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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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今は放っておいていただけますと助かりますの……!


 ……正直に申し上げますと、トンデモなくマズい状況かと思われますの。


 どうしてこんな〝真夜の日〟に限ってイザベラさんにお会いしてしまうのでございましょう?


 私が今、魔族の身体になっていると知れば、どんな攻撃的な態度を取られるか分かったものではありません。

 

 何としてでも誤魔化しておかねばならないのでございます。


 ……ふぅむ。えっと。その。


 まずは触診にて再確認確いたしますの。

 頭の角は見えておりませんわよね……?


 布団を被ったシルエットが変になっていないか今も不安で不安で仕方ありませんけれども。



「こっほん。確かに油断したのは私のミスですの。けれども重ね重ね申し上げますがご心配なく。この程度の風邪など治癒魔法でちょちょいのちょいですもの。

あえて言わせていただけるのであれば、今回は己への戒め(・・)として、進んで自ら自己治癒に励んでいるのでございますっ!」


 布団にくるまりながらビシィッと意思表示いたします。それっぽいことを言って適当に誤魔化しておきますの。


 修練の一環だと理由を付ければ、ストイックなイザベラさんであれば無駄にポジティブに汲み取ってくださるはずです。


 本当はすぐさまに布団を完全に被って無理矢理にお話を切り上げてさしあげてもよろしいのですが、下手に逃げ腰になって弱みを見せれば、その行為が彼女をつけあがらせる一番の理由になってしまうかもしれないのです。


 まずは私自身から話題を逸らしてさしあげること!


 コレが最重要課題だと思うんですのよね!


 今もこうして頭の中がジンジンズキズキと痛んでおりますが、それでも必死に考えます。


 その他にも今の私にできること……っ。



 ……あっ。そうですのっ。



「それはそうと、どうしてタリアスター邸にイザベラさんがいらっしゃるんですの? 幼馴染みみたいなご関係、とは伺ったことがありますけれども」


 イザベラさん自身の話題にすり替えるのです!


 私が風邪を引いたか否かよりもずっと不思議な要素だと思いますもの。



「べ、べつに。アナタに関係はありませんから」


「ふぅむぅ〜ん……?」


 ほーらビンゴですの。

 別に動揺する理由はないと思うのです。


 きっと私に知られて困るようなことをしていらっしゃるにちがいありません。



「むふふ。さては近頃流行りの男女の密会(・・・・・)というヤツですわねっ。清き修道女の身でありながら、イザベラさんったら隅におけないお人ですことっ」


「はぁぁあァッ!? アナタと一緒にしないでくださいます!? 酷く破廉恥で下品な思考回路、やはり聖女の風上にも置けませんねぇ……!」


 顔を真っ赤にして怒っていらっしゃるのを見る限り、満更でもなさそうなのですが、やはり彼女は敬虔な女神教徒さんのようです。


 さすがに手までは出しておりませんでしょうね。


 シロンさんに対して淡い恋心くらいは抱いていらしてもよろしいのではありませんでしょうか。


 そうなると私の恋敵ってコトになりますわねっ!


 私のほうが二手、三手遅れておりますけれども。勝ちは遠くにあるとも理解しております。


 立場的にも物理的にも自由恋愛を禁じられておりますゆえに。



「……私、人一倍に妄想は好きですけれども。そして人の色恋沙汰話だけでご飯も食べられちゃいますけれども。残念ながらこの身はまだまだ清きままなんですの。日頃から女神様のご加護にて護られておりますゆえに」


「女神様の、ご加護……?」


「ええ。強制的に光の貞操帯を嵌められてしまっているのです。それ以外にもふとしたときに裁きの雷を落とされたり、月イチレベルで大お説教会が開かれたり、と……。

修行の身の手前、手を出すのも出されるのも、常に固く封じられているのでございます」


 誇張こそありますが嘘は言っておりません。


 私以外の信徒さんにとっては、女神様とはあくまで信仰の対象で概念的な存在にすぎないのかもしれませんが、一方の私にとっては幼少の頃からずっと付き合いのある……えっと、癖のある節介な美人さんみたいな存在だと思っておりますの。


 基本的に自信過剰で自分のコトが大好きな厄介極まりないお方ですもの。


 それでもって自身と最も容姿が似ているからという理由で私を今代の聖女に任命して、あげくの果てには自由恋愛を禁じるという……!


 わりとヤッベェお人ですの。忖度なしに。


 こんな不敬な思考に耽っていると、普段であれば即座に裁きの雷を落とされてしまうのですが、今日だけは女神様との繋がりが切れてしまっておりますゆえに。


 何を思っても私の自由なのでございますっ!

 股間がピリッとくる心配もありませんっ!


 あー、なんだか怒りと苛立ちに身を任せていたら、頭痛が和らいできましたわねぇッ!


 やっぱり活力って大事なんですのねッ!


 気分的にはこのわずらわしい布団もバッサと取り払って大きく伸びをしておきたかったのですが、やはりお二人にこの姿形(よわみ)を見られてしまうわけにもまいりませんし。



「ともかく、心配してくださるお気持ちは大変ありがたいですの。しかしながら、であればこそ、今は放っておいていただけますと助かりますの……!」


 ぺこりと頭を伏せて誠意を示します。

 そして観察される前に即座に姿勢を正します。


 どうか願わくばそのドアから内側には入ってこないでくださいまし。


 私の顔や頭を近くで見れば見るほど、角のシルエットがより分かりやすくなってしまいますゆえにっ。

 

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