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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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真面目よ。トンデモなく大真面目


 先ほどの苛立ちをまだ身体が覚えていたのか、しばらくの間はついついプンスカ肩を怒らせながら歩いてしまいましたの。


 けれども淑女として見栄えがよろしくないことに後々に気が付いてしまって、シュンと一人反省して。


 気合いを入れ直すためにもぺちりと頬を軽く叩いてから、先を歩くお二人に黙々と着いていっていたのでございます。


 そうして、ただいまはタリアスター邸宅に戻る最中ですの。


 今日はもう早めに帰って、三人で作戦を練っておこうかというお話になりましたゆえ。


 方向音痴の私が前を歩いてしまってはまっすぐ帰れませんし、何よりすぐに寄り道してしまいます。


 結構な日数をタリアスター邸宅で過ごさせていただいているかと思いますが、いまだにセレブ街の一割も覚えられておりませんの。


 私、ホントにダメな乙女ですの……っ。



「つーか、よ。ザコ聖女」


「ふぅむ? な、なんですのっ」


「さっきのアンタ、あの修道女相手にトンデモなく売り言葉に買い言葉みたいな感じだったけどさ」


「ぎくっ」


 と、ここで、前を歩くミントさんがチラリと振り返りなさって、少しだけスピードを緩めて私の横に並んでくださいました。


 この口振りからの感じですと、いつもであればニヤニヤとからかってくるのが定石ですけれども。


 今はどうしてか、珍しくとても真剣そうなご表情をなさっておりましたの。どことなく、私のことを心配してくださっているようにも見えてしまいます。



「アンタ、ぶっちゃけ勝算あるわけ? アイツってこの都市のエリートなんでしょ? それもずっとスゴい感じの」


「ええ。そう伺っておりますの。私は治癒に特化した修道女ですが、彼女はそれ以外にも結界魔法やら浄化魔法やら、ありとあらゆる聖魔法に長けているとかいないとか……」


「ほーん。やっぱりヤッバいヤツじゃないの。言っとくけど、さすがのアタシでも魔法の特訓はできないわよ。異能ならともかく」


 わ、私だって数日程度の付け焼き刃でどうにかなるとは思っておりませんでしてよっ。


 孤児だった幼き頃に保護されてからずっと、私も修行という名のお祈り活動に付き合わされてきたから分かっておりますの。


 毎日延々と治癒魔法の特訓をして……。


 実際に発動できた日のことは今でもつぶさに覚えているくらいですもの。


 それからも必死こいて精度を高めてまいりましたし……!


 その日々があったから、こうして治癒魔法を自然に行使できているのでございます。


 ゆえに、経験や才能、そして環境による差というのはどうしても生まれてしまうのも分かっております。


 今更それらについてをブーブー言ったところで何も始まらないといいますかぁ……!


 勝算が全くないわけでもないのですぅッ!

 声に出すと情けなくて恥ずかしいんですけれどもぉ!


 ……そもそも、私は特別な(・・・)修道女なんですの。


 といいますのも、この世界で唯一、女神様から直接加護を授かっている聖女当人なのですから。


 普通の方々に比べればずっと魔法操作能力にバフが掛かっている状態と言っても過言ではありません。


 ただの修道女(わたくし)では太刀打ちできなかったかもしれませんが、今の聖女(わたくし)ならきっと大丈夫だと思いたいんですのッ!



「ま、アンタがやる気ならアタシは止めないけど。ついでに一言言わせてもらえるんなら、逃げるなら今のうちってことくらいかしらね。幸い、勝負は10日後なんでしょ? ほら、ちょうどいいタイミングじゃない」


「ふぅむ……え、あ、まさかミントさんッ!?」


 逃げるならって、もしかしなくともソレ、この数日の間に都市を出発して、一足お先に魔王城に向かってしまおうってお話ではありませんわよね!?


 さすがに街中で大声はあげられませんゆえ、視線で訴えかけてさしあげましたところ。



「そうよ。なんだ分かってるじゃないの。トンズラ決め込んじゃえばいいだけの話じゃない。別に勝負なんて知ったこっちゃないんだし。

アイツらが後から攻めてこようがこまいが、コッチが先に魔王城に到着しちゃえば関係ないのよ。こう見えてアタシ、逃げ足には自信あんのよねー。〝転移の異能〟があるからなんだけど」


「んもうっ。少しは真面目に考えてくださっても――」



 よろしいのではありませんか、と言い切る前に。



「――真面目よ。トンデモなく大真面目」



 ふと、ミントさんが立ち止まりなさいましたの。


 何事かと空気をお読みなさったのか、前方のスピカさんも同じく足を止めてくださいます。


 深く被られたフードの内側に、とても真剣そうな赤の瞳がございましたの。



「アタシはね。アンタらの肩を持つって決めた以上、今ここで聖女と勇者を辞めてもらっちゃ困るのよ。無事に魔王城まで辿り着いてもらう必要があるの。そのためなら多少のカッコ悪さなんてどーでもイイわけよ」


「ミントさん……」


「ま、フッツーに難なく勝ってくれるってんならアタシも何も言わないけどね。けど、相手方の手の内が分からないってのは、それはそれで厄介だと思うわよ」


「確かにそれはおっしゃるとおりですのー……」


 私たち二人もそれなりに有名人ですゆえ、得意不得意の情報も出回ってしまっているかもしれませんし、それこそ対策を練られてしまっている可能性だってはなくはないのです。


 そもそも、まだ何で競うかも判明しておりませんからね……圧倒的に不利なコトに変わりはないのでございますぅ。


 ふぅむ。私、やっぱり浅はかだったでしょうか。


 もう少しばかり冷静に出方を伺ってから、キチンと内容を精査してから勝負するか否かを決定していたほうが……っ。


 後悔は先には立ちませんけれども。



「リリアちゃんもミントさんもっ。詳しい話は帰ってから詰めていこうよっ。悩んだところで分かんないことは分かんないんだからさっ」


「スピカさぁん……」


 スタタと駆け寄ってきてくださったスピカさんに肩をトントンと慰められてしまいましたの。


 もちろん戦うからには勝たねばならないのは間違いないのですが、ミントさんのおっしゃるとおり、最悪の事態を回避するための行動も、選択肢に含めておいたほうがよろしいかもしれませんわね……。


 私たちに失敗は許されないのでございます。


 ホント、困っちゃいましてよ……っ。



――――――

――――


――


 

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