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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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清く正しい導きのお言葉を告げさせていただきましょうかっ

 

 タリアスター邸に戻る最中のことでした。


 どうしても心が浮かばない私たち二人は、途中で見つけたオシャレなカフェで一息つくことにしたのでございます。


 ……気持ちのリセットも必要ですものね。


 出されたふわ菓子をフォークで小突きながら、スピカさんが憂いたご表情で話しかけてきなさいます。



「……ねぇ、リリアちゃん」


「ふぅむ?」


 既に治癒魔法をかけ終えましたので衣服もお身体もスッキリ爽快になってはおりますが、私のチカラではメンタルまでは癒せませんゆえ。


  私も今はなんだか手が進みませんの。

 何故だか妙に甘ったるく感じてしまいます。


 こんなご馳走、滅多にありませんのに……。



「ミントさんの用事ってあの奴隷救出だったのかな。もう、次の街に移ってもいいのかな」


「どうなさいましたの? 焦りなさって」


「やっぱりそう見えちゃう……?」


「ええ。それはもうガッツリと、ですの」


 そわそわした態度が如実に現れておりますし、心なしかモグモグスピードもいつもよりもお早いですし。


 全体的に落ち着きがないといいますか。


 昨日まであんなにものんびりとした雰囲気を醸していらっしゃいましたのに。

 


「さては先ほどの救出作戦が原因ですわね?」


「……うん。そう、かも」


 やーっぱり。そうだと思いましたわよ。


 遠くで治癒に励んでいた私だってショックを受けてしまったくらいなのです。


 直接その目で惨状をご覧になったスピカさんは、もっとずっとメンタルにダメージを負っていらっしゃるはずですの。



「焦る気持ちは分からないでもないですの。でも」


「でも?」


 今なら好き勝手にお話しできそうな記がいたします。お久しぶりに私のターンですのっ。



「私たちが一足早く使命を果たし終えたところで何かが変わるわけでもないですの。三百年もの間、この都市はずっとこの調子だと思うのです。先代様も、そのまた先代様もキチンと務めを果たしてきたのですから」


 私たちの旅の結果が根本解決に繋がるわけではないのです。


 ココがヒト族至上主義の地である以上、いきすぎた選民主義と他種族への差別意識が無くなることはありませんでしょうね。



「……さっき、ミントさんも同じようなことを言ってたよね」


「ええ。崇高だからこそ攻撃的になる、と」


 私は、選民主義は間違っていると断言できますの。


 女神教の本質は自己愛のその先に存在する、他者への思いやりの心にあると理解しているからです。


 自分を愛して、そして他人も愛して。

 皆が皆を愛することで。

 癒しのチカラがどこまでも広がっていくのです。


 きっとこの街は女神教のさわりの部分しか見ていないに違いありませんの。


 便利なところだけを都合よく拾っているとも言えましょう。


 女神教の教えを曲解して私利私欲のために利用している方々を、実際に捕らえて罰しない限りは、ずっとずっと変わらないとさえ思うのです……!



「私だって傍観したいわけではありませんの。むしろその逆、今日はとってもとってもイラついてますの。怒りに任せて握りしめた拳が痛いくらいですもの」


「リリアちゃん……」


「ふぅむ。しゃーないですの。たまには聖職者らしく、清く正しい導きのお言葉を告げさせていただきましょうかっ」


 私が直々に説法してさしあげるのなんて滅多にないんですからねっ!?


 いつも誰も真面目に聞いてくださいませんしっ!


 ゆっくりと語りかけてさしあげます。



「こっほん。ミントさんのご用事が終わったかどうかは私には分かりませんの。けれども私たちが無駄に焦って先を急ぐよりも、彼女のご用事が終わるまでキチンと隣でサポートしてさしあげるのが、良き隣人の務めではございませんこと?

それに、彼女には伸び伸びと動いていただけたほうがより良き旅の助けにもなってくださるかと思いますの!」


 私が思うに、この問題にはまだ型がついていないように思います。


 この街で不当に囚われている魔族さんがあの十人だけとは到底思えませんし、ミントさんのことですから、短絡的な人助けのみならず、きっと組織的な奴隷売買の大元を掴みたがっていらっしゃるはずですの。



「幸いにもこの旅の期限はまだ先にありますの。であれば私たちは私たちの良いと思うことを、滞在する先々でゆっくりと確実に(おこな)っていけばよろしいのではありませんでして?」


 今までもそうしてきたではありませんか。


 魔物被害に遭っている農村を助けたり、ゴブリンさん方と和解をしたり、毒キノコ被害にあっているエルフ族さんを救ったり、と。


 今代の勇者と聖女として、きちんと務めを果たせていると思うのでございます。



「スピカさんはこの世界をより良きモノにしたいんですわよね?」


「そ、そりゃそうだよ、もっちろんっ」


「であればミントさんの今日の行いも、人道的観点から少しと間違っていないと断言できますわよね?」


「うん。そう思ってる」


「だとすればっ! 今私たちがすべきことはミントさんのお手伝いだと思いますのっ!」


 あまり人を頼ろうとしないミントさんを(ほだ)して心を開いていただいて、彼女の目的をいち早く解決に導いてさしあげることが……!


 この心のモヤモヤを解消する一番の近道だと思いますのっ!!!



 ……ふぅむ。


 なんだかやる気が出てきたら、急に甘いモノが美味しく感じ始めてしまいましたわね。


 おかわりがほしくなっちゃいましたの。


 お小遣い的に無理なのが悔しいですの……ッ!

 

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