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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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安心して運び連れてきてくださいまし

 



――――――

――――


――




「――ってことは私は、ここから動かなくてもよいってことなんですのね?」


「そそ。アタシが〝転移の異能〟で奴隷たちを連れてくるから、アンタは片っ端から治癒してあげて」


「私は陽動役だね? 縦横無尽に引っ掻き回す感じの!」


「気絶までならOKなんでしょ? ヨロシク頼むわ。そのついでに錠もブッ壊しておいてもらえると助かるんだけど」


「了解っ! イケるよっ!」


 伝えられた作戦はこうですの。


 どうやら今私たちがいる場所は少しばかり高いところにあるようでして、先ほどのように覗き見したり騒いだりしなければ、位置がバレることはないそうですの。


 ここを拠点に、囚われた奴隷さん方を救い出すのでございますッ!


 ラッキーなことにミントさんは〝転移の異能〟を有していらっしゃいますゆえ、直接足を使わずとも行き来できちゃいますし。


 スピカさんと一緒に奇襲をして、隙を見て奴隷の方々を連れ出してこれるはずですの。


 きっと酷い仕打ちを受けていらっしゃるでしょうから、私が治癒魔法を施すことで少しでも癒してさしあげますの。


 全員ここに連れてこられたらミッションコンプリートってことですわね。



「……ちなみに救出した子たちはどうするんでして? さすがにタリアスター邸で匿ってもらうわけにもいかないと思いますし」


 そもそも私たちが居候の身ですの。


 このセイクリットは異種族に当たりが厳しい街ですゆえ、一人一人の寝泊まり宿を用意するのも大変かと思われますけれども。


 まして人目につかないようにしておかなければいけませんし、中々に難易度が高いと思うのです。


 小首を傾げてさしあげますと、ミントさんは……ふぅむ?


 すっごい渋い顔をなさいましたの。



「……一応、アテはあんのよ。頼るのは癪なんだけどね。その場所にはアタシが連れてくからアンタらは気にしなくていいわ」


「この神聖都市にお知り合いがいらっしゃるんですの? ご友人の方?」


「バカ言わないで。ただの腐れ縁よ。けど、こういうことに関しては無条件で首を縦に振ってくれるって、確信があんのよ」


 いかにもその人に借りを作りたくないというご表情でしたが、背に腹は替えられないのでございましょう。


 私も会ってみたいですの。

 そのミントさんのお知り合いさんとやらに。



 ともかく段取りも含めて話はまとまりましたわよね。


 下手に今ここで時間を浪費してしまうと、奴隷さんたちが買われてしまうかもしれませんし、決行は早いに越したことはないと思われますの。


 三人で顔を見合って頷き合いまして。

 いざ、出陣のときですのっ!


 私はココでお留守番ですけれどもっ。


 市場へは異能で移動をなさるのでしょう。

 スピカさんがミントさんの肩に触れなさいまして、さぁ今こそシュピュンッ! というタイミングのことでしたの。


 何かを思い出したかのように、ミントさんがあっと声を漏らしたのでございます。



「そうだ。アタシはともかく、アンタは顔見られるとマズいでしょ。コレ付けときなさいよ」


 そういうと穴の空いた手拭いみたいなモノを手渡しなさいましたの。


 乙女の聖衣( し た ぎ )にしては布地が多いですし色味も地味ですし、何より変な穴の空き方をしているのが気になるアイテムですの。


 スピカさんも手にとって広げなさいましたが、最初は私とほとんど同じ反応をなさっていらっしゃいましたの。



「……ボロ布……? いや、コレ覆面か」


「下手に身バレして報復されても面倒でしょう?

 アタシはいつものコイツ(灰色のフード)があるからいいとして」


 確かにミントさんのおっしゃるとおり、スピカさんは今代の勇者様ですから街中で大暴れされていては印象がよろしくありませんの。


 その行為が悪事を暴くためだとしても、ですの。


 非合法だとはいえ何度も行われている奴隷売買でしょうから、世間からは黙認されている可能性も高いのです。


 今回の行動はあくまでミントさんの意思に従っておこなう義勇であって、万人が認める正攻法ではありませんゆえに。



「アタシだって本当は大元を潰してやりたいけどさ。今はまだ、ちっぽけな存在でしかないから、こんなことしかできないのよ」


「それでも、私は充分に偉いと思いますの。間違いなくコレは人助けですの。小さなことからコツコツと。チリも積もればヤマとなりましてよ」


「私もっ! ミントさんの勇気を尊重するよっ!」


 今代の聖女と勇者が味方をするんですから、もっともっと胸を張ってくださいまし。


 同族の方を助け出すために身を挺して悪事に立ち向かうだなんて、至極素敵な考えではございませんか。


 フォローをするようにスピカさんがニカッと笑いますと、そのままお手元のボロ布を頭に巻き付けなさいましたの。


 ……確かに被ってみれば、完全に目出し帽ですわね。


 少なくともヒーローマスクではないのです。

 むしろ見た目的には完全に泥棒のソレですの。


 今から商品を盗み出そうとしておりますゆえ、実際にそうなのもしれませんけれども!



「それじゃ行ってくるわね。ザコ聖女」


「ええ。祈りの陣を敷いておきますの。安心して運び連れてきてくださいまし」



 確たる頷きを見せてくださいました。

 では、そちらは任せましたの。


 シュンッという風を切るような音が耳に届いたかと思えば、そのときにはもうお二人の姿は見えなくなっておりました。


 きっと会場のほうに向かわれたのでございましょう。そのうちにドンパチと騒がしい音が聞こえてくるはずです。


 私も今のうちに準備をしておきましょうかっ。

 今回は声に出して祝詞を唱えますの……ッ!

 

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