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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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まったく片腹痛いですの、ぷっぷぷふーですの


「私、知っておりましてよっ。アナタが私のことを魔族だと吹聴なさっていらっしゃるのでしょう!?」


「……何のことだか」


 むむ。腹の立つ不適な笑みですことっ。

 いつも人を小馬鹿にした態度をとりますの。



「しらばっくれても無駄ですのッ! しかぁし残念でしたわねぇッ! ご覧の通り私はヒト族ですもの!」


 その場でくるんと回って、私のヒト族たる理由を、つまりはこの美貌を見せつけてさしあげます。


 キュッと引き締まった――いえ、正確にはもう少し明確に引き締まってほしいウェストをクイッと強調しつつ、自慢のお胸をほんのりと寄せながら、ぱっちりとウィンクを送るのです。


 私必殺の悩殺決めポーズですのっ!


 どうぞ側に寄って、じっくりとご観察いただいたって構いませんでしてよ。


 上から見ても後ろから見ても下から見ても!


 魔族特有の角や羽や尻尾の類いは生えておりませんでしょう!?


 いつもの修道女ベールを被っているせいで、自慢の薄金髪をアピールできないのは非常に残念でありますが、私はこうして逃げも隠れもいたしませんからね。


 もしかしたら赤い瞳のことをとやかく言ってくるかもしれませんが、だから何だと突き返してさしあげるだけなのでございますッ!


 私に掘り下げるべき点はないのです。

 フンスと鼻息荒く胸を張っておきます。



「……なるほど。うまく誤魔化しているようですが、実はそのヒト族の姿こそ、アナタの仮初めの姿なのではありませんか? 例えば醜い姿を世間に晒したくないがあまり、認知阻害の魔法で隠蔽しているだけ、とか」


「はっはーんッ! 的外れすぎてバッカみたいですのっ! まるでお話にもなりませんことッ! 偏見と侮蔑によって頭がカッチンコチンに凝り固まっちゃってるんじゃありませんのー!?」


 誰が好きこのんでこのボディを隠したがるとおっしゃるのですっ。


 このワガママボディを、ですのっ。


 はっはーん。さてはそのスレンダーな体型を維持することに必死で、充分な栄養が足りていないのではありませんでしてぇ!?


 聖職者に推奨される菜食ばかりでは、脳にまでは栄養が行き届きませんよーだ、ですのっ!


 彼女に向けてあっかんべーをいたします。


 私の大人気ない挑発に、イザベラさんは明らかに不快の色を表に出しなさいましたの。


 ふっふっふっ。

 効いてますの効いてますのっ。



「……別に、嘘か真かは付与解除の聖魔法を掛けてみれば分かることです。しばらくじっとしていてください。すぐに終わりますから」


「仮に嫌だとお伝えした場合には?」


「それをそのまま是の意と捉えるだけですね」


「ふっふんっ。ではあればど〜ぞお好きに、ですのっ!」


 重ね重ね申し上げますが、私にはやましいことなんて一つもないですからね。


 正真正銘、私はヒト族なのですから!


 私のドヤ返答を聞き届けたイザベラさんは静かに目を閉じると、天に片手を掲げて祝詞をお呟き始めなさいましたの。


 まるで呼吸をするくらいに自然に、そして流暢に長祝詞を唱えていらっしゃいました。


 悔しいですが、一端の聖職者である私には分かってしまいます。こちらはかなり高度かつ丁寧な過程を踏んだ聖魔法のようですの。


 耳に届いた単語単語を繋ぎ合わせて解読を試みるに、おそらくは心の清廉潔白さを主軸に女神様に問いかけて、被対象者へのバフの解除を施していただくような……?


 私はあんまり唱えたことのないタイプでしたの。全てゴリ押しで何とかしてまいりましたゆえにッ!


 きっと、ある意味では結界魔法の逆張りみたいなモノなのでございましょう。


 阻害や隠蔽を是としない、まっすぐなイザベラさんらしい聖魔法であるとも言えますの。



「ふぅむ。どうやら発動したようですわね」


 しばらく待っておりますと、私の周りに白いモヤモヤが現れて、やがては身体をすっぽりと覆い包んでしまいました。


 やはり女神様由来の魔法ではあるのか、不快な心地ではありません。


 せいぜい行水で汚れを落としているような淡い感覚です。


 解除魔法としては優秀なモノなのでしょう。


 きっと私に掛かった隠蔽バフをこれでもかと言わんばかりに解除したいのでしょうが、おあいにくっ。


 そもそも隠蔽に頼っておりませんゆえにっ!


 仮に付与されているとすれば〝女神様のご加護〟くらいなのでしょうが、そちらを女神様由来の聖魔法で解除できるはずもなくっ。



 結論、やっぱり特に何も起こりませんでしたの。



「で? 何か分かりまして? そして私が魔族だという証拠は見つけられまして? まったく片腹痛いですの、ぷっぷぷふーですの」


「……バカな。彼は確かに」


「彼? 彼って誰のことですの?」


「……クッ。アナタには関係ないことです。お黙りなさい」


 あらまぁ。終いには開き直っちゃいましたの。


  人様にあらぬ疑いをかけておきながら、自分の非を認めないのはカッコ悪いんでしてよ?


 聖職者たるもの、常に心を広く身構えておかねばならないのですからねっ。


 どうぞ私を見習ってくださいましっ。



「……では、お連れのお二人はどうでしょうね」


「ふぅむッ!?」


 そそそそれはそれで困っちゃいますのッ!

 ミントさんは間違いなく魔族なんですゆえにッ!


 って、こらダメですのッ!


 私が返答する前に、勝手に魔法を再形成し始めないでくださいましィッ!


 さすがに完全にマナー違反なんでしてよぉッ!?

 

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