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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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むしろ100%の友達善意っ!

 

 気を取り直した私たちは、甘味によって改めて心と身体に癒しを満たしつつ、決意新たにタリアスター邸に戻ったのでございます。


 そうしてゆっくりと身を休めながら夜を迎えましたの。


 ふわぁぁふとあくびをこぼして待っておりますと、外もすっかり真っ暗になってしまった頃合いでしょうか。


 酷く草臥(くたび)れたお顔のミントさんがようやく帰ってきなさいましたの。


 いつものように〝転移の異能〟で部屋の中央に姿を現すや否や、大きな溜め息と共にソファにストンと腰を下ろしなさいます。



「……ハァ。やっぱ反りが合わないわアイツ。悪いヤツじゃないってのはお互い分かってるんだけどさぁ……」


 足を組んで腕も組んで、どう見てもご機嫌ナナメのご様子ですけれども。


 お尻から伸びる尻尾をグワングワンと揺らしていらっしゃるのです。やる瀬のない感じがヒシヒシと伝わってまいります。



「お疲れ様ですの。遅かったですわね。無事に魔族の子たちのお引き取り先は見つかりまして?」


「まぁその辺はなんとかね。上手く匿ってくれると思うわ。古い付き合いだし」


「ちなみにどなたのところに行ってたんですの?」


「………………ナイショよ」


 やたらとお渋りなさいますわねぇ。話してくださったって誰かに漏らすわけではございませんのに。


 よっぽど苦手な方なんでしょうね。

 さては元カレさんとかでしょうか?


 まだ異性か同性かも分かりませんけれども。


 人の色恋沙汰はとっても気になってしまうお年頃なのですが、下手に怒らせてしまって話が拗れてしまうのも面倒ですの。


 ここは脇道に逸れずに、ただドストレートにお尋ねさせていただきましょうか。



「ミントさん。つかぬことお訊きいたしますけれども。もちろんのこと、あの救出作戦が成功したからといって、貴女の目的が完了したわけではないんですのよね?」


「フゥン。何よ。珍しく真面目な顔しちゃってさぁ」


「い、至って真面目だからですのっ!」


 ニヤニヤとした顔で返されてしまいました。

 普段らしからぬ姿を見せてしまったからでしょうか。


 私だっていつでもどこでもおとぼけキャラを演じているとは限りませんでしてよっ。


 今日の出来事は自分なりに真摯に受け止めているつもりなのでございます。


 だからこそ、下手に茶化さずにまっすぐにお尋ねしているんですのっ!


 真剣な眼差しで見つめ返してさしあげます。



「そうね。手伝ってくれたから正直に教えてあげるけど。今日みたいな奴隷取引の情報をあと三件掴んでいるの。少なくともその辺が片付かないと動くつもりはないわね。ああ、先急いでるならほっといてくれてもいいわよ。アンタらの旅の邪魔はしたくないもの」


「ふぅむ。やっぱり、ですの」


「あん?」


 私の相槌に気になる点があったのか、片目でチラ見してきなさいましたの。


 ふっふんっ。当然の反応ですわね。

 あえて引っかかりを残してさしあげたのですから。


 あえてお隣に腰を下ろしてさしあげます。


 私の行動の意図を理解してくださったのか、スピカさんもその反対側に座ってくださいました。


 二人掛けのソファに、三人でぎゅうぎゅうになって腰掛けております。


 ミントさんを挟み込むように、ですのっ。



「こっほんっ。お昼過ぎにスピカさんと話し合ったんですけれども」


「そう。決めたんだ、私たち」


「な、何よ?」


 ただならぬ空気に逃げようとなさいましたが、両側からお手を押さえて立ち上がらせないようにしてさしあげましたの。


 何事かとビクッと肩を揺らしたミントさんに対して、目の奥に炎を(たぎ)らせたスピカさんが熱意のこもる声で宣言なさいますっ。



「えっへへ安心してね。ちゃんと付き合うよ、最後まで。せっかくミントさんが頼ってくれたんだもんね。置いていくわけないじゃないっ」


「んなっ」


「乗りかかった船ですものねっ。それにあんな過酷な現場を見せられて、見て見ぬフリなどできるはずもありませんのっ! 私たちにも最後まで手伝わせてくださいましっ!」


 私も全力で乗っからせていただきましたの。


 ニッコニコの笑顔で迫ってさしあげましたところ、逃げ場を失ったミントさんがドン引き気味に眉を顰め始めましたので、二人して慌ててフォローいたしますっ。



「べ、別に他意はありませんからねっ!?」


「そうだよっ。むしろ100%の友達善意っ!」


「……ハァ。むしろアンタらの腹ん中に一物抱えてたときなんてあるわけぇ?」


 最初こそジトーっと疑り深く睨んできなさいましたが、そのうちにはクスリと微笑みをこぼして、ケラケラと声を上げて笑い始めなさいましたの。


 釣られて私もスピカさんも笑ってしまいます。


 身に纏っていたトゲを振るい落としたかのように、晴々としたお顔でミントさんがお続けなさいます。



「はぁーあ、まったくもう。自分らが相当なお人好しだってこと、後悔したって知らないからね」


 今に始まったことでもありませんゆえっ。


 それに、表し方の違いはあれど、ミントさんだって相当なお人好しさんだと思いますの。


 でないと奴隷解放の活動なんて思い付いたとしても決行にまでは移ろうとは思いませんもの。



「……ま、手伝ってくれるならありがたいわ。でも、アタシのやり方には少なからずリスクがあるってことも十二分に理解してちょうだい。ある意味テロと同じなんだから」


「身バレは厳禁ってことですわよね。何だか影のヒーローみたいでカッコいいですのッ!」


「……ザコ聖女のお気楽さが羨ましいわ」


 ふっふんっ。私はこの三人で行動して、共に秘密を共有できるのが嬉しいのでございますっ。


 仲間外れは悲しいですもんね。かといって一人行動をされてしまうのも寂しいのです。


 私たちの今日の行いは、間違いなく善意による人助けだったと確信しておりますの。


 その心意気さえ忘れなければ後ろめたさや仄暗さなど感じるはずがございません。


 胸を張って治癒魔法を扱えましてよっ!



「それで、お次の決行はいつなんですの?」


「そうねぇ。とりあえずアタシが掴んてる市場開催の日程だと――」




――――――

――――


――


 

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