


「フン。なるほどね。そうきたか」


 いやいや待ってくださいましミントさんっ!?


 少なくとも私とスピカさんは今の状況をこれっぽっちも理解していないと思いますけれどもぉッ!?

 

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