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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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イイ人が善い人だとは限らない

 



 どのくらい眠っていたのでございましょう。



 いえ、もしかしたら……。


 私は今も眠り呆けているのかもしれません。



 と言いますのも、わりと頭は回っているかと思いますのに、一方の身体のほうは少しも動いてくださらないのでございます。


 この至極中途半端で奇妙奇天烈な感覚は、私がまだ夢の中にいることを切に訴えようとしているのではありませんでしょうか。


 とにもかくにもチカラを振り絞って、目を開けてみましたところ。



「はぇ……?」


 いやぁー、驚いちゃいましたわね。


 果ての見えない真っ白な空間が広がっていたんですもの。



「何なんですの、この空間は……?」


 あら? 声は出せましたの。

 けれどもやっぱり身体は動きません。


 せめて首だけでも動かせたら、もう少しあたりを観察できるんですけれども……。


 と、小首を傾げようにもそうはできない、ちょうどそんなときでございましたの。



「――リリアーナさん」


「はぇっ。そのお声は女神様っ!?」



 唐突に女神様のお声が聞こえてきたのでございます。


 私の後ろ側から……なのでしょうか。


 けれどもこの空間の真上からとも、更に言えば空気全体が震えて音を発していたとも思えるような、なんとも奇妙な聞こえ方でしたの。



「今日は珍しくお見えになりませんでしたけれども、何かありましたの?」


 とりあえず気にしたところで何かが変わるとも思えませんし、聞きたいことを訊くだけですの。


 数秒の間の後、女神様は静かに答えてくださいましたの。



「…………久しぶりに観光(・・)をば、と」


「観光?」


 私の監視を放っておいて観光ですと?

 こんなの初めてですの。


 女神様もミーハーなところがあるんですのね。甘味処巡りでもしてきたんでしょうか。



「……この神聖都市も、しばらく見ないうちに大きく様変わりをしておりました」


「おおよそ50年ぶりの観光でして?」


「ええ。そうなりますね」


 女神様も基本的にはお空の上で見守ることしかなさいませんものね。地上に降りてくるとしてもそのときの聖女の近くなはずですの。


 先代様の旅がどこから始まったのかは分かりませんが、この街のご出身である可能性が高いですし、現に今、この街に住んでいらっしゃいますし。


 女神様も来たことがあるのでございましょう。



「何か面白いモノはありまして? 私も元気になったら見に行きたいですものっ」


 ここ最近はスピカさんもミントさんもお忙しいですから、お暇なタイミングを見つけて一緒に遊びに行きたいですの。



「リリアーナさんにとって面白いモノかどうかは定かではありませんが、かつてに比べたら明らかに邪な心を持つ者が増えましたね。

……私への信仰心を無くした者に、いったい何の祝福を授ければよろしいのか」


「女神様にも悩むことがあるんですの?」


「ええ。女神ですから」


「女神様って何なんですのー……?」


 こうして普通に接せておりますから、間違いなくこの世に存在していらっしゃいますでしょうし、ヒト族と――しいて言うなら私と瓜二つの姿をしていらっしゃるのに、決してヒト族ではありませんし……。


 女神様の存在を疑う聖女がどれほど罪深いモノかは知りませんが、私自身、わりとドライめな女神教の信徒ですからねぇ。


 せいぜい〝ほわぁーすっごいキレいな美人さんですのー。はぇっ!? 私の治癒魔法を強化してくれるんですの? あっりがてぇですのーっ!〟みたいな経緯ですの。


 敬愛こそしておりますが崇拝まではしておりませんもの。


 それゆえに、ある意味こうして対等に接することができているのでございます。

 


「リリアーナさん。一つだけ忠告をしておきましょうか。貴女にとってのイイ人が善い人だとは限らないのですよ」


「いいひとがいいひとでは、ない? ですの?」


「貴女にも貴女の使命と願望があるように、その人にはその人なりの目的があるのです。いいように付け込まれ利用されることは、私の本意ではありませんから」


「ふぅむぅ……よく分かりませんの……」


 少なくとも私の身近にいてくださるスピカさんは善意の塊みたいなお人ですし、ミントさんも最近は少しずつ心を開いてくださる良き姐御さんみたいなお人ですし。


 それにお家に無償で泊めてくださるシロンさんだってイケメン優男の鑑みたいな殿方だと思いますの……。


 それこそ私が初めて敵だと判断したのは、〝反・魔王派〟のエルフ族のアコナさんくらいで……。


 基本的に私の周りには素晴らしい方々がたくさんいらっしゃると思うのです。



「さぁ、そろそろ目覚めの時間です。私がいないからといってハメを外したりしないように。次の〝真夜の日〟はしっかりと監視を行いますので」


「ふぅむぅ。ご心配なさらずとも、きっと体調絶不調のままで動けませんでしてよ……」



 言われてみると、何だかまーた瞼が重くなってきましたわね……。


 ふわぁぁ……ぁふ……。


 さすがにまだ体感では朝にはなっていないでしょうから、夕方か、夜か……スピカさんたち帰ってきておりますでしょうか……。


 ああ、急に意識が……っ。



――――――

――――


――


 

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