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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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私の中に流れる魔族の血がここぞとばかりに暴れているのでございます……ッ!

 



「――というわけで、今日のリリアちゃんはお留守番ね。ゆっくり養生しててね」


「そ、そうはおっしゃられても、私の治癒魔法がないとお二人ともまた無茶を……」


「バーカ。最初から援助がないって分かってるなら話は別よ。アタシも勇者もなるべく隠密を心掛けておくから。ま、足手まといはすっこんでなさいな。満足に動けないんでしょう?」


「うぅっ。返す言葉もありませんの……っ」



 三人で救出活動を行うと決めてから。

 早くも数日が経過いたしまして。


 その間にも何度か開かれた奴隷市場を無事に阻止してきた私たちでしたの。


 しかしながら、この日(・・・)だけはどうしようもできないのでございます。


 なんと悲運なことでしょう。


 本日もまた奴隷市場の開催予定日だといいますのに、それがちょうど〝真夜の日〟と重なってしまうだなんてぇ……ッ!



「アンタ、見た目だけは本当に魔族のソレよね。ホントにどういう仕組みなのかしら?」


「私にだって分かりませんのぉ……っ」


 ご多分に漏れず私の頭には羊のような巻き角が生えてしまっております。


 お尻の先から伸びた先っぽハート型の尻尾がゆらゆらと揺れて、私の不服さを代弁してくれておりますの。


 私、リリアーナ・プラチナブロンドは今日も今日とて先祖返りをしちゃっているのです!



「身体のほうは大丈夫? リリアちゃん」


「正直、全然大丈夫ではありませんでしてよぉ……」


 どうやら今回は特に症状が重いパターンの日らしく、朝目覚めたときから頭は重いわ身体は怠いわ、目は霞むわ手足は震えるわでもう踏んだり蹴ったりなのでございますっ。


 間違いなく熱も出ておりますの……っ。

 何をせずとも全身がブルブルと震え出すのです。


 もはや平衡感覚さえままならず、立ちあがろうとしても足の先からフラついてしまって、ソファから一歩も動けませんの。


 治癒魔法の効きも悪いのか、朝からウンともスンとも反応がありませんしぃ……っ。


 せめてこの地味ぃな頭痛だけでも和らげられるとありがたかったんですけども……っ!


 ソファに力なく横たわりながら、およよと涙目になって訴えかけます。


 溜め息を吐くことさえシンドいですの。



「あ、そういえば、なんだけど」


「ふぅむぅ……?」


 もうダメですのと目を瞑ってジッと堪えようとしていた最中、ミントさんが唐突に辺りをキョロキョロとし始めなさったのです。


 最初は出発前の最終確認かと思いましたけれども。


 どうやらちょっとちがうようですの。



「今日は女神(アイツ)、降りてこないのね」


「ふぅむ? 女神様のことですの?」


 確かに言われてみれば、珍しくお姿を拝見しておりません。


 いつもなら目が覚めて早々にガミガミと説教が始まっておりますのに。



「街中では眩い後光のせいで目立ってしまうからでしょうか……? けれども女神様のことですの。遠目からしっかりとご監視なさっていらっしゃるはずです。今の私に何かできるわけでもございませんのに」


「口うるさいのがいない分、静かに休めるってことじゃないの。ラッキーって思いなさいよ」


「そういう問題でもないと思いますけれども……」


 ホントのホントに幸運なのであれば、少しの体調不良なんて全く気にならなくて、しっかりと変装を施した上でお二人に同行しておりましたのにーっ。


 一時的に女神様のご加護が効かなくなって、ハイレベルな治癒魔法を展開できなくなっていたとしても、ですのっ。


 いないよりはマシな回復サポート役くらいには役立てたはずなのでございますぅーっ!


 ……うぐぅっ。

 騒ぐと余計に頭に響きますわね……。


 こうなっては仕方がありません。


 今日は無理矢理にでも休養をとって、明日以降に万全に動けるように、回復に努めてさしあげましょうか……。



「こっほん。大変忍びないですけれども、お二人ともくれぐれもお気を付けてくださいまし。少しでも危ないと感じたら一目散に逃げて、そして無事に帰ってきてくださいまし」


「フン。心配しなくたってそうするわよ。ザコ聖女のほうこそ、先祖返り(アンタのソレ)が他の連中にバレないように気を付けときなさい。面倒事はゴメンだからね」


「分かっておりましてよぉ。私だって居候の身とは重々に理解しているんですもの……」


 紳士的で真摯なシロンさんなら見なかったことにしていただけるかもしれませんが、奥様に見つかってしまっては大事(おおごと)になるかもしれませんの。


 お住まいをお借りするようになって分かったのですが、どうやらシロンさんのお母様は熱狂な女神教徒らしいのでございます。


 そしてまた、この街の女神教徒さんはとにかく排他主義かつ選民主義的な思考をお持ちですゆえに。


 基本的には私にもスピカさんにも親切に接してくださっているのですが、ミントさんへのあたり(・・・)だけは強いのでございます。


 ……きっと、魔族だからですの。



「で、ほら。そろそろ時間よ」


「おっけ分かった。それじゃあ行ってくるね」


「どうか、どうかお気を付けくださいましぃ」


 重い腕を振ってお二人をお見送りいたします。


 ミントさんがスピカさんの肩に触れた次の瞬間、私がパチリと瞬きをする間もなく、転移の異能によって跡形もなく姿を消してしまいました。


 一人になって分かる、この静けさと孤独感たるや。

 ああ、人の温もりが恋しいですの……っ。


 寂しさは時間が解決してくださいますでしょうか。


 いつもよりも思考は鈍っておりますのに、身体が無駄に火照っているせいで、すぐには寝れそうにありませんけれども。


 私の中に流れる魔族の血がここぞとばかりに暴れているのでございます……ッ!


 スーパースペシャルゆっくりな動作で、動かぬ身体を無理矢理に起こしてみたところ。


 うぅっ。あ、これダメですの。

 座りながらに立ちくらみしてしまいました。


 まるで頭の中が沸騰しているかのようですの。

 ボケボケになっているのが自分でも分かります。

 

 

祝! 300ページ達成ですってよ!

(*´v`*)

ここまでお付き合いいただきまして

誠にありがとうございますっ!


そろそろリリアちゃんの出自のエピソードとか

ミントさんの秘密とかに触れたいんですよね。


つまりはまだまだ物語は続くってことですの。

この先もどうぞお楽しみくださいまし……ッ!

 

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