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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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私の来歴、シロンさんにお話ししたことがありましたっけ?


 ふぅむ? 今、ほんの一瞬。


 シロンさんのお顔に影が差したような気がいたしましたが気のせいでしょうか。


 私たちには見せない素のご表情が見え隠れしたような……?


 いえ、やっぱり気のせいだと思いますのっ。


 今もいつもと変わらぬ優男オーラを放ってくださっておりますしっ。ドアに寄りかかっているだけで華になる超絶イケメンの立ち姿たるや……!


 腕を抱えて静かに考え込む姿なんて、トンデモなく様になっていらっしゃいますの。


 それこそ中央街の通り道 を歩いていたら十人に八人は振り返るのではございませんでしょうか。


 そんな彼を今は私一人が独り占めしているとは……考えてみればすっごい状況ですわよね。


 むっふっふっ。幸いにも女神様の監視もないのですし、もしかしてコレは、願ってもない大チャンスなのではっ!?


 自然と尻尾が揺れてしまうのでございます。


 ……この角と尻尾と背中の羽さえなければ、すぐにでも猛アプローチを仕掛けておりましたのに。


 蔑まれてきた過去を思い返して、今一度前に踏み出しにくいのでございます……っ。



「あの、えっと、シロンさん? 幻滅……してしまいまして?」


「……いくらリリアーナさんが孤児の出身だったとはいえ、出自と血筋については多角的に調べが進められていたはず……だというのに、公式に全くと言っていいほど情報が出回っていないのは……なるほど……どの派閥の差し金だろうか……」


 ふぅむ? 反応が返ってきませんの。


 何やらボソボソと呟いていらっしゃるようですが、ちょっと私からは距離が離れているのと、元よりかなりの小声なせいで、この耳には断片的にしか届いてきませんでした。


 なんとなーく出自やら血筋やらの単語が聞こえてまいりましたゆえ、どうやら私についてを考えていらっしゃるようですけれども。


 今は完全にご自分だけの世界にご出向なさっているご様子なのです。


 かなり蚊帳の外な気分ですわね。


 でも、珍しいこともあるものですの。


 いつもなら即座に視線に気が付いて、微笑みながら目を合わせてくださいますのに。


 とりあえず再度にアピールしてみます。



「ふぅむぅー? もしもーしシロンさぁん?」


「……ん? ああ、すみません。少々考え事をしていたもので。なんでしょう?」


 ようやく気が付いてくださいましたの。

 目の前で尻尾を振ってみた甲斐がありましたわね。


 彼に問いただしたいことがあるのでございます。


 私から生まれ出でた疑問。それは。



「私の来歴、シロンさんにお話ししたことがありましたっけ?」


「ああ、確かに直接はありませんでしたが、僕やスピカ姉さんと同じくらい、リリアーナさんもこの街では注目の的ですからね。大抵のエピソードは出回っているような状態かと」


「ふぅむ。モテる女はツラいってことですわね」


「ははは。そういうことです」


 プライベートだかプライバシーだかは忘れましたけれども。


 ただでさえウワサというものは常に余計な尾ひれを付けて大きくなっていくものですゆえに、私のような外様の修道女は、会ったこともない正流の方々から陰でやいのやいの言われているはずですの。


 ありとあらゆる嫌味な方々が発信源となって、あることないこと全てが世の中に出回って、徐々に信憑性の低い情報が淘汰されていって、限りなく真実に近しい創作話だけが残る……みたいな?


 王都にいた頃のエピソードが変に捻じ曲がりながら、この遠き女神教の聖地にまで伝わっているのかもしれません。


 ホントにやれやれ、ですわね。


 ただでさえ今日は頭痛が酷いのですから、余計な心労を増やさないでくださいましぃ……。



「……こっほん。とにもかくにも一応は私も世間体を気にしておりますゆえ、この姿についてはどうかご内密にお願いできれば、と。このとおりですのっ!」


 ペコリと頭を下げて懇願いたします。

 ついでに尻尾も力なく垂らしておきます。



 そうしてもう一度、ちら、ちらり。



「もちろんですよ。色々と大変でしょうから」


「あっりがとうございますのーっ。恩に着まくりますのーっ。さっすがはスピカさんの従兄弟さんですの〜っ。人格者の鑑ですのー!」


 ニコリと微笑んでくださいましたの。


 まるで裏表を感じさせない爽やかすぎるお顔には、ついつい私の心もキュンとときめきを覚えてしまいま……ぅっぷ。


 はしゃぎすぎて疲れてしまいましたの。

 目眩と吐き気が同時に襲ってきたのです。


 万全であれば今にも彼に跳び付いてさしあげていたところですが、残念でなりません。


 今なお全身に悪寒が走っているのは心と身体が不安定になっているからでございましょう。



「……体調を崩しているのは本当ですゆえ、この辺で失礼させていただけますとありがたいですの……ぅっぷ」


「ああ。長々とすみませんでしたね。姉さんが帰ってきたらよろしく言っておいていただければ、と。ではどうかお大事に」


「お心遣い痛み入りますの〜……」


 もはや気丈に振る舞うのも限界がありましたゆえ、この手の代わりに尻尾を振って、この部屋から出ていくシロンさんを見送らせていただきましたの。


 ドアが閉じる音が聞こえてきたのとほぼ同時に、私もぱったりとソファに体重を預けます。


 そうして自然と目を閉じてしまいます。



 ゔぁぁー……やっぱり頭痛いですのー……。


 眠るより気絶するほうが早いかもしれませんわねぇ……ゔゔゔぅぅぅぅ……。


 これだから〝真夜の日〟は不便でならないのでございますぅ……うぐぅ。

 

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