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婚活聖女 〜お友達の女勇者さんの傍ら、私はしっぽり未来の伴侶探しの旅に出ますの〜  作者: ちむちー
【第3章 神聖都市セイクリット編】

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ぬくぬくのぬるま湯のような環境で



 結論、私たちは指輪の光らせ方の実験を幾度となく重ねたのち、指輪運用のルールを定めました。


 こちらがその要約になりますの。



 その一、最初に強く長く光らせること。


 その二、「安否の報告」は短い発光を二回。


 その三、「今から帰る」は短い発光を五回。


 その四、「万が一の救難信号」はショートとロングの発光を三回ずつ繰り返すこと。



「おっけですの。覚えましたの!」


 あとは使っていくうちに改善点が出てまいりましたら、その都度更新していくということで話がまとまったのでございます。



「これでミントさんの晩ご飯を残しておくかどうか、夕方に悩まなくて済むね」


「冷めた料理は美味しくないですものね。美味しいモノは美味しいうちに食べてこそですの。余らせてしまうのも忍びないですし、私がいただいちゃいますの!」


「いや、とっときなさいよ。夜中に中途半端に腹減っちゃうじゃないの。つーか基本、夕方には帰るわよ」


 じょ、冗談ですの。

 真顔でグーを構えないでくださいまし。


 今にも殴られてしまいそうでしたゆえ、サッと距離をとらせていただきました。


 ミントさんがフッと失笑なさいます。


 それにつられてか、私もスピカさんもクスクスと微笑みをこぼしてしまいました。


 やはり気心を知れたお仲間さんとワイワイガヤガヤできるのって楽しいですわね。


 気難しいイザベラさんのお隣よりも、このお二人のおそばのほうがずっと居心地がイイんですの。


 緊張の糸を張り巡らせていては息が詰まってしまうのでございます。



「それよりほら、見てくださいまし。もう魔力操作に慣れちゃいましたの。ピィッカーもビカビカも思いのままでしてよ」


 ミントさんの指に嵌る指輪を、意のままにピカピカと光らせてさしあげます。


 擦り合わせの最中、私も何度か魔力操作の練習をさせていただきましたの。


 その甲斐もあって、高速点滅とまではいきませんでしたが、スパッスパパッとそれなりの速さで明滅させられるようになったのでございます。


 まぁ、これくらいなら一応は……と、ミントさんからの仮初めのお墨付きもいただけたからね!



「調子乗るのは別に構わないんだけど。アンタの〝異能〟のほうも、それくらいちゃちゃっとマスターしてほしかったわね」


「うっ。ヒトには得手と不得手とがあるのです」


 私が魔力操作のプロを名乗ることはまだまだ先のお話でしょうが、それでも異能の発動や出力制限に比べたらまだマシな難易度でしたわね。


 きっと日頃から治癒魔法を行使していたおかげでしょう。


 一度魔力の流れを掴んでしまえばあとはノリと感覚でいけちゃいましたもの。


 〝重さの異能〟も毎日のように普段使いできていれば習得も早いとは思うのですけれども……。


 最近は発動も練習もできておりませんからね。


 こんな人の多い街中で軽率に扱うわけにはまいりませんの。


 意図せず広範囲に及んでしまうというのも考えものなのでございます。



「ミントさんの〝転移の異能〟はホントに便利そうで羨ましいですの。基本的に自分一人だけで完結させられますし、足も疲れないで済みますしぃ」


「バーカ。アタシだって血の滲むような特訓をしたから習得できてんのよ。ガキンチョの頃はマジでスパルタだったわよ、本当に……」


 過去を思い出すかのように天を仰いでは、渋い顔でやれやれと首を振るミントさんでしたの。


 どうやら大変な過去をお持ちのようで。

 心中お察しいたしますの。


 でも、ミントさんのおっしゃるガキンチョの頃って何年前のことなんでしょうね。


 お話ぶりから察するに、どなたかに師事していたような感じみたいですけれども……。


 聞いてみましょうか。

 


「ミントさんにもお師匠様ポジションの方がいらっしゃったんでして?」


「お師匠様っつーか、アタシの場合は親父だったわね。転移で避けないと死ぬような攻撃がそれはもう何度も何度も延々と……」


「はぇー……。そう考えると私はぬくぬくのぬるま湯のような環境で学ばせていただいているんですのね」


「分かってるなら気ぃ引き締めなさいよ」


 ごもっともですの。

 素直にコックリと頷いておきます。


 私も真面目にならなければと思いましたし。

 今代の聖女としての意地がありますもの。



「もしもし、盛り上がりのところ二人とも?」


「ふぅむ?」


 スピカさん、どうかなさいまして?


 まるで私たちの間に割って入るかのように、ソファに腰掛けなさいまして。


 ここは三人掛けではありませんでしてよ?


 何やら頬っぺを膨らませていらっしゃいますけれども。



「魔力も異能もよく分からない私にとっては、今ってかな〜り蚊帳の外な時間なんだよねぇ。ねぇ?」


 おぅふ。まさかの嫉妬でしたか。

 お可愛らしいことお可愛らしいこと。


 お一人だけ話に混ざれなくて寂しかったのでございましょう。



「スピカさんだって、生身の身体で目には見えない斬撃を放てるではございませんか。ハタから見ればかなりのびっくり人間だと思いましてよ?」


「えっへん」


 私には何年かかってもムリな芸当ですの。

 

 人には人の得手不得手があるのですから、できないことを嘆くよりも、できることをより磨き上げていったほうが楽しいですわよね。



「ミントさんはお休みの日は作れませんの? さすがに異能の鍛練はできませんけれども、魔法の特訓を見ていただきたいんですの」


「私も私もっ! たまには剣合わせしようよ!」


「そうねぇ……」


 目を閉じて腕を組みながら、ミントさんが尻尾でくねりとハテナマークを形成なさいます。

 

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