表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

317/349

ホンモノの強さってヤツを見せつけてさしあげましてよッ!


 私の憤りはまだ終わりではありませんのッ。



「それにッ! 都市の勇者(・・・・・)って何なんでしてよ、まったくもう!」


 勇者の称号はスピカさんただお一人にだけ与えられたモノのはずですのっ!


 勝手に名乗ってよいものではございません。


 スピカさんはポッと出の私なんかとはちがって、由緒正しきお家のお生まれなのです。


 ゆえに血筋の保証はもちろんのこと、心の強さや身体能力などもまったくもって申し分ないと断言できますの。


 それを都市(とし)勇者(ユウシャ)だか(とり)厩舎(キュウシャ)だか存じ上げませんが、身の程知らずも大概にしてほしいですわね。


 さすがの私もご立腹ですの。

 聖女の顔も三度まで、でしてよッ。



「こちら側の勇者は、じきに分かります。今はまだお答えすることはできません」


 イザベラさんが不敵に笑いましたの。


 そのまま嘲るような目線を私とスピカさんの両方に送ってから今日一番にふてぶてしいご態度で……!



「本日より10日後、私の〝討伐の依頼書と〟アナタ方の〝延長の嘆願書〟を賭けて、勝負をいたしましょう」


 妙なことを宣いなさったのでございます……ッ!



「勝負……?」


 言っていることをイマイチ理解できない私の代わりに、スピカさんがボソリと聞き返してくださいましたの。



「ええ。勝ったほうが相手の書類を得られる――つまりは相手側の使命を放棄させることができる、というのはいかがでしょう?」


「「……ほうき……放棄……はぁぁッ!?」」


 ぴったりシンクロしてしまいましたの。


 スピカさんと顔を見合わせて、パチクリとまばたきをして、驚声をあげてしまいます。


 正直、トンデモなく困った内容だと思いますの。


 前提を先に定義しておければと思いますが、別に私たちがこの勝負とやらを受ける必要はないと思ってはおります。


 私たちの目的である休戦協定の延長は、いわば平和を望む全世界共通のモノなのですから、お国を超えて期待されているモノなのでございます。


 一方のあの〝魔王討伐の依頼書〟は、あくまで神聖都市で制定されたモノでしかないはずですの。


 公的な効力を持つ文書である可能性は高いのですが、そもそもの規模と効力が異なるのですっ。


 かといって見過ごすわけにもまいりません。


 このままイザベラさんを放っておけば本気で依頼書の内容を遂行してしまいそうですし、北に向かう最中の彼女の振る舞いや言動が火種となって、一足お先に魔王領との全面戦争に発展しかねない危うさも孕んでいると思うのです。


 早いモノ勝ちって選択肢もダメですわよね。


 私たちが先に到着できれば和平の交渉を進められましょうが、逆に後になってしまったときには、感情の昂った双方を止めるほうが圧倒的に大変になってしまうはずですの。



 眉間にシワを寄せる私に気が付いてくださったのか、スタタと駆け寄ってきてはスピカさんに、せっせこと耳打ちをしてくださいます。



「どうしよっか、リリアちゃん」


「どうするもこうするも、あまりに身勝手すぎて心底バカバカしくなってしまいますの。あの目、おそらくイザベラさんは本気みたいですけれども」


「そうだね。っていうかそもそも勅命を勝手に放棄するだなんて、ホントにやっちゃったら極刑もいいところだからね。真っ当に受ける必要なんてないよ」


「ですのですのっ」


 本当ならば今すぐにでもキッパリと突き返してさしあげたいのですけれども。


 先ほど懸念としてあげた暴走が怖いんですの。


 危険分子の芽は早めに摘み取っておかねばならないといいますか。


 後々の厄介事項になりそうな気がムンムンとしているのでございます。



 ……私の訝しむ視線を、畏怖と捉えてしまわれたのでございましょうか。


 イザベラさんが更に勝ち誇ったような顔で勝手に喋り始めなさいましたの。



「無論、アナタがこの私に勝てないことは目に見えていますから、せめてもの慈悲で二番勝負にしてさしあげますよ。

そちらのエルスピカ・パールスター様も、是非に参戦していただきますよう」


「二対一ってイイってコト? それとも正々堂々な決闘形式でもやるつもり?」


「別に前者でもよろしいですが、アナタ方の印象がよろしくないでしょうね。聖女と聖女同士の対決、そして勇者と勇者同士の対決。そちらのほうがずっと見ものでしょう?」


「んまっ。随分と余裕ですことっ」


 世の中的には三番勝負をして先に二勝したほうが勝ち、などというルールが一般的なのでしょうが、今回の場合は勇者と聖女でワンセットですからね。


 こちらにはミントさんがおりますが、あちらは三人目までは出せないのかもしれません。


 何を競うのかはしりませんが、どちらにせよ私は負けるつもりはありませんし、スピカさんが勝てないような人物がポンポンと現れるとも思えませんの。


 別に己の有能さを誇るのは構いませんが、それで他者を下げるのは違いますわよね。


 そろそろ鼻をへし折ってさしあげたほうがイザベラさんのためにもなるかと思います。


 偽物にはないホンモノの強さってヤツを見せつけてさしあげましてよッ!


 私とスピカさんの二人で、ですのッ!



「ふっふんっ。10日後とおっしゃいましたわねッ!? 首を洗って待ってなさいましッ!」


 ビシッと決めポーズをしながら、イザベラさんに宣誓してさしあげます。



「近日中に勝負の内容をお伝えいたします。今日のところはお引き取り願えますか」


「い、言われなくてもですのっ」


 本当は更にあっかんべーをしてさしあげたかったのですが、他の修道女様方の目もありましたゆえ、こちらはギリギリのところで踏みとどまりましたの。


 最後にキッと睨みを返したのち、シュバっと踵を返して教会からサヨナラいたします。


 これからどんな勝負をふっかけられたとしても、返り討ちにしてさしあげましてよ、まったくもう!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ